第89話
【エリシア視点】
ベッティちゃんの祝福が解明された後、宿で一夜を過ごして村へとんぼ返り。
こっちの世界だとパ・ブシカの街程度の距離でも馬車で往復で3~4日かかるのはめんどくさいな。
空を飛べれば片道半日で済むが、生憎私の箒は一人乗りだ。
うーむ。伯爵にコネ繋いで、貴族達から出資してもらって鉄道でも作るか?
蒸気機関ならリッシュさんも作れるだろうし、簡単なヤツならこっちの世界の職人でも制作できるかもしれない。
・・・いや、これ以上仕事増やすと私が仕事しかできなくなる。
他にもプレイヤーは転移してるだろうし、その内誰か作るだろ。
今は村の拡大と発展が優先。
村に帰って、事務仕事を再開すると・・・アレ?
「アナベル。なんか作業員の人数増えてるんだけど」
「あぁ。そちらは日雇い労働者達ですね」
日雇い作業員は冬の間、暇している農夫や小作人達の副業として募集してたけど、明らかに村の人数より多い。
「村の外から出稼ぎに来た人たちも居ますからね。この辺りだと比較的好条件なんですよ。モンスターが出ても自警団が対処しますから」
そっか。自警団もレベルが上がって、低級のモンスター程度なら単独で倒せるほどに実力がついたんだっけ。
ふむ。この人数が冬の間働いてくれるなら、工期は少し短くなるかも。
「それと、北側で冒険者組合出張所が完成しました。
パ・ブシカの街の冒険者組合と連携して、周辺地域の討伐依頼や素材収集の依頼を受け付けてくれるそうですよ」
冒険者組合の出張所か。
本格的な冒険者組合の建物より小さいが、冒険者が増えて活気が出たら拡張工事できるように土地は広めに確保してある。
うーむ。私からもチュートリアルキャラのサムシングで薬草採取の依頼でも出そうかな。
冒険者組合の主な仕事は3つ。
1.冒険者達の仕事の斡旋。
2.冒険者に向けた依頼の受付。
3.冒険者達が収集した素材や戦利品の仲介販売。
冒険者という職業は良くも悪くも腕っぷしでのし上がるタイプらしいので、デスクワークや金勘定が苦手な人間が多数派らしい。
文字が読めずとも丈夫な体と武器でモンスターをぶっ倒して適当に素材を剥ぎ取れば、1日の食事にありつける。
狩人の家に生まれて狩りの技術を学んだモンスター狩りのプロみたいな冒険者も居るには居るらしいが、大体は前者。
そんな連中が徒党を組んでマトモに組織運営なんてできる・・・ワケ無い。
酷い所だとチンピラと大差ない奴らも居るらしい。
そこで冒険者組合の出番。
武器持ったオラオラ系コワモテ冒険家の代わりに仕事を取って来て、冒険者に紹介し、仲介料を取って利益を得ているらしい。
まぁ、ウチはマイコニド軍団が居るから、賞金首モンスター狩りよりも基本は素材収集依頼が多数かな。
最近はモンスター素材を扱う工芸職人達が素材が足りないと言って、自警団にもっと素材を集めろと言ってるし。
素材そのまま売り出すより、工芸品に加工した方がちょっと値が良いんだよね。
ウチの村に移住してくれた工芸職人達はそれなりに良い腕をしてて、私も最近は羽ペンから、村の骨細工職人が作った蛇型の魔獣の牙から作成された付けペン(インク壺から直接ペン先にインクを付けて書くペン)を使用している。
グリップ部分もオーダーメイドで羽ペンより握りやすく、書きやすい。
そこそこの値段はしたけど良い物を作ってくれるので、今後も期待しよう。
インクは私のスキルで簡単に自作できるし、コスパを考えれば寿命が短い安い羽ペンを何本も買うより経済的だ。
それに、冒険者している魔法使いも気になる。
こっちの世界にある固有の魔法でも特に実戦的な魔法を知っている可能性があるので、ぜひ知りたい。
「師匠。今日の分が出来ました」
作業部屋からベッティちゃんが来て、今日の修行の成果を見せてくれたので、事務作業を中断して検分を始める。
ベッティちゃんも最近になって『薬剤師』クラスを習得し、簡単な薬を制作できるようになった。
・・・何故かついでに『学者』と『医者』のクラスも一緒に習得してた。
勉強効果かな・・・?クラス構成だけ見ても私より頭良さそう。
今回ベッティちゃんの修行として課したのは、『止血軟膏』の作製。
比較的簡単な素材と難易度で制作できる『出血』の状態異常を治せる軟膏だ。
こっちの世界では傷口に塗ることで、出血を抑えてくれる。
絆創膏は無いのでその上からガーゼか包帯で覆うけど。
「並、並、良、並、優良、良、並、良、並、並・・・」
品質をチェックしながら品質別に並び替える。
優良や良品質は店頭に出して、売り上げをベッティちゃんの取り分にすることを約束してる。
並以下は残念だが悪影響や効果不足の可能性があるので、実験材料に使うか廃棄。
「優良8、良15。他は全部並をキープしてる。
連続生産してこの数の優良と良品質を出せるなら良いペースかな」
まぁ良品質の止血軟膏の作製難度は、ベッティちゃんの『薬剤師』レベルからしたらやや難しいランクに位置するが、それぐらいが経験値取得には効率が良い。
流石に激ムズ難度の調合なんて危なくてやらせたくないし、失敗から得られる経験値もそれなりに美味しいが、素材を無駄にしたく無い。
そろそろ実戦使用前提の毒の調合と使用方法も教えるべきかな・・・
≪戦士≫
系統:戦士系初期
主装備:「近接戦士武器全般」「投擲武器」「軽装鎧」「重装鎧」「片手使用盾」
戦士系で最も基本的なクラス。
エルドラド・クロニクルにおいて初心者が最初に選べるクラスの1つであり、癖が無く、両手、片手使用の近接戦士武器全般と衣類を除く防具類全般に適性を持つため、誰でも扱いやすいキャラに仕上げられる。
また、消耗品武装である「投げナイフ」や「投げ槍」「投石」などの「投擲武器」カテゴリの中射程武器も装備できるため、ガチガチに近接の殴り合いだけでなく射撃での応戦も可能。
ただし、習得できるスキルは広く浅いので、メイン武器を決めたらさっさと特化クラスを習得するのが無難。




