第90話
仕事と修行にひと段落ついたので、店番をマイコニド達に任せて冒険者組合の出張所に行ってみる。
簡素な柵で囲われた、集会所と同じくらいの大きさの建物に冒険者組合の旗が吊るされてる。
そのすぐ隣の解体場では、モンスターの死体から素材を剥ぎ取る光景が見える。
既にこの村にも数組の冒険者チームが村で冒険者として活動しているらしく、中を覗いてみると、受付では冒険者相手に書類仕事。
「チッ!この辺のじゃこんな小物しか狩れなかったぜ」
「賞金首の張り出しも無いな」
掲示板の前でたむろしてる冒険者たちがそう愚痴をこぼしている。
まぁ近場のモンスターは基本、マイコニド軍団が大体駆除してるからなぁ。
徒歩1日以内で狩れるような範囲に居るモンスターは、基本的に探知系の魔法やスキルで探し出して、自警団の訓練で狩ってしまうから、自然と寄り付かなくなった。
当然、探知をすり抜けるようなモンスターは基本雑魚なので、冒険者にとっては、来週までの宿代程度しか儲けは無いし、基本早い者勝ちなので狩れない時もある。
そんな冒険者達をスルーして受付へ
「いらっしゃいませ。冒険者組合ゲイリーウッズ出張所へようこそ。
ご用件をお伺いします」
黒髪ロングに三角眼鏡のダウナー系の声をした真面目そうな女性の受付人がそう声をかけ、こちらに目を向ける
「懸賞金の依頼をしたいの」
「承ります。こちらの書類に、できるだけ正確な情報を記入してください」
受付が引き出しから黄色い記入用紙を出し、羽ペンとインク壺と共に受付テーブルに置く
さて、今回懸賞金を懸けるのは「実験用ネズミの生け捕り」である。
病気、毒を持っている可能性のあるネズミ系モンスターは、サンプルから病気や毒の抗体を作れるし、ネズミ本体にも毒や薬の実験台、何だったらベッティちゃんの呪いや魔法の的にする予定でもある。
今までは自分達で捕獲していたが、ぶっちゃけ手間だしすばしっこいし、あとキタナイので冒険者の手を借りることにする。
村内、村周辺に生息するネズミ5匹(種類不問)につき大銅貨1枚の懸賞金を懸ける。
50匹も集めれば銀貨を狙えるだろう。・・・まぁ無理だろうけど
ちなみに他所から持ち込んだり、養殖したネズミは受け取り不可も明記しておく。ネズミ牧場があるかは知らないけど。
この依頼は村のネズミ退治も兼ねているので、他所から養殖ネズミを持って来られたら本末転倒だ。
今後はベッティちゃんにも毒薬の製造方法を教えて、実戦使用させる予定でもあるので、毒薬系の実験台には代謝が早いネズミが手っ取り早い。
経験値はゴミだが、魔女系は高レベルになると攻撃性が強い魔法が増えるので、試し撃ちのために村の外に連れ出してもモンスター狩りさせるのも効率悪いし、単体対象の魔法の試し撃ちには丁度良いと思う。
条件を記入し終え、仲介手数料の銀貨と共に用紙と筆記具を受付に返す
「はい。受付いたします」
用事を済ませ、冒険者組合から出ると
「あれ?エリシアさん?」
アキヒト君と会った。最近よく会うな。
「こんにちわ。アキヒト君」
見たところ狩りの帰りか?魔獣型のモンスターを台車で運んでいるが
「エリシアさんも冒険者に?」
「まさか。ダンジョン攻略するほど暇でもありませんよ。仕事を依頼しに来たんです」
ダンジョン攻略はあの1回で十分味わった。
あんな閉所で戦うなんて私には向いてない。
「そうっすか。仕事って何を依頼したんすか?」
「ネズミ退治ですけど?デイリークエスト感覚で受けます?」
「遠慮します」
あっそ。まぁ見習い級ならネズミの生け捕りでも受けるだろうし、その内集まるだろう。
冒険者組合支部が建ったのと同時期に、冒険者向けの宿を開業した人も居る。
と言っても大部屋で雑魚寝してもらうような安宿。
それでも馬小屋で寝泊まりするよりマシなように、バロメッツ毛で作った絨毯を敷いたりして色々工夫はしているようだ。
「それに、冒険者になるメリットも無いですし。
ネット小説みたいに「国境を自由に越えられる」とか「クレジットカードみたいな機能がある」とかそんな特典無いですし」
「え!?コレ持ってても国境越えできないんですか!?」
あ、やっぱ知らなかったのか
「冒険者組合って、世界中に似たような組織はありますけど、基本的に国内で発行された冒険者証ってよほどの有名人にでもならない限り、パスポート代わりにはできませんよ。
せいぜいが本人確認できる身分証程度ですよ」
例えば「英雄的行動で街や大勢の人間を救った」みたいなデタラメな活躍をすれば、「おお、あなたがあの有名な!」とか「お代は結構なのでぜひ食べに行ってください!」って反応はしてくれるらしいけど、その辺の冒険者がただ冒険者証を見せても普通に関所では止められて職質されるし、出入国の税関とかで審査もされる。
「その冒険者証の効力は、基本的に国内地域限定ですよ。
他所の国に行けば、よほどの大活躍・・・それこそ国をまたいだような名声が無い限り、また一番下のランクからやり直しです」
「冒険者って自由な人間の象徴じゃないんですか・・・?」
何を言ってんだか・・・
「大体、飛行機どころか鉄道も無いんですから、国外旅行なんてこっちの世界じゃ大冒険ですよ。
街や村から1日離れた距離で簡単にモンスターとエンカウントする世界なんですから、移動の自由以前の話です。
そもそも『人の活動領域から出る』時点で危険なんですから、十分冒険者やってるんじゃないですか?」
私だって用事が無かったら村から出たくない。
街道近辺も冒険者が狩り目的で巡回してるとはいえ、安全とは言い難い。
この村だってちょっと前まではゴブリン軍団に攻め落とされそうになってたくらいに危険な世界なのだ。
そんな世界で国外旅行?自殺志願者の間違いだろう。
貴族だって基本は街から出るときは完全武装で護衛の騎士や従士を何人も連れて移動するのがデフォだ。
アニメやネット小説みたいに豪華な箱馬車でドレス着て移動なんてやらない。
全員がガッチガチに武装して、馬車も鉄板とかで装甲車両みたいに補強してる。
ゲームみたいにただの洋服着て、その辺の森に入るってだけでもこっちの世界じゃモンスターに襲われて死んでも不思議じゃないイカれた行為になる。
「想像以上に夢が無いっすね・・・」
「基本的に冒険者って、腕っぷしで一発逆転を狙う人たちですよ。
金と居場所があったら、多分こういうのやりたがるのは少数派になりますね」
ただ、何処の世界にも夢とロマンで危険に飛び込むヤツは居る。
私はまっぴらごめんだが
≪魔術師≫
系統:魔法使い系初期
主武装:「杖系統武器」「衣服防具」
魔法使い系の基本的クラスの1種。
エルドラド・クロニクルでは初心者が最初に選択できるクラスの1つ。
他の魔法使い系クラスでも使用可能な共通魔法を主軸に強化する魔法やスキルが習得できる。
共通習得できる魔法が大半のため、汎用性は高いが個性が無い魔法系統ともいえる。
また、魔法使い系クラスであるため、打たれ弱く、継続戦闘能力が低いため、基本的にはパーティープレイ推奨のクラス。




