第74話
【エリシア視点】
悪魔捕獲作戦から2週間が経過し、村の畑は夏の収穫作業に入る。
自爆攻撃で回収できたのは下位悪魔たちの装備の欠片とかのガラクタばっかり。
情報も得られず、悪魔達の召喚主が何を企んでいるか知らないが、不穏なモノを未然に村に近づけない事が防衛にとって1番大事な事。
マーシャさんも、あの後しばらくは村を留守にして周辺地域に痕跡を残してないか捜査した結果、イースリーから南にある隣の領までは追跡できたけど、そこから先は騎士とかが出てきて調査が難しくなったらしい。
なんでも地形が変わってしまうほどの大規模な戦闘が確認されたらしく、しかも隣の国との国境近くだったせいで両国の国境を担当していた貴族同士が強い緊張状態になっていたらしい。
「あれだけピリピリした騎士とかが調査してたら、迂闊に調査スキル使って隠密解けると、色々面倒そうだったのよね・・・」
むしろたった数日で隣の領まで走破して足取りを追跡したマーシャさんの調査力と機動力にビックリ。
「足取りなんだけど、この国から東に向かった・・・って所までしか分からなかったのよね。
聞き込みしてみたら、冒険者とか傭兵とか商人とか、名乗ってた名前まで言ってる事がみんなバラバラ。
容姿は似顔絵までしかできなかったわ」
「流石マーシャさんです。似顔絵だけでもありがたい・・・で・・す・・・が」
マーシャさんが作った似顔絵を受け取るが・・・これは・・・
悲報。マーシャさんには絵心が無かった。いわゆる『画伯』ってヤツだった。
え。コレ似顔絵?スキルとはいえ地図はあんなに綺麗に書けてたのに?
「上手く特徴を捉えたと思ってるけど?」
自覚してないタイプだーーーーッ!!!
とりあえず、灰色っぽい髪?の男?ぐらいしか伝わらない。
アカネに見せると、
「・・・」
何も言わずにスッと返された。
「・・・とりあえず、マイコニド達でマーシャさんが貰った情報から似顔絵を作成してくれる?」
「畏まりました」
「えー!?」
アカネに連れられ、マーシャさんはアカネの事務室へ連れていかれた。
とりあえず、悪魔達の召喚主は隣の国か・・・
ここからだと追跡部隊を編成して追いかけても無駄だろうし、国境はきっと厳戒態勢で武装したマイコニド軍団を通してくれるはず無いよね・・・
しかも移動先で何か強力なスキルか魔法を発動させてたらしいから・・・誰かと戦闘してた?
うーん分らん。・・・とりあえず、村の発展と警戒網作成に力を入れるしか私のとれる行動が無い。
村の収穫だが、昨年より収量が増えており、貴族の反乱による挙兵によって食料の需要が上がったおかげで村の交易所でかなりの利益が予想された。
報告書を見れば・・・うーむ、一番人気はバロメッツ肉か。
バロメッツ肉は保存が難しいが、美味しくて毛も採れる。
肉類は特に兵士や貴族が良く買ってくれて、貴族からの食肉の需要は高い。
養殖や畜産はこの国じゃ比較的新しい産業らしく、じゃー前まで何の肉食ってたんだ?ってって言うと、モンスター肉。
貴族は狩人や兵士を率いて魔獣系のモンスターを狩ってそれを食べる。
一般人は鶏とか安全な川や池で魚釣って食べてるらしい。
農耕もそうだが畜産は広い土地が必要で、ちょっと森の奥に入ったらモンスターと遭遇するこの世界では、広い土地は貴重で開拓は文字通りモンスターとの縄張り争い。
なので、広い土地でのびのび飼える『家畜の肉』はこの国じゃ高級品らしい。
羊毛とか綿花があれだけ高いのもちょっと納得。
バロメッツ肉の価値を落とさない程度に飼育量を調整しつつ、今後もパ・ブシカの街へ定期的に卸せば、安定した産業になる。
・・・飼料の改良も後で飼育担当に研究させようかな。未来に向けたブランド化を目指して。
そして他にも値上がりしたのが金属製品だ。
武器の増産で貴金属を除く鉄や鋼の需要が跳ね上がって、替えの農具とかが買えなかったり売り切れてたりしてた。
替えの農具は何とか魔法で代替品作ってしばらく待ってもらうか。
えーと。何か良い魔法なかったっけ?
脳内で私やマイコニド達で使える魔法を検索・・・あぁ確か真菌の魔術師達のレベルだと≪応急修理≫が使えたっけ?
装備アイテムの耐久値を若干回復させる魔法だが、道具を間に合わせに修理させるには十分なはず。
完全に破損したアイテムには効果が無いが、一度総点検して修理させれば来年まで持つかな・・・?
最悪、私が≪収穫の鎌≫で全部やるか。
さて、開拓村の事ばかりやってる訳にもいかない。
ついにベッティちゃんが修行の目標だった『魔力エネルギーの10秒キープ』をクリアした。
それと同時に、私と同じ『魔女』クラスの習得を確認した。
約束通り、魔法を教えたいところだが・・・Lv1だもんなぁ。
Lv的にショボいのしか教えることはできないし、私の方も魔法はゲームシステムで習得したから『教えてみろ』と言われて、できるかな・・・?
「お願いします!」
そんな無垢な眼で見ないで・・・私ってゲームでレベルアップしただけだから・・・!
とりあえず、魔女固有や共通でLv1で習得できる魔法は・・・
ぎっくり腰でお馴染みの≪魔女の一撃≫
魔法使いなら最初に使える≪魔力の矢≫
刀剣類の攻撃力を下げる≪刃引き≫
嫌な音を発生させて弱い相手を怯ませる≪雑音≫
壁や床に目印をつける≪目印≫
傷を負った相手に『出血』の状態異常を付与する≪流血過多≫
指定した相手の視界を塞ぐ≪目隠し≫
くらいかな・・・
無いとは思うが、喧嘩で魔法を使われても困るので攻撃用の魔法は後回しにして、比較的穏便な魔法と言えば・・・≪目印≫か?
簡単そうだし、最初に教えるには一番ピッタリな気がする。
慣れてきたら≪刃引き≫とか≪目隠し≫と少しずつレベルアップさせればいいか。
まだ魔女を習得したばかりだし、ゆっくり教えれば良いでしょ。
≪懸賞金≫
種別:商人or生産系全般共通スキル
制限:金貨1000枚以上の所持
属性:情報
射程距離:0~50m
形状:対象指定
賞金稼ぎが貴方の味方!死んでしまう前に襲われた相手に懸賞金を懸けて賞金首にするスキル。
賞金首の情報は全プレイヤーに通達され、悪質なPKに対して報復が可能。
懸賞金は発動と同時にスキルが回収し、賞金首を討伐したプレイヤーに自動送金されるので、やられてしまっても一度懸けた賞金は消えることは無いので、逃れることはできない。
なお、一度発動して送金した金貨は取り戻せないので注意。




