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勧誘


「え? そうなんですか?」

松島武雄は驚いて聞き返した。


「はい。ここの人間に電気なんか説明しても理解できませんでしたからね。で、ここに転移してきた技術者と発電施設を立ち上げた訳です」


「そうでしたか……。もしかしてそれは水力発電ですか?」

松島武雄は技術者である。今置かれた身の上を理解すると、技術的な関心が芽生えた。


「おっしゃる通りです。火力や風力も考えましたが、ここでは水力が一番可能性があると思いましたから……。ただ技術者の数とレベルが問題だったんです。電気工学の学生だったり取りあえず電気工事の資格を持っているのだけの人ばかりで、発電所とかでの勤務経験がある人は一人もいませんでした……。だから発電所に勤めていた方は松島さんは大歓迎です。待ちに待った人材です」


「……という事で、弊社への就職は如何でしょうか?」

とイツキはさり気に勧誘し始めた。


「それとも冒険者になりますか?」

イツキは敢えて冒険者の道もある事を松島武雄に伝えた。


「いえ。技術者でよろしくお願いします」

松島武雄はイツキに頭を下げた。


 これからどうやって生きていけばいいのか分からず不安しかなかった状態から、一気に光明に照らし出されたような気がして松島武雄はホッとしていた。

間違っても剣を片手に世界を駆け回る冒険者になる気は起きなかった。駆け回る前に、この世から消え去る方が早いという事は聞かなくても分かった。


「一応ここは冒険者のギルドなんですが、こちらで電気技師として登録しておきますね。ちなみに電気技師って他のギルドにはないここだけの職業なので特別職として登録されます」


「そうなんですね。よく分かりませんがよろしくお願いします」

と松島は頭を下げた。


 こんなところで冒険者になって魔物と戦うなんて考えただけでも嫌だった松島武雄は、心底ホッとして居た。


「ところで松島さん。この世界での松島さんの呼び名はどうしましょう?」


「へ? 呼び名ですか?」


「はい。ここで本名で通している人はまずいないですよ。みんなハンドルネームにしています。例えば吉沢でヨッシーとか修でシュウとか……」


「まあ、今更改名もないのでマツシマが良いのですが、昔からのあだ名はマッタケでした」


「松島武雄でマッタケですか? ハンドルネームぽくてなかなか良いですね。じゃあ、マッタケさんにしますか?」

 イツキにそう言われて、松島武雄は少し考えた。

ここで一からやり直すのであれば松島武雄の名前よりも新しい名前の方が良い様な気がした。

新しく全く知らない名前を名乗るのも今更気が引ける……昔呼ばれなれたマッタケでも良いか……松島武雄はそう思った。


「そうですね。マッタケでお願いします」

イツキはデスクの書類に職種と松島武雄の新しい名前を書き込んだ。


「それじゃあ、発電所まで案内しますから行きましょう。マッタケさん」


そういうとイツキは席から立ち上がった。


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