表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
131/137

職探し

「いえ。今まで稼いが金がありますから、全然急ぎませんけどね」

ダイゴは三年前、高校の卒業式の帰りにこの世界に転生してきた。

高校時代はラグビー部の主将を務め全国大会にも出場した。卒業したら推薦で有名私大へ進学することになっていたが、進学する前にダンプカーと一戦交えてここへ吹き飛ばされてきた。


 そしてイツキに出会い、この三年間で彼は戦士と剣士をマスターしていた。倒した魔王も三人。おかげでそれなりに稼ぐこともできた。


「今はパーティからの求人募集があまりないからなぁ……」

とイツキは申し訳なさそうな表情を浮かべて言った。


「でしょうねえ……」

ダイゴも今の現状は分かっていたので素直にイツキの言葉を理解した。


「実はこの大陸には魔獣の類が居ない上に討伐が禁止されているので、有名なパーティは他の大陸に出稼ぎに行ってしまっているんだよ」

とイツキはギルドの現状を話した。


「なる程、さっきここの掲示板を見てもクエストの類がほとんど見られませんでしたもんね」


「そう言う事。今じゃここに居てもモンスターを狩る事もない。狩るのは山賊ぐらいだが、自衛団も暇だから頻繁に山に入っているからねえ……その山賊も居ない……」

イツキもなすすべがないという表情でダイゴに現状を伝えた。


「やっぱり冒険者ではもう稼げないですよねえ……」


「やっぱりって、転職って冒険者以外に何になるつもりなの?」

とイツキは聞いた。


「はあ、それが思いつかんのです。なのでイツキさんに相談に来たんです」


「なる程ね。でもなぁ……そんな事を言われてもねえ……」

とイツキもダイゴの相談を持て余し始めていた。


「ってイツキさんキャリアコンサルタントでしょう?」


「まぁそうだけど……ところでサブキャリアは何にしたの?」

とイツキはダイゴに聞いた。


「鍛冶屋です」


「ああ、君も鍛冶屋を取ったのかぁ……」


「はい」

ダイゴは小声で返事をした。鍛冶屋を選んだことを後悔しているような声だった。


「まあ、剣士系冒険者なら一番いい選択なんだがなぁ……」


「はい。冒険が出来るのであれば……」


「そうなんだなぁ……その職業は結構多くの冒険者が選択しているから沢山いる。その上、今ではその作った高性能な完成度の高い武器も使うところがない」


「はい」

ダイゴは更に消え入りそうな声で返事をした。

「だから鍛冶屋になった連中は包丁とか鍋とかを作っているよ」


「はぁ……ですよねえ……」

ダイゴは打ちひしがれたように肩を落としてため息をついた。


そんな醍醐を見てイツキはダイゴに布で巻いた包丁を見せた。

「これを見てよ」

醍醐がその布を解くと一丁の出刃包丁が出てきた。


「これ素材はオリハルコン。名付けでデバハルコン。どんな魚でもあっという間に捌けるスグレモノ」


「げげ! もしかしてこれはイツキさんが鍛えたんですか?」


「そう」


「一体何を作っているんですか……」

ダイゴは呆れてそれ以上の言葉は出なかったが、この出刃包丁の完成度には感心していた。


「まあ暇つぶしに作ったんだけどね」

イツキは自分の作った作品を見せたくて仕方なかったので、結構満足していた。


「でも、そんなもんを作るぐらいしかすることがないんですよねえ……」

ダイゴはため息混じりに呟いた。

それを見ていたイツキの口元が少し緩んだ。


「一つだけ……ない事もないんだが……」


「え? 本当ですか?」

とダイゴはイツキの言葉に身を乗り出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ