1話 後半「総ての始まり/邪神邂逅」
「_________ぅぅ……」
世界が逆さまになったような、朦朧とした酷い感覚で目が覚める。
「あ、起きた?」
聞いた事のない中性的で透明感のある声が自分にかけられる。
(ここは……?俺は確か…………怪獣に……)
朦朧としていた感覚が少しずつ覚めてくる。
仰向けで寝ていた上半身を起こし目を擦る、すると悪夢のような──黒く色彩豊かなギラギラとした雲が、殺伐とした赤みがかった荒野の空を地平線の先まで覆っている──光景に酔ったような感覚を覚える。
「いやー君凄いねー、小手調べの雑魚とはいえまさか一般人が1人であそこまでやるなんてね」
後ろから先程の声がまた聞こえる。まだ夢の中だろうか、しかしどうやらただの悪夢では無いらしい。声の主を確認しようと振り返ると、そこにはタイヤ程の小岩に腰掛けた中学生くらいに見えるボロボロの布を着た黒髪黒目の美少年(?)がいた。
「あれ、もうそんなに動けるの?君の能力は再生とか活性化かな?でも傷は治ってないし、やっぱり君面白いね!」
ソイツを視界に入れた瞬間鳥肌が立ち、息が詰まる。状況的に只者じゃないかもとは思ったが本当にとんでもないヤツなのではと、振り返ったことを少し後悔した。
「___っあんたは?」
やっとのことで質問したが掠れ声しか出ない。質問したいことが山のように出てくるが、そもそも答えてくれるだろうか。許可なく発言するのもまずかったかもしれない。コイツはそれくらいヤバいと直感が告げている。
「ん?ああ、いいよ、今は気分がいいから答えてあげる。僕はとある世界の邪神さ!それ以上はダメだね。そんなことより君の事さ!」
とりあえず俺はまだ生きてていいらしい。この自称邪神様は俺に興味があるらしい、そういえば能力がなんだとか言ってたな。
「能力のことが気になる?そういえばこの世界は魔力が認識されてないんだっけ、じゃあ能力のことも知らないよねー」
(心が読めるのか……?)
「顔見れば大体分かるよー。まず説明からかな、メンドクサ」
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──・・・・・・・
……面倒臭いと言いつつも邪神はちゃんと説明してくれた。
まず魔力とは誰もが潜在的に持っている力で、ゲームのMPみたいなものらしい。MPの最大値、魔力総量は個人差があり、トレーニングなどでも魔力総量は増やせるらしい。この世界のほとんどの人々は魔力を知覚出来ないらしく、魔法が発達しないらしい。
そして魔法というのがこの魔力を使って起こす現象の総称みたいなもの、らしい。
そして能力。魔法の一種で、一人一人固有の魔術回路を持っていて、その魔術回路に魔力を流すと発動する。能力の完成系は【究極の○○】らしい。この世界の人々はこの魔術回路が隠れており、魔力が流せないから魔法が発達しないらしい。
そして魔術。魔法の一種で、魔法陣など人工的な魔術回路で発動させる魔法のこと。魔術は基本的に能力に劣り威力も性能も半端なものだが、練習さえすれば誰でも──魔力が扱える前提だが──色んな魔法が使えるらしい。
つまり機械で例えると魔力が電力で魔術回路がモーターとか電子回路みたいなもの、だろう。
「そして、僕は君が気に入ったから、君の魔力回路を覚醒させてあげたんだ!さぁ!能力を使って僕に見せてよ!」
「見せてって言われても……どうやるのかわかんないぞ?」
「はぁ……しょうがない、あんまり面白くないけど、___《神眼》」
《神眼》か、相手のステータスを見るようなやつだろうか、俺の能力ってどんななんだろうか……
「まぁそんなとこかな、僕レベルならなんでもお見通し……何これ、《適応:順応》?書き方2種類とか欲張りだね、っていうかずっと魔力流れてる?やっぱり君面白いね」
適応、順応?書き方2種類ってことは1つの能力なのか。てかずっと魔力流れてるって大丈夫なのか?常にMP消費してるのって致命的では??
聞いてみるか。
「魔力が常に流れてるって大丈夫なの?」
「んーー、本当は数分〜数十分で魔力が枯渇して気絶しちゃうんだけど…」
「え。」
「なんか魔力消費してないね、魔術回路に流れた分がそのまま体に戻って循環してる。今の状態だと回復量の方が高いのかな?」
回復量…まぁ消費するなら回復もするか。
「じゃあ適応するために負荷がかかれば魔力消費が増えるってこと?」
「そうだね………うん、色々試してみたいし、とりあえずアジトに行こうか」
ん?アジト?そういえば魔法の説明に夢中でここの事とか全然聞けてないな。確か怪獣の胃袋みたいな黒いモヤみたいなのに入ってここに来たんだよな……今更だがついて行って大丈夫なのか?
「ははっ本当に今更だね、どちらにせよ君は着いてくるしかないと思うけど?」
「………………その通りです……。」
「素直でよろしい。じゃ、これからよろしくね、実験体1号君♪」