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転職理由

「え、そうだが……」

皇太子は狼狽えながら頷いた。


――だよなぁ――


「で怖いもの知らずの冒険者だからパーティーを組んで旅に出かけるんですね。違いますか?」


 皇太子は激しく首を縦に振った。


「そのパーティーに一緒に参加したいが既に騎士や剣士はもういる、なのでそのままなら殿下は要らない。

入るのであればヒーラー系か魔法使い系なわけだが、ヒーラーなしで旅をする奴は居ないから、これは既に決まっている……とそうなると魔導士系になるわけですな……殿下はそう考えた。ですね?」


 皇太子は茫然(ぼうぜん)とした表情でイツキの顔を見た。

イツキはそれを確かめると更に話を続けた。


「王子はそれなりに魔力をお持ちだ。この世界では貴族はもれなく魔力を持って生まれてくる。多少の魔法は使えて当たり前。なので安直に魔導士になろうと……更に愚かな殿下は考えた訳ですな」


皇太子は頷きもせずに茫然とイツキの言葉を聞いていた。全て図星だったようだ。本当に分かりやすい。


「で、考えたはいいが、どうやってなろうかと考えあぐねて、昼間から欝々(うつうつ)と酒場で酒飲んでいたら、ギルドを思い出して試しに魔導士の潜在能力を見てもらったら破壊的にダメだったという訳ですな」

イツキは見て来たかのようにサラサラと滑らかに語った。


「それを丸顔でガサツそうな女に『要素無いですぅ! キャハハ』とか言われて腹が立った訳ですな」


「何故そこまで分かる。まさにその通りだ。あの女、本気で俺をバカにしくさった!」


――やっぱりマーサか、余計な一言で怒らしたのは……酔っ払い相手に何をしてくれるんや――

とイツキは心の中で思った。


「元々そういう女ですからねえ……あれは。で、今更、魔道剣士になってどうするんですか? レベル1の……守るより足手まといになりますよ」


「あ! そうだった!」


――やっぱりこいつは単なるバカだ――


「忘れていた……」

皇太子はうかつにも当たり前すぎる事実を忘れていた。普通は転職したらレベルは1から始まるという事実を……。


 イツキは、またもやため息交じりに聞いた。

「殿下、そもそもあなたのような身分の人が冒険者のパーティに混じるという事からしてあり得ないんですが、それはこの際無視して、何故そのパーティの一員の騎士か剣士に『俺と代われ!』って命令しないのですか? 殿下の命令なら誰でも従うでしょう」


「…………」

皇太子は答えなかった。


「……言っても良かったんだが言わなかった……ですか?」

イツキは聞いた。


皇太子は小さく頷いた。


――ほほ~。バカだけど人として皇太子としてはそんなに酷くもないか――


「殿下は士官学校を出てらっしゃいますね」


「ああ、出てる」


「士官学校魂って奴ですか……」

皇太子は答えずイツキの目を見返しただけだった。


「ところで殿下、その美人な夢見る冒険者は誰なんですか?」


「剣士ナリスだ」


「ナリスですか……」


「知っているのか?」


「はあ、少し……」


 確かにナリスは美人だ。殿下がコロリとなるのも無理はない。

特に美しい金髪が印象的だ。

「他の面子は誰なんですか?」


「戦士アルカイル、狩人モーガン、白魔導士グレースだ」


――ふん! アル(アルカイル)ねぇ――

イツキはナリスもアルカイルも知っていた。


――このパーティーなら騎士の殿下が入れない事はないだろう。いやそのまま入った方が良い――


「殿下、殿下の激怒した破壊的な潜在能力のスコアカードって持ってます?」


「ああ、これだ」

と皇太子は胸のポケットから折りたたんだスコアカードを取り出しイツキに手渡した。


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