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船上にて


 翌朝、リチャードは朝食を皆で取っている時に

「そろそろ、ゴドビ砂漠を目指したいと思うのだがどうだろう?」

と提案した。


 アルカイルが最初に口を開いた。

「私は賛成ですね。スチューも結構、頼もしくなってきましたし、ナリスもその辺の魔獣には負けますまい」


「そうだな。もう一撃で即死は、相当強い魔獣でもない限り大丈夫だろう」

モーガンも同調した。

「ナリスはどうだ?」


「私も賛成です。ただできればスチューのワンマンショーも見たかったけど」

と悪戯っぽく笑って言った。

皆の視線がスチュワートに集まったが、スチュワートは顔を真っ赤にして首を横に振っていた。


「本人は強く否定しています」

グレースも笑いながら応えた。

今やスチュワートはこのパーティのマスコットのようになっている。ナリスやグレースはスチュワートより年下だが、姉のような目で彼の事を見ていた。


モーガンはスチュワートと同い年なので、案外話が合ったりしていた。


「それでは早速今日から向かいたいと思う。異存は?」

全員首を横に振った。


 パーティは朝食を終えるとゴドビ砂漠を目指してロトコの村を出発した。


 村からタリファン岬へ続く街道を歩いて居る時も、フォーメーションは『スチュワートと愉快な釣り仲間作戦』だった。


 相変わらずスチュワートはヤケを起こして声を張り上げて唄っていた。

本来ならそこから草原分け入ってモンスターとの遭遇の確率を少しでも上げるのだが、リチャードの気持ちがアルカリ帝国にいってしまっているのでそのまま街道を普通に南下していった。


 結局、数日野宿し、昔とは比べ物にならない少ない数の魔獣を退治してタリファン岬に到着した。

タリファン岬からはグレースの魔法でテレポーテーションする予定だったが、ここから『船に乗って行きたい』というナリスの意見が通り、船旅で行く事になった。


 ナリスは船旅が好きだった。

前の冒険の旅の時も乗ったが、夜に海上で見上げる星の美しさが忘れらなかった。


「残念ながらこの海峡は狭いから夜までには対岸に着くよ。星はまた今度だな」

とモーガンに言われてナリスは

「分かってますよ~だ!」

と何気に軽い八つ当たりをしていた。



 タリファン岬に着いた時、目の前にある大きな帆を持つであろう帆船が目に留まった。

二本のマストが高くそびえている。『これが帆を張ったら優雅なんだろうなあ』とナリスは思っていた。

そして港の案内人の『この船に乗って半日で対岸のマラタ岬に着きます。まだ乗れますよ』という言葉を聞いて、俄然この船に乗りたくなった。


「仕方ないな」

とできればさっさとテレポーテーションで渡りたかったリチャードも諦め顔でそれに同意した。

何といってもこのパーティのリーダーはナリスだから。


 乗船するとスチュワートが興奮していた。

海は家族旅行で行った事はあったが、船に乗るのは初めてだった。


パーティは船室には入らずにデッキでランチョンマットを広げて食事をする事にした。


「船の上で食事をするのも風情があって良いもんだな」

アルカイルが珍しく上機嫌で言った。


この男、寡黙な男だが、余計な事は言わないだけで無口ではない。

しかし自分の感情をストレートに口に出すことはあまりない。そんな彼が珍しく無邪気に感情を表したものだからナリスは『船に乗って良かった』とひそかに思った。


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