本音
イゼルグは観念した様な表情を見せて
「その通りだ。親父にはさんざん言われたし、仲間にも言われた」
と答えた。
「なるほど。正直に答えてくれてありがとうございます」
「本来あなたは若いころに下積みで頑張らねばならない時に頑張りませんでしたね。せめて『大楯の震龍』には三年程いて欲しかったですねえ……。履歴書を見る限りここから辞め癖が付いてたように見えますね」
「他も三ヵ月から半年で辞めてますね。まあ、優秀な前衛はどこのパーティも欲しがりますからね。待遇もそこそこ良い条件で迎え入れてくれたでしょう?」
「ああ、その通りだ。だが人使いも粗かった」
とイゼルグはボソッと呟くように言った。
「ま、前衛ですからね……そうなりますよね。良く死なずに生き残りましたよね」
「まあな。そこは何とか最初の一撃を食い止められれば前衛としては評価されるからな」
前衛の職種はモンスターの攻撃の最初の一撃さえ凌ぐ事ができれば、後はパーティメンバーの攻撃で何とかなる場合が多い。
相手の力量や攻撃パターンを知るためにも、前衛は敢えて最初に立ち向かって攻撃を受ける事もあった。
イツキはもう一度目視でイゼルグを鑑定してみた。
――ほほぉ……さっきは見落としていたが、瞬間的な耐久力は相当あるな。体力もレベルの割には高い。これなら前衛に欲しがるわけも分かる。経験を積めば成長株にもなる可能性は感じるか……――
とイツキはイゼルグの言葉に納得していた。
「一つのパーティに長期間居た方が良いと言ったのには、レベリング以外にも理由があるからですが分かりますか?」
とイツキは確認するように聞いた。
イゼルグは
「レベリング以外か……」
と言って言葉を詰まらせた。
「パーティでの呼吸ですよ。冒険者の相手は魔獣であったり魔族であったりするんですよ。一歩間違えば大けがをしますよ。命だって失いかねない。そんな中で息の合わないパーティメンバーと組みたいと思いますか?」
「……」
イゼルグは無言で首を振った。身に覚えがあるようだ。
「一か月や二か月で阿吽の呼吸なんて生まれませんよ。分かるでしょ?」
「だから同じ釜の飯を食った仲間は長い間一緒に戦って、相手の力量や技、考え方色々な事を分かりあってやっと戦えるようになるんですよ。それなのにこんだけ転職を繰り返していたら、レベル以前に敬遠されるのは分るでしょう?」
「確かに……あんたの言う通りだ」
「瞬間的な耐久力は戦士としては申し分無いほど高いのに、同じチームにずっと居続けるという忍耐力は低いようですね」
とイツキは言った。
「確かにそうかもしれない……やはり俺はソロでやるしかないのか……」
「本当にソロでやりますか? それがどれだけリスクを背負うか知ってますよね?」
「判っているつもりだ」
「それなら今いるところに戻った方が良いですよ」
とイツキは提案した。
イゼルグは無言で考え込んでいた。
――もう戻りたくないのか? それとも戻れないほど人間関係が破綻しているのか?――
イツキはイゼルグの表情を見ながら考えていた。