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第72話

 さて、私流おもてなしフルコースを味わった名も知らぬ悪魔。

 意外と弱くて、あっさり完封できたな。ホントにネームドか?

 流石に死んだら蘇生薬を使う必要があるが、確認してみたらまだ死んでない。


 精神体である悪魔は精神破壊攻撃が一番効果的なのはエルドラド・クロニクルでは常識。

 もちろん『退魔師』とか『セイントオーダー』とか悪魔、魔性特効なクラスが一番悪魔に対して強いが、そんなクラスを常備してる人も少数派だから、有り物で何とかするしかないんだよね。


「≪通信≫。マーシャさん、生け捕り成功です」

『アンタねぇ!マンドレイク使うなら言ってよ!ちょっと意識飛んだんだからね!?』


 おっと、マーシャさんもマンドレイクの叫びを聞いたせいで意識が飛んだらしかった。反省。

 マンドレイクの叫びは敵味方の識別なんてできないもんなぁ・・・


「スイマセン。・・・これから≪支配(ドミネイト)≫で精神支配して、情報を抜き出します」

『オッケー。周りの騎士級悪魔はコッチで始末しとくから』


 こっちの世界で試したこと無いが、マンドレイクの叫びからの≪支配≫はエルドラド・クロニクルでは私の鉄板コンボ。

 通常では支配の魔法は成功率が低すぎて使い物にならないが、精神破壊するマンドレイクの叫びで抵抗と耐性を無効化させ、その隙に支配の魔法で操る。

 このコンボによって少なくとも不特定多数の雑魚敵を味方にして逆襲できるし、相手側にマンドレイク対策を強要して装備枠やアイテム枠を圧迫させることができる。


 上位層プレイヤーは当たり前のように精神攻撃対策はされているが、その上位層でも魔法で呼び出した配下や味方モブまで精神効果対策を行き渡らせるのは不可能に近い。

 つまり、モブ狩りして他の人が強敵を狩ってもらうのが私の役目。いわば雑魚専である。

 エルドラド・クロニクルでは大体の魔法使いの役割が『支援魔法で味方全体をサポートする』か『高火力広範囲魔法で不特定多数の敵集団を蹂躙する』の2大派閥。

 状態異常、弱体化魔法を主軸とする魔女系は実はけっこう下火で人気が無い。


 刺さる時は刺さるけど、ゲームでは耐性付与効果装備が出回っているせいでどうにもこうにもPVPでは効きが悪いから、自然とモブ敵を狩るしか選択肢が無いんだよね。

 こっちの世界では耐性系装備みたいな魔法の装備は超高級品だから特に気にしなかったし、今までは基本的に野生のモンスター相手だったからなぁ。


 さて、≪支配≫を行使しようと詠唱に入ると・・・魔法知覚が違和感を捉えた。


 何だコレ、この悪魔の体の中で魔力が勝手に動いてる?

 瞬間、悪魔の体がゴム風船に水を突っ込んだみたいに()()()


 その瞬間、私も召喚系魔法を使えるため、ある1つの魔法が頭をよぎった。


≪強制自爆≫。文字通り召喚したクリーチャーを『自爆させる』魔法。


 ・・・弱いんじゃなくて『弱くした』のか!!ワザと()()()()()()()()()()()()()()()に!


 ヤバい。スキルを使ってないから詠唱中は移動できない!他の魔法に切り替える時間も無い!


 自爆に巻き込まれる!


 そう思った瞬間

「≪帰還命令(リターン)≫!!」


 アカネの≪帰還命令≫によって、アカネの近くにワープできた。

≪帰還命令≫は視界に居る鼓舞スキルの影響を受けることができる味方を、自分の近くへと『呼び戻す』指揮官系の魔法。

 ゴーレムのような物体型には作用しないが、人間である私や配下のマイコニド達は適用される!

 同じように≪帰還命令≫でアカネの周りにはマイコニド達が集結していた。


「魔術師隊!」

 アカネの指示で真菌の魔術師達が横隊を組む。

『≪連携魔法(ユニオンマジック)≫≪魔力の壁(アーケインウォール)≫!!』


≪連携魔法≫は複数人で同一の魔法を行使すると、参加人数に比例して魔法の効果を向上させるスキル。

 真菌の魔術師5人がかりの≪魔力の壁≫が城壁のようにそびえ立ち、その直後に悪魔に仕掛けられた≪強制自爆≫が発動。


 まるでミサイルでも落ちてきたのかと思うほどの衝撃と轟音が響き、≪魔力の壁≫が爆風を受け止めてくれたが、大きく亀裂が入り今にも崩壊寸前。


 だがそのおかげで、魔法の切り替えが完了した。


「≪庇護の庭園ガーデン・オブ・アサイン≫ッ!」

 発動させたのは即席で陣地を作る魔法。

 自身を中心に無敵状態になれる陣地『庇護の庭園』を展開し、自身と周囲の味方をあらゆる攻撃から守る事ができる。

 ただし欠点として、この魔法を発動中は私は移動ができず、他の魔法やスキルが使えないし、クールタイムが長いし消費MPも高い。

 しかも陣地である『庇護の庭園』には耐久値が設定されているため、耐久値が無くなれば庇護の庭園は効果を失う。


 だが、耐久値が無くならない限りは『1撃必殺の攻撃からも身を守れる最強の防御魔法』なのだ。


 真菌の魔術師達の≪魔力の壁≫が砕かれたすぐ後に≪庇護の庭園≫がマイコニド達を含めた防御陣地となって爆風を受け止めてくれた。


 庇護の庭園の耐久値はゲームではレイドボスのドラゴンのブレスも受けきった実績のある最強の防御魔法。

 自爆のダメージも受けきり、なんとか無傷で自爆攻撃を凌ぐことができた。


 自爆攻撃の爆風が過ぎ去り、爆心地は・・・酷いなこれ。地面が大きくえぐれてる。

 周りにいた騎士級悪魔も、今の自爆に巻き込まれてバラバラだ・・・


「全員無事!?」

 マーシャさんが後方から慌てたように隠密解除して駆け寄ってきた。


「全員無事です。ただ・・・」

「偵察兼自爆特攻だったワケね。エグイ真似するわ」


 またしても情報は爆破で無くなってしまった。

≪強制自爆≫

種別:攻撃魔法

制限:召喚魔法習得時に任意習得

属性:自爆させるクリーチャーの属性に依存

射程距離:自爆させるクリーチャーの位置

形状:爆破

術者が召喚したクリーチャーを任意のタイミングで強制的に自爆させて、その周囲の敵にダメージを与える魔法。

爆破の破壊力は召喚主のステータスに依存するため、どんなに矮小なクリーチャーであっても威力は保証される。

力が弱くとも数の多いクリーチャーとこの魔法の組み合わせは恐ろしい攻撃手段となりえる。

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― 新着の感想 ―
うわえっぐいなぁ、こんな手段を選ばない敵なんてどうやって相手すんだよ。相手の目的も見えないしなぁ。この世界を支配するのにプレイヤーが邪魔とか考えてんのかな?
ネームドなのに自爆要員とか可哀想すぎるだろ…。 相手は主人公と違って召喚クリーチャーをゲーム感覚のまま ただのコマとしか見てないタイプのプレイヤーなのだろか…。
また土地に被害が……
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