第7話
「女王様。 掃討完了しました」
追撃に出た真菌の兵士が戻って来て報告。
ゴブリンに対する防衛戦力は十分・・・かな。
問題は・・・食料か。
アカネが召喚した40体のマイコニド系クリーチャー。
ゲームなら時間経過で勝手に帰るが、この世界ではいつまで留まるか分からないし、野ざらしで放置するのもなぁ・・・。
村人たちにマイコニド軍団の事は、貴重なマジックアイテムの効果で召喚した。と説明すると何故か納得された。
魔法や神秘が身近なこの世界では、なんでも魔法と説明すると納得するのだろうか。
気を取り直してマイコニド軍団の手を借りて開拓作業の再開。
マイコニド軍団の半数はチーム分けして村周辺を探索調査に、残りの半数とアカネは私と共に開拓作業。
収穫の鎌でザクザク切り開き、効果で出現した材木や素材をマイコニド達が集積場所に纏めてくれる。
ある程度の素材は完了したので、簡素な小屋を庭園作成の魔法で作成。
エディター機能で長屋風に建築を実行すれば、集めた材木が自動的に加工されて組み上がり、あっという間に完成。
「仮だけど初めての拠点ね」
「流石です主様!」
アカネ。ヨイショしてくれるのは嬉しいけど、ほぼ掘っ立て小屋だよ?
内装も小さいテーブルと椅子。あと藁を詰めたベッド。
床とか板を敷いただけ。見た目もみすぼらしいので早く素材を集めてアップグレードを目指す。
「とりあえず、マイコニド軍団の寝床は今はこんな感じかな」
さて、余った素材で金策の準備に取り掛かろう。
マイコニド軍団がせっせと集めて来た素材は材木だけでなく、なんだかよく分からない植物だとか石ころだとか粘土までかき集めてくれた。
サクッと収穫の鎌で素材化させて、庭園作成の材料に。
「先ずはプランター」
土が詰まった木枠としか言えない見た目だが、コレで作物や魔法植物の栽培ができる。
とりあえず、5つ作成して配置。ゲームで持ってた植物がこの世界でも育つかは賭けだが元気に育ってほしい。
5つの内3つをエルドラド・クロニクル産の植物。
残り2つは村で見つけた薬草と村人から治療費の代わりに貰った小麦の種もみを植える。
次に作成したのはコンポスター。
エルドラド・クロニクルでは時間経過と共に『肥料』を生産するオブジェクトだが・・・。
「何もありませんね」
中身が空っぽで何も変化が起こらない。
「エルドラド・クロニクルだと何もなくても肥料が生産されたんだけどなぁ」
とりあえず、落ち葉と村で捨てられてる生ゴミをマイコニド達が素材として集めてくれたのでそれを放り込んでおく。
そして目についたマイコニドの1人に定期的にかき混ぜておくように指示。
以前、リアルでコンポスターについて調べてた時に生ゴミと腐葉土を入れてかき混ぜるという漠然とした知識が頼り。
で、次に作ったのはトイレ。
洋式個室で、残念ながらウォシュレットは作れなかった・・・。
水は個室の天井に乗っけてあるタンクに水を貯めてある。
トイレットペーパーも村には無かった。というかトイレットペーパーという概念すら無かった。
仕方ないので収穫の鎌で雑草を収穫した時に出た産物である『繊維』を織機を持っている住人に頼み、布として織ってトイレットペーパー代わりに。
ちなみに下水は林の奥に沼を見つけたのでそこに繋げてある。
流石に庭園作成で作れる設備に浄水設備は無いので垂れ流し。
で、最後が井戸。コレが難物だった。
手押しポンプの井戸を設置したかったが要求材料に金属が有った。
そこで妥協してつるべ落としの井戸。
井戸桶と滑車は村に有った井戸の予備部品を買った。
要求材料を満たしていざ作成!と思ったら今度は地下水までの距離や場所の制限が有った。
地下の障害物や後の開拓建築の邪魔にならない位置を探り、ようやく設置。
そしていざ水汲み!と繊維から作ったロープで結んだ桶を滑車に通して放り込み、引き上げ・・・る・・・が。
「おっも・・・キッツ・・・!」
汲み上げ効率が悪かった。
ロープが揺れて桶から水が零れるし、ロープの引き上げに力も要る。
マイコニド達は特に気にせず水汲みしてるが、私には無理。
結論。水汲みはマイコニド達に頼むことにした。
大雑把に初期設備が完成したので、本命の金策に入る。
「≪調合台≫」
薬師の魔女の魔法で調合台を呼び出す。
私を中心に地面に魔法陣が出現し、正面に調合器具が並べられた作業台が出現。
「よし、問題無し」
大量生産するなら職人プレイヤーに頼んで設備を作ってもらう必要があるが、無い物ねだりはしない。
開拓と建築の合間に小物を揃えるために村の資材店や雑貨屋で商品を見て回った時に気づいたことが幾つかある。
まず、村ではゴブリンの襲撃が頻発しているせいで農作業が滞る事態になっている。
そのせいで村の収入や食糧自給が下がり、困窮している。
だが、村でも値段が変わらない商品が幾つか存在していた。
まず塩、村の食料品店の店主は魔法で塩を作れるため、塩は安定価格で有るらしい。
そして、もう一つが『ガラス製品』。
厳密に言えば『ガラス瓶』だが、どう見ても技術水準的に透明なガラス瓶が有る事に不思議に思って雑貨屋に聞いてみると、町に住む錬金術師達が量産しているらしい。
エルドラド・クロニクルでも錬金術師はクラスとして実装されていたし、錬金術師の生産品にガラス瓶は有ったのは知ってる。
生産難易度も初歩。この世界の錬金術師も研鑽と修行、そして収入の為にガラス瓶を量産して販売しているので、安価にガラス瓶が流通しているらしい。
ガラス瓶は薬師が生産するポーションの容器でもある。
安価で手に入るならと100本ほど買い占めてきた。
分析魔法でもポーション容器にしても問題ないと診断したので、この瓶を使って村近辺で手に入れた薬草をポーションに変えていく。
≪病毒治癒≫
種別:回復魔法/制限
制限:特定の魔法系クラスor神官系クラス
属性:魔法/回復
射程:5m
形状:射撃
病気・毒の状態異常を解除する回復魔法。
神官系、もしくは回復魔法を習得できる魔法系クラスなら習得可能。
大抵の病気・毒であれば解除できるが、『大病』もしくは『猛毒』の状態異常の場合は上位病毒治癒でなければ解除できない。