再会
「え? そうなの?」
今度はエリザベスとアイリスが同時に返事をした。
「あんたも転移者なんか……ここへはいつ来たの?」
エリザベスは聞いた。
「あんたらが黒騎士になる数か月前かな……だから半年以上にはなるかな。あ、俺ヨッシーって言います」
ヨッシーは改めて自己紹介をした。
「そうなんや。じゃあ私の先輩なんだ」
エリザベスは自分以外の転移者に会えたのが嬉しかった。
「イツキさんはお元気ですか?」
エリザベスはヨッシーに聞いた。
「元気ですよ。この頃、本業は暇そうにしているけど、王宮に呼ばれている事が多いみたいです。いつもお二人の事を気にかけていますよ。『エリーは何しているかな?』 とか『アイリスはジョナサンと上手くいっているかな? できればこのまま二人が上手くいってくれても良いんだけど』とか好きな事を言っていますよ」
とヨッシーは笑いながら応えた。
「なんで私がジョナサンの旦那と上手くいかなきゃならんのだ? イツキさんに強く否定しておいてくれ」
アイリスもヨッシーがイツキの知り合いだと分かってやっと気を許した。
エリザベスはヨッシーの口からイツキの事が少しでも聞けて嬉しかった。
――死なないで生き延びて良かった――
エリザベスは心の底からそう思った。
その時遠くから声が聞こえた。
「ヨッシー! どこへ行った~!!」
トシの声だった。
どうやら見回りから戻ってきて、ヨッシーがいないので探しているようだった。
「ここで~す。ここに居ます!」
ヨッシーも大きな声で返事をした。
「どこだ~~!!」
「ここで~す」
草をかき分けトシが現れた。
ヨッシーだけだと思っていたら黒騎士が二人も居たので驚いたようだった。
「あ~! トシかぁ!」
アイリスが急に声を上げた。
急に名前を呼ばれたトシは怪訝な顔をして小汚い黒騎士を見た。
そこには薄汚れた顔に血の跡まである小汚い黒騎士の顔があった。
「誰や? お前?」
当然の事ながらトシにこんな小汚い奴の記憶はない。
「あ~ん。この声と顔を忘れるかぁ? もう一度一から修行させよかぁ?」
とアイリスは顎を突き出し顔を斜めにして、まるで大阪のヤンキーが喧嘩を売っているような態度でトシに話しかけた。
それを見たトシは急に
「え? アイリスかぁ?」と叫んだ。
「そうだよ。お前の愛するアイリスちゃんだよ。忘れんな」
「うわ! 分からなかった。汚すぎるわ。そんなの分からんって」
どうやらトシはアイリスと面識があるようだった。
それも圧倒的にアイリスが上のポジションらしい。
「こんなところで何をしているの? 黒騎士になったんでしょう? それはガセネタか? ホームレスにでもなったのか?」
とトシは矢継ぎ早にアイリスに質問を浴びせ倒した。
「これは黒騎士の修行中だ!」
アイリスが応えた。
エリザベスは『ホームレスでも間違いではないな』と思ったが黙って聞いていた。
実際に彼女たちはこの数か月は森の中で野宿だった。
「そうかぁ大変な修行だなぁ」
トシは感心して何度も頷いた。
「トシさん。アイリスさんを知っているんですか?」
ヨッシーがトシに聞いた。
「ああ、この人はうちの元団員だよ。お前と同じ剣士。でも『冒険に行く』って一年前だったか辞めて、見事勇者の仲間入りしたはずだったんだけど、ジョブチェンジで黒騎士になってしまった人だよ」
「え! うちの団員だったんですか?」
ヨッシーが驚いてアイリスに聞いた。
「そうだよ。今は一から修行中だけどね」
アイリスはヨッシーに応えた。