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心変わり


「おいこら、メリッサ。相手を間違っているぞ。お前の旦那はキースだろう? 一度死んであの世に行って忘れたか?」

イツキは何とか両手を精一杯伸ばして、メリッサを押しのけていた。


「何を言う。わらわは先の戦いで身も心もお主に砕け散ってしまったわ。それにわらわは弱い男に興味はない。お主に勝てぬキースなぞこちらから願い下げじゃ」


 嫌がるイツキに抱きついて離れないメリッサを冷ややかな目で眺めていたオーフェンだが、ハッと我に返ってメリッサに言った。


「いい加減にしろ! メリッサ!」


「お父様」

メリッサは恨めし気な視線をオーフェンに向けるとそのままイツキから離れた。


「お主を誰も呼んではおらん。下がるが良い」

メリッサは更に恨めしげにオーフェンを見上げると


「分かりましたわ」

と言って素直に下がっていった。

そして入ってきた大扉に向かっていったが途中で振り返り


「マイハニー、また後でね」

と手を振って出て行った。


「どういうことだ? オーフェン」

イツキは頬を服の袖で拭きながらオーフェンに詰め寄った。


「いや、あ奴は強い男が好きなんじゃ。どうだ? ワシの元で魔王修行でもせぬか?」

とオーフェンは何事もなかったかのようにイツキに聞いた。


「断る!」

とイツキは即答した。

そして呆れかえりながらオーフェンを睨んだ。


「そんな怖い顔をするな。イツキよ。あれはあれで良い娘だぞぉ。親のワシ言うのもなんじゃが」


「そういう問題ではない。なんで俺なんだ? キースで良いだろう?」


「ワシもそう思うんじゃが、なんせあの誰にも負けた事がない気の強い娘が、お主にはあっという間に木っ端みじんにされた。まあ、なんというか本当の男の強さを知ったというか目覚めたというか……まあ、あいつの周りには強い男がおらなんだからのぉ……ハハハ」

とオーフェンは力なく笑った。


「最強の魔王が何を言っているんだぁ? 訳が分からんわ」


「ワシもメリッサのあんな態度を見るのは初めてじゃ。驚いておる」


「まるで他人事だな」


「そう言う訳でもないんじゃが……」


「それでさっきはキースがよそよそしい態度を取った訳か……分かり易い奴だな」


「まあ、キースも面白くはないであろう……」

ため息交じりにオーフェンはイツキの顔を見た。そこには魔王の威厳は無く単なる親ばかな父親の姿しかなかった。


「そんな目で俺を見るなよ。どうしようもないだろう?……それよりも完全にキースの目は無くなったのか? あれだけキース様! キース様と追いかけていたのに……」

イツキはまた余計な問題が増えたと気が重くなっていた。

まさか魔王の娘に追いかけまわされる羽目になるとは思っても居なかった。


「それはワシにも分からん。なんせ一度言い出したら誰が何と言おうと、いう事を聞かん娘じゃからのぉ」

オーフェンも諦めた様にイツキの顔を見た。


「あんたがそんな事を言ってどうする……」

イツキはこれ以上オーフェンを詰めてもらちが明かないと思い、こんなところに長居は無用とばかりにさっさと帰って行った。


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