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閑話5『とある神官見習いの話』

 私はエリー。聖堂救道院(孤児院みたいな物)で育った神官見習い。

 聖堂の教えを受け、それを守り、信徒の1人として祈りと修行の日々を過ごしていました。


 私の住む町は古い迷宮を取り囲む迷宮都市。

 私が生まれるよりずっとずっと昔、不死の力に憑りつかれた大魔導師が禁じられた邪法を使って強大な不死者(アンデッド)の王となり、不死者の軍勢を操り、この地は蹂躙されていたところ、善なる神々の啓示を受けた初代の聖女様が迷宮核の力を使い、不死の軍勢を迷宮の奥底へと封印しました。


 以後、不死者の王が迷宮から出ないように冒険者が迷宮内に現れる不死者の兵士を倒しながら10年に一度、聖女として選ばれた女性が迷宮の奥へと進み、不死者の王の封印を確認するのがこの街の習わしとなりました。


 そして今年、私が封印を確認する聖女に選ばれ、今年度で最も優秀だった冒険者と共に迷宮奥へと足を踏み入れることになりました。


 探索されつくされた道とはいえ、生きて帰る保証が無い迷宮の奥。

 不安の中、共に迷宮奥へと進む冒険者との初めての顔合わせ。

 冒険者組合によると、加入してまだ1か月程度にも関わらず、過去最高の戦闘実績と探索実績をたたき出した異例のチームだとか・・・


 扉を開けると







「ウェーーーイ!ダンデビ盛り上げてこーゥ!」

「聖女ちゃん歳幾つ?え!?13!?その歳でダンジョン行くとかヤヴァッ!」

「聖女ちゃんのブロンドすっごい!この世界でこんなサラサラツヤツヤとかマジうらやまー」



 な ん か す ご い の が き た


 顔合わせのために用意された応接室に居たのは、意味不明なくらい陽気で、騒がしい3人組。

 これが、過去最高の実績を持つ組合最高峰のチーム・・・?


「はい!自己紹介コーナー!」

「「ウェーーーーーーイ!!」」

「さっきからその「うぇーい」って何ですか!?」


「ウェーイが何かって?わからん!」

「なんだろ?とりまウェイって思ったらウェイしてるけど」

「聖女ちゃんは盛り上がる時、うぇーい!ってならん?ワタシらはなるけど」

「意味が分かりません・・・!」


「ほい!ウチから始めマー!」

「「うぇーい!」」

 もう何でも良いか・・・


「ウチはアリアージュ!クラスは『吟遊詩人(バード)』主軸のバッファーね!チームのテンアゲ担当でヨロ!」

 赤髪に銀色の装身具が目立つ快活そうな女性。

 背中には派手な色合いをした見たこと無い弦楽器を背負っている。


「あーしはアンブル。クラスは『騎士(ナイト)』系の盾役。

 バカばっかりで五月蠅いけど、悪い奴じゃ無いから大目に見てよ」

 短く切りそろえられた茶髪、全身板金鎧(フルプレートアーマー)で長身の比較的落ち着いた雰囲気の女性。

「なにおうアンブル!リアルのテスト成績はチームドベのくせに!」

「そーそー。追試常習民~」

「バッカ!それ言うなって!ほら次!」


「ミーカでーす。クラスは『神官戦士』の殴りヒーラーね」

「なぐ・・・?」

「あー。アタッカーって考えててヨロ」

 丸顔で青っぽい腰まで伸びた長い黒髪と聖堂の物とは違う聖印が施された黒で統一された露出の少ない服。

 陽気な振る舞いとはかけ離れて、黙っていれば高位の神官に見える・・・気がする


「ほい次聖女ちゃんの番」

「あ、はい。エリーです。

 司教様からダンジョンの奥、不死者の王の封印の確認の任務を授けられました。

 よろしくお願いいたします」


「よろー」

「よろしく~」

「ヨロピー☆」


 自己紹介を終え、一息ついた後


「じゃ、早速だけど迷宮探索の行程確認するよ~」

 ミーカが鞄から迷宮の地図を出し、テーブルに広げる


「今回潜るのは『死霊王の封墓』。全18層の大型ダンジョン。

 うちらも15層までは何回か潜ったけど、16層目は聖堂が立ち入りを制限してるから情報は古いのしかなかったんよね」

「周期が10年に1回ってどして?毎年調べりゃいいじゃん」

「聖女の資質を見出し、修行の期間も必要なので。特に、聖女として必要な『信仰魔法』を発現できるかは修業期間で見極める必要があって。

 封印維持の期間を含めて、10年に1度が最適と」


「そっかー」

「出てくるのは全部『不死者(アンデッド)』系モンスターオンリー。

 生物系とか無機物系は皆無だから、特効積めば道中は問題無いね」

「なら余裕かな~」


 ・ ・ ・ え?


「とりま15層までは爆速コースで、16層から先はガチ目?」

「それな~」

「え?え?」


「とりまエリーちゃん。ウチら準備できてっから、聖堂の予定よろ~」



 軽いノリで作戦会議が終わり、数日後。

 聖女として相応しい僧衣で3人と共にダンジョンに入った瞬間


「じゃ、エリーちゃん悪いけどこっちの装備に着替えてくんない?」

「えぇ!?ここで!?」

「ゴメン。でもその服、豪華なだけで効果無いからこっちの魔法装備着てもらった方が良いんだよね」


 いきなり迷宮の奥で伝統の僧衣から見慣れない衣服に着替えさせられ・・・あ。コレ凄い。袖を通すと今まで感じたことが無い力の高まりを感じる・・・!


「イッツパーリーターイム!」

「「ウェーイ!テンアゲバフヨロ!」」

「ウェーイ!まずは1曲目ェ!≪無敵行進曲インヴィテーションマーチ≫!!」


 ギャーーーンッ!と弦楽器が掻き鳴らされると、私達の体に見えない薄い鎧のようなものが覆われたような感触。

「じゃ、超特急で15層までェ?」

「「ト☆ツ☆ゲ☆キ だ!」」


 そこから先はあまりに圧倒的。

 出会った不死者は跳ね飛ばされ、引き潰され、私達の移動速度が速すぎるせいで罠のを踏んでも起動する前に通り過ぎ・・・


 そして最終層


『フハハハハハ・・・!ついに永き封印から解き放たれたぞ・・・!』

「ねぇ。なんかコレ復活してる?」

「ねー」「マジゾンビじゃん」


 そ、そんな・・・不死者の王が復活していたなんて・・・


「とりま邪魔。≪聖櫃召喚(サモンアーク)≫」

『え?ちょ・・・!?なんだ!それ・・・!あぁぁああああああ・・・・』


 復活した不死者の王は出会って10秒でミーカが発動させた未知の魔法によって封印され・・・


「え?コレが不死者の王?マジ?」

「レベル60ちょいくらいかな~?王って言う割にザコくない?」

「どうするコレ?とりまエリーの経験値にしとく?」


「「異議ナーシ」」


 後からそれが不死者の王と聞いた後、3人は私に不死者の王にトドメを刺せる聖槍(3人は大したことない武器とか言っていたが、普通に強い)を渡し、私は、言われるがまま・・・封じられた不死者の王を聖櫃ごと貫いた


 全てが終わったその後、ダンジョンから帰還した私が不死者の王が打ち倒された証拠を持ち帰ると、聖堂庁の大司教様から直々に聖女の称号を賜り、最大の功労者3人を勇者として迎えようとしたら・・・


「あ、ごめん。そういう式典パス」

「うちらパリピだけどそういう肩凝るのはパーリ―じゃないから」

「それなー」


 訳の分からない事を言って、全ての功績を私に押し付けて何処かへ行ってしまった・・・

 最後まで訳の分からない人たちだった・・・



 ・・・あ。聖槍!まだ返してない!そこの聖堂騎士さん!急いで3人を探して!

 え?もう部屋に居なかった?すぐに追うんですよ!まだ遠くに行ってないはず!馬車、いや馬を用意して!

 地の果てまで追いかけて探しますよ!

聖櫃召喚サモンアーク

種別:封印魔法/大神官専用

制限:大神官Lv12以上

属性:聖/封印

射程:0~20m

形状:起点指定

「聖櫃」を召喚し、指定した範囲内の対象を封印する信仰系封印術。

この魔法自体にダメージは発生しないが、聖櫃内部に封印されると簡単には脱出できない。

ただし、外側からは簡単に封印を解くことができ、中身に干渉できるため、やり方次第では一方的に内部に封印した敵を攻撃することができるハメ技が可能

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― 新着の感想 ―
おはようございます。 不死王「ハメ技はルールで禁止スよね(某語録並感」
くせつっよ!!!でも悪いやつじゃなさそうだし神官の高レベルプレイヤーは味方になってくれたら悪魔を使役する敵対プレイヤーに対する切り札になりそう。
エリーさん色々苦労しそう
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