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第83話

 ジャン・バラさんが提案した本格的な支社の設置や定期交易隊の話は、西大陸に戻ってから説得に行くという事になったが、どうにも可能性は高いと考えてるらしい。


 とにかく、お祭り騒ぎのキャラバン隊キャンプは滞在と補給を終え、7日目に西大陸に向かって帰っていった。


 対面鏡があるので、いつでも連絡は取れるし、ついでだから再び来るときは西大陸の魔導書とかの書物を持って来てくれるように注文も付けておいた。



 そして季節は秋に入り、収穫の時期が近づく。

 そうなると、魔獣型のモンスターがよく村に接近するのだ。

 去年もそうだったし、今年もマイコニド達と共に村に寄ってくる魔物を丘で待ち構えて狩る。

 そのついでとして、ベッティちゃんの修行として私とアキヒト君付き添いで魔物狩りを行う。


 今回のターゲットは北側の森から出てきた熊型の魔物。

 目撃情報によると、体長はなんと8m近い体躯らしく(マジでデカいな・・・)冬ごもり前という事で食欲旺盛らしい。

 そんなのが南下したら困るので、アキヒト君を前衛に熊狩りを決行。


「あの、ベッティちゃん連れて大丈夫っすか?」

「そのためのアキヒト君(回避盾)ですよ。

 惹きつけるだけで倒しちゃだめですよ、実戦で魔法を使わせないと訓練にならないんで」

「ウス」

「がんばります」


 不安かもしれないが、現段階で教えられる範囲の魔法は教えたし、魔法フレンドリーなスキルや能力はさらにレベルを上げてもらわないと習得できない。

 それに、アキヒト君の装備なら自然に出てくる魔獣程度の攻撃なら余裕で防げるし、ベッティちゃんの魔法が誤射してもレベル差で無効化できる装備を持ってるから誤射を気にせず戦える。

 こっちに来ても私がガチガチに魔法で拘束してしまえば問題ない。

 マジでヤバいときは私達が本気になれば、自然発生する魔獣程度は秒殺だ。


「≪痕跡探知(センサーログ)≫・・・熊型魔獣の痕跡発見。≪痕跡追跡(ロケートログ)≫」


 足跡などの痕跡から対象を追跡する魔法で追跡すれば・・・ここか。

 丘を挟んだ反対側の麓にある木々をなぎ倒してできた巣穴っぽい物。


 今は・・・寝てるっぽいな。その隙に支援魔法と強化スキルを済ませておく。

 準備が完了した辺りで、指示を送り巣穴奥へ向かってベッティちゃんに魔法を巣穴に撃ち込んでもらう。


「≪魔力の矢(マジックアロー)≫!」


 魔法を撃ち込まれると、怒りの咆哮と共に熊型魔獣が巣穴から飛び出してきた!

「おっしゃ来い!≪挑発(タウント)≫!」


 アキヒト君が防御系のスキルである≪挑発≫で魔獣の注意を引いている間にベッティちゃんは≪魔力の矢≫を連射してもらう。

 ヘイトがコッチに向く前に、少し援護するか。


「≪幻影の霧(ミラージュミスト)≫≪樹木の杭柵(ウッドスパイク)≫」


 どちらも直接の攻撃力は無い魔法だが、幻影のシルエットで相手を惑わす透明の霧を発生させる魔法と樹木をバリケードにして簡易防御陣地を作成する魔法で接近を阻害しておく。

「≪魔力の矢≫!」


 2発目の魔力の矢はちゃんと命中。

 ベッティちゃんには『誤射を気にせずとにかく魔獣に向かって魔法を撃ちまくれ』としか指示を出してない。

 複雑な作戦なんて私は思いつかないし、効率の良いトレーニング方法なんてのも分からないので、とにかく見て覚えてもらうしかできない。


「エリシアさん!殺さない程度なら反撃とかして良いんすよね!?じゃ無きゃヘイト維持無理っす!」

「手加減はしてくださいね!」

「分かってるっスよ!≪峰打ち≫!」


 アキヒト君は普段の剣・・・ではなく手加減用の木刀で魔獣の爪を叩きつける。

 たしかあの決闘騒ぎの後、悪ガキ達を相手に時々剣術教室っぽいことやってたな。


 こっちも弱体化魔法で弱らせておくか。くらえ!生活習慣病コンボ!

「≪体力低下(スタミナゲイン)≫≪肥満体(メタボリック)≫≪行動鈍化(ディレイムーヴ)≫」


 発動させた順に『スタミナゲージの上限値を削る』『肥満体質にさせ、攻撃やダッシュのスタミナ消費を増やす』『あらゆる行動動作を遅くさせる』弱体化魔法を積んで、スタミナ値を削ってやると、アキヒト君への攻撃中に熊型魔獣は目に見えて息が上がって動きが鈍くなる。


 そりゃいきなり肥満体にされた上に動きが遅くなれば、いつもより疲れるよな!

「≪魔力の矢≫!」


 熊型魔獣の動きが鈍った所に3発目の≪魔力の矢≫。

 お、今のはクリティカルヒットしたらしい。目に見えてダメージを負った。


「≪峰打ち≫≪叩きつけ(バッシュ)≫!」

 ダメージを受けて仰け反った辺りでアキヒト君が盾による殴打攻撃で熊型魔獣の顔をぶん殴る。

 顔を殴るのが好きなのかい?君。


「殴打攻撃は頭部に当てれば『スタン』狙えるって知ってるっスよね!?」

「冗談ですよ」


 さて、チマチマ戦ってるのはベッティちゃんの魔法の使用回数を上げるためだ。

 特に適性系のスキルは実践回数を一定までこなさないと習得できないので、地道に何回も魔法を使って、消費を体に覚えさせる必要がある。

 特定の系統の魔法を使用し、MP消費を頻繁に体が感じるほど、肉体はそのMP消費に順応するため、魔法系統別に効率を上げて魔力消費を最適化する。

 これが適性スキルのカラクリだ。


 乗り物を日常的に乗っていれば、自然と運転が上達するのと理屈は一緒と考えてくれると助かる。

 当然、一定水準以上の実力はトレーニングが必須だが、最低限の素養を身に着けるなら反復しての魔法使用が良い。


 とりあえず、≪共通魔法適性≫は今後習得できる共通魔法でも無駄にならないし、≪魔女系統魔法適性≫のスキルは魔女系統を伸ばすなら必須。

 まずは成長先が複数ある時点でも無駄にならない≪共通魔法適性≫の習得を目指してもらうため、魔力の矢を連発してもらう。


「≪峰打ち≫≪挑発攻撃≫!」

「≪魔力の矢≫!」

「≪老化(オールド)≫」

 アキヒト君がダメージ量低下と引き換えにヘイトを増やせる挑発攻撃で自身に注意を引きつけてくれる間にベッティちゃんが魔力の矢を続けざまに発射。

 私も老化デバフを与えてスタミナ低下と感覚値の低下を誘う魔法で援護。


 ここまでスタミナを削り、動きを鈍くすれば1撃攻撃するごとに熊型魔獣も息を入れて動かないとダメらしいな。

 後は様子見するだけで、ベッティちゃんの魔法でどうにかなりそうだ。


 その後、何回か魔力の矢を撃ち込まれた熊型魔獣は疲労困憊でぶっ倒れ、≪共通魔法適性≫を習得できた辺りでトドメを刺されて無事にベッティちゃんの経験値となった。


 ゴメンよ熊さん。ボロボロだけど資源として有効活用させてもらうから。

叩きつけバッシュ

種別:攻撃スキル/共通

制限:戦士系、軽戦士系全般

属性:物理/殴打

射程:武器

武器や盾を相手に叩きつける。ただそれだけのスキル。

クリティカルは発生しないが隙が少なく、連続発動が可能で、戦士系にとっては便利な弱攻撃扱い。

殴打属性は生物系のモンスターの頭部に当てることで確率で『スタン』を狙うことができる。

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家畜に肥満体かけてから屠殺すれば霜降り肉量産できる…!?
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