第88話
祝福とやらを調べるため、コネクションを繋いだパ・ブシカの聖堂に手紙を出してみると、そちらでも調べることはできると返事が貰えたので、調べてもらうことにした。
冬になる前に交易馬車に便乗してパ・ブシカの聖堂へと向かう計画を立て、準備をする。
帰る頃には冬に突入してるだろうけど、それまではアカネ達に仕事を投げても大丈夫だろう。
魔法薬の生産はストップしてしまうが、ベッティちゃんの祝福について知っておかないと、今後の成長に関わる。
「準備できました」
「よし。ではちょっと行って来ますね」
「お土産よろしく~」
マーシャさんに見送りされて、交易馬車と共にパ・ブシカの街に向かい、1日移動し続ければ到着。
冬が目前だから野営は寒いな。
宿に荷物を置いて、トールさんのラーメン屋さんに顔を出しておく。
「よ。久しぶりだな」
「はい。お久しぶりです。メニュー増えましたね」
壁に貼られたメニューが増えてる。
以前は塩ラーメンと唐揚げくらいしかなかったメニューだが、味噌ラーメンや醤油ラーメン、炒飯などのメニューが増えてた。
「まぁな。税が元に戻って交易が活発になったから、材料が手に入りやすくなったんだ。
あと、ジャン・バラの交易隊のおかげで醤油とかも手に入って、料理の幅が増えた」
そっか。それは良かった。
約束した時間までまだ余裕はある。
せっかくなので、ベッティちゃんと共にラーメンで腹ごしらえをしてから向かうことにした。
「えっと。この『みそらーめん』ください」
「私も同じものを。あと、唐揚げ2人前で」
「はい!少々お待ちくださーい!」
待つことしばらくして、相変わらず店員をやってるロージーさんがラーメンと唐揚げを運んできてくれた。
「お待たせしましたー!味噌ラーメン2つと唐揚げ2人前です!」
寒いからラーメン食べたかったんだよねぇ。
「?・・・???」
あぁ、ベッティちゃんは箸の使い方が分からないか
フォークとレンゲを使ってミニラーメンにして食べるように勧めたら、上手に食べれるようになった。
一口食べると、おぉ、凄く美味しかったようで目を輝かせて食べてる。
あぁ、熱いからちゃんと冷まさないと・・・
さて、ラーメンで腹ごしらえを終え、少し早めに聖堂に到着。
実は去年の冬に、帰還準備時に挨拶に来た事もあり、道は知っていた。
パ・ブシカの聖堂は多神教らしく、2柱の大神を祀る本殿とその周囲に10柱の小神を祀る祠がある。
特に神話とか気にしたことは無いが、まぁ暇なときに情報収集すればいいか。
本殿入り口で用件を伝え、お布施を置くとすぐに案内してくれた。
「ようこそ。祝福の鑑定ですね。準備は出来ております」
本殿の奥の部屋。一般信徒が立ち入らないような場所に通された。
床一面に幾何学模様の魔法陣が敷かれている、石壁で囲まれた半地下の部屋に通された。
「祝福を授かる人間は非常に稀でして、このように窓や人目のない場所で調べなければ、悪意ある人間に狙われたりする場合がありまして」
なるほど。よく見たら≪知覚除け≫とか≪追跡阻害≫みたいな術が壁や天井に張り巡らされている。
この部屋に居たら、外部からは誰も感知できないだろうな。
「陣の中央にある椅子に座ってください。
その後、≪祝福看破≫を発動し、看破を行います
術が影響を受けるため、陣の内部は対象者と行使する神官以外は立ち入らないでください」
「扉を開けた状態で見学は?」
「構いません」
仕方がないので部屋から出て、扉を開けて見学
3人の神官が部屋の中でベッティちゃんを囲み、魔法を行使すると床の魔法陣が輝きを放つ
しばらくして、魔法陣の光が収まると神官の1人が持つ羊皮紙に小さな煙が立ち上る。
「看破成功です。祝福の内容が記されました」
「どうも」
やはり祝福が備わっていたようだったらしい。
「彼女に宿る祝福は『深知の祝福』と出ました」
祝福の効果が書かれた羊皮紙を受け取り、内容を確認する
【深知の祝福】
・自己の学びを糧に覚醒へと促す
・学びと知見に多くの発見を得る
・より深く、より広い見識が祝福を持つ者を昇華させる
・魔道の習熟を速め、習得を助ける
・魔道の深知へと至る可能性の示唆
ふむ。つまるところ、勉強や学問に対して経験値ボーナスが入り、獲得した知識がその経験値ボーナスをブーストさせる感じ・・・かな?
そして勉学に対して高い習得効果・・・つまり知識の収集が上手いわけか。
魔法の習熟を速める・・・つまり魔法を覚えやすくする効果もあるってこと?
・・・普通に強いな。
つまり勉強や研究をするほどに、本人の知識が蓄積するほど彼女はよりレベルアップ速度が上がる。
知識量がモノを言う魔法使いにとっては強力すぎる祝福だな。
・・・最後の『魔道の深知へと至る』って所がなんかチート主人公みたいな香りしてるなぁ・・・
えぇ・・・私もこういう能力欲しい・・・
「エリシアさん、良ければ貴女も受けてみますか?」
「え」
どうだろ・・・ゲームアバターであるエリシアに祝福とかついてるか?
うーん・・・
「お願いします」
物は試しという事で、追加のお布施を渡して受けてみる
「結果ですが・・・貴女は祝福を宿しておりませんね」
わかってたよチクショウ!!
≪人間≫
世界中で最も数多く存在する種族の1つ。
環境や訓練次第であらゆるクラスが習得でき、全ての属性の魔法にも習得の可能性はある。
極限の環境を除いて、技術や工夫によって様々な地域や環境に適応して暮らしている。
イデア王国では人間は基本的に15歳で成人として扱われ、平均寿命はおおよそ60代後半から70代程度




