4話 前半「少女の日常/和気藹々」
大変遅くなりましたm(_ _)m
平和な日常回です、どうぞ。
────
──────────────
──・・・・・・[とある少女]
─怪獣が私を見つけて咆哮する。
─あの人が現れて、カートに乗せられる。
─あの人の声は思い出せない。避難するように言っていたと思う。
─あの人の笑顔が思い出せる。無理しているのが分かる。
─あの人が怪獣に捕まる。私はカートから落ちる。
(私はこの後どうしたんだっけ…?)
─場面が移り変わる。
─私は魔法少女となり、魔獣を倒した。
─魔獣は塵となり、あの人は消え、魔石だけが残った。
─私はその魔石を拾おうとして……
────リ───おき──
─どこからか声が聞こえて、景色が霞む。
──
──────
─
「………ユリ………おきろっ!」
「…………」
夢から醒める。まぶたが重い。
「………ゆめ?」
「もう現実だぞ。平日の朝。」
私を起こしてくれた声が少し呆れたように言う。
お兄ちゃんの声だ。
「うーん…………」
寝ぼけた体を起こしつつ、目を擦る。
「おはよう、ユリ。お前、またうなされてたぞ。そんなにあの"お兄さん"のことが気になるのか?」
お兄ちゃんが、少し不満げにからかう。
「おはよう、お兄ちゃん。起こしてくれてありがとう。…なんで私の部屋にいるの?」
いくら兄妹仲が良いとはいえ、寝ている妹の部屋に入るのは少し良くないと思う。
「そりゃあお前、学校の時間がギリギリだからに決まってるだろ」
枕元の目覚まし時計を見ると[08:09]を表示していた。
「えっ!ほんとだ遅刻しちゃう!」
「じゃあ俺はもう朝ごはん食べたから、お先に失礼しまーす」
既に高校の制服を着ていたお兄ちゃんが私の部屋を後にする。
「あ、ちょっと待ってよお兄ちゃん!」
急いで中学校の制服に着替え、身支度を軽く済ませてお兄ちゃんの後を追う。
階段を降りて、ダイニングテーブルの上に置いてあるサンドイッチを食べながら、玄関へ向かう。
「忘れ物は無いな?」
玄関で靴を履いて待っていたお兄ちゃんが確認する。
「うん!」
サンドイッチを咥えたまま、靴を履きながら答える。
私が靴を履き終えたのを見て、お兄ちゃんが玄関
の扉を押す。
「「いってきまーす!」」
返事は帰ってこない。両親は私たちよりも早くに出勤するからだ。
そうしていつも通り登校する。
高校に通うお兄ちゃんと途中で別れたり、登校時間ギリギリで教室に着くのも、いつも通りだ。
1年1組の教室に着くと、特別に仲のいい2人が声をかけてくれる。
「また遅刻ギリギリ。私たちは授業も抜け出してるんだから、遅刻までしたらさすがに先生も見逃してくれないわよ?」
そう注意しつつも心配してくれるのは、肩にかかるくらいの黒髪と、蒼みがかった瞳を持った、学級委員の竜胆美緒ちゃん。
「まぁまぁ、登校時間には間に合ってるんだからいいじゃねぇか!」
そう言ってミオちゃんをなだめてくれるのは、肩にかからないくらいの黒髪と、赤みがかった瞳を持った、勝気な雰囲気を纏った少女。小学校からの親友、赤藤紅莉ちゃんだ。
「へへ、2人ともありがとぉ」
「何ニヤついてんだよ…」
「もうすぐチャイムが鳴るわ、せ──」
──キーンコーンカーンコーン
「…席に着きましょう」
美緒ちゃんと紅莉ちゃんは自分の席に戻る。
私はそそくさと荷物をロッカーに入れ、1限目の準備をして、窓際の1番後ろにある自分の席に着こうとしたその時。
「花光さん。もう少し早く登校するように。」
既に点呼を始めていた先生に注意されてしまった。
「はい…」
席に着く時、紅莉ちゃんは笑っているのが、美緒ちゃんは「あちゃー」という表情をしているのが見えた。
そのまま何事もなく授業は進み……。
もうすぐ昼食の時間になろうとしていた。
この学校では長めの昼休みに各々昼食をとる方式になっている。
そんな4限目の終わり、時計をチラチラと見る者が増え始めた頃。
窓際の1番後ろの席に近い窓に、小さな影があった。
──キーンコーンカーンコーン
私はそれを見逃さず、4限目の終わりを告げるチャイムの音と同時に窓を開けて、彼を迎え入れた。
「ユリ、忘れ物だよ。」
そう言って彼はぬいぐるみのような両手でお弁当箱の包みを渡してくれる。
今までどこに持っていたのだろうか…
彼は私が契約している妖精。名前はファントム。
「ありがとう!トムくん」
ファントムだとちょっと怖いので、トムくんと呼んでいる。
本人はファントムって呼んで欲しいみたいだったけど、トムくんと呼び続けている。
「…まったく、君は懲りないねユリ」
トムくんの見た目は白いドラゴンのふわふわなぬいぐるみである。
そんな見た目だから、例え怒っていてもかわいいだけだ。
美緒ちゃんと紅莉ちゃんがそれぞれお弁当の包みを持ってくる。
「ユリ、今日はお弁当ちゃんと持って来てるの?…って」
「まぁたトムに届けてもらったのか!」
私が忘れ物をするのはままあることで、小さい頃からの悪い癖だ。
魔法少女になってからは、よくトムくんが忘れ物を届けてくれる。
「えへへ…」
「はぁ…トムも忙しいでしょうに、いつもユリのためにありがとうね」
美緒ちゃんがトムくんを労う。
トムくんは妖精の中ではかなり偉いらしく、「会社で言うところの部長みたいなモノ」と言っていたことがある。
何をしているかは全然教えてくれないけど、他の妖精よりも遥かに忙しいそうだ。
「もうなれっこさ、それに最近はそこまで忙しくないんだ。このくらいどうってことないよ」
妖精たちは戦えない代わりに、魔法少女をサポートしているのだが、それはあくまで"魔法少女"のサポートであって、学校に忘れ物を届けることは含まれない。
「いやぁ、最強と名高い"原初の魔法少女"様が、遅刻と忘れ物の常習犯だなんてねぇ」
紅莉ちゃんが冗談交じりに少し煽る。
私が言い返そうと口を開いたその時。
─ぐぅ〜〜〜〜
と、私のおなかがなった。
「「「「…」」」」
沈黙が流れ、私の顔が熱くなる。
「お昼、食べましょうか…」
沈黙を破ってくれたのは美緒ちゃんだった。
「アッハハハハハハハハハwww」
紅莉ちゃんがお腹を抑えて爆笑している。
ツボに入ったらしい。
そんな感じで、いつも通りワイワイ雑談をしながら、3人と1匹でお昼ご飯を食べる。
いつも通り。
中学に上がって、魔法少女になってからの日常。
お兄ちゃんと登校して、3人でワイワイ過ごして、魔法少女として魔獣を倒したりして……。
そんな日常が、このまま続いていくんだと思っていた。
この日、あの子に出会うまでは。
〜唐突に始まるキャラ紹介〜を、したかった
・魔法少女ホープリリィ / 花光 百合 (はなみつ ゆり)
最強と名高い"原初の魔法少女"。
その強さは膨大な魔力量と能力《魔法》にある。
《魔法》の能力は、所有者の想像通りに《魔法》の魔術回路で人工の魔術回路を作って魔法を発動する。
通常の魔術とは異なり、威力や効力が能力のそれに劣ることはほぼない。
魔法を想像する&座標を決める
↓
魔術回路を描く
↓
発動する という手順が必要。
そのため、所有者の想像力と魔法のセンス、魔力総量が戦力に直結する。
そしてその全てがホープリリィは高水準である。
(容姿について描きたかったけどイメージがうまくまとまらないので後で編集して追記します。圧倒的見切り発車。(´・ω・`) )