ヘンリー登場
「ああ、そうじゃ。エリーもその内、秘書としてここにやって来るそうじゃな。わらわが秘書室長でエリーがその部下という事であ奴も納得しておる。おっとその時はわらわはお主の妻になっておるから、秘書はエリーだけで良かったわ」
とメリッサは妄想の中にいた。
「アホかぁ。勝手に決めるな……たく……お前らおかしいわ」
そう言いながらもイツキはまたもやメリッサの胸を確認していた。
――今まで気づかなかったが、胸はでかい――
案外イツキはおっぱい星人だった。
「世の中はそういう風に決まっておるのじゃ。諦めるが良い。ほほほほ」
メリッサは更に胸を強調し笑いながらイツキに迫った。
「言っている意味がわからんわ」
とイツキが我に返ってそれ以上のメリッサに流されない様に自分を戒めている間にも、着々と部屋のレイアウトは変わっていった。
メリッサの魔術能力は無駄に高い。
その状況にイツキが気がついた時には、部屋の入り口に置かれたデスクに座ったメガネをかけたいかにもやり手そうに見える秘書が鎮座していた。
メガネのレンズがきらっと光った。
「おい」
とイツキが声を掛けた。
「はい。なんでしょか? ボス」
にこやかな笑顔でメリッサは応えた。
「ボスは止めろ。魔王の娘にボスと呼ばれたくはない」
「ではなんと? ダーリンとでも呼べば?」
「ちがう!……ってそんな話をしている場合じゃないだろう? 雇うなんて一言も言ってないぞ!」
イツキはそう言って怒鳴ったがメリッサには何の効果も無かった。
その時にノックの音がした。ドアを開けて入ってきたのはヘンリーだった。
「イツキちょっといいかな?……あ、取り込み中か?」
「おはようございます。私イツキの秘書をさせてもらっております。メリッサと申します。以後よろしくお願いします」
とメリッサはヘンリーに対して礼儀正しく深々とお辞儀をした。
「え? イツキ、秘書を雇ったのか? エリーを雇う約束はどうした?」
とヘンリーは意外そうな表情で聞いた。
「はい。エリーは来年こちらでお世話になりますが、私が先に秘書室長として着任いたしました」
とイツキが応える前にメリッサがさっさと答えた。
「あ、そうなんですか。それはそれは。私ここのギルドマスターのヘンリー・ギルマンです。お嬢さん」
と、驚いたようにヘンリーはメリッサに自己紹介をした。
「これは失礼いたしました。ギルマスでしたか。以後お見知りおきの程、よろしくお願い申し上げます」
と言ってメリッサは頭を下げて名刺を手渡した。
「おい、なんで名刺まで作っているんだ?」
とイツキはツッコんだ。
「え? これもエリーやダイゴに作って貰ったのよ。どう良いでしょう? ボス」
「勝手に余計なものを作るな……たく……あいつらも裏切りやがって……」
エリーやダイゴが嬉々としてメリッサに対してアドバイスをしている姿をがイツキの脳裏に浮かんだ。
それはあながち間違いでは無かった。