第65話
さて、教え子の修行と並行して薬師としての研究も進める。
去年の冬、発表会で聖堂のコネを得た私はあの日から文通を通じて聖堂が認めた薬効植物のデータやサンプルを貰うことに成功。
対価として私は貰った薬効植物から簡易に作れる薬のレシピ作成を依頼され、いろんな植物で実験ができるようになった。
聖堂では神官系の人間が在籍しているが、聖堂に勤めている聖職者が全員神官系クラスを習得しているワケではないらしく、それなりの期間の修行を経て神官系クラスを習得するので回復魔法の使い手はかなり貴重な存在。
ゲームみたいにNPCに話しかけたら「はい。今日から神官になりました。がんばってね」なんてことは無い。
それでもこの世界で「マトモな医療行為」ができるのは聖堂か王侯貴族お抱えの治癒魔法使い。
こっちの世界でも民間の医者は居るけど・・・正直言うとヤバイ。
普通に痛み止めで麻薬みたいなの出すし、清潔衛生なんて概念もない。
「蛭治療」なる医療法がある事に私が眩暈を覚えたレベルだ。
聖堂に頼れない訳ありの人間が駆け込む所なので、ぶっちゃけ元の世界でいう闇医者。
話を戻そう。とにかく回復魔法を使える人間はそうそう居ないので、魔法に頼らない傷の処置が必要なのだ。
そこで治癒の水薬。とりあえず、こっちの世界で作った物でも使用期間を守れば中毒リスクはあるが誰でも傷を治せるし、リスク自体は品質を改善すれば軽減できる。
で、今依頼されてるのは疾病治癒の薬。分りやすく言うと「風邪薬」だ。
うん。こっちの世界では風邪に罹るだけで一般人はマジで死ぬかもってレベル。
伝染病1つで街が壊滅するかもってレベルなので(実際に元の世界でも中世ヨーロッパでペスト流行って大混乱してたし、こっちの世界でもそういうリスクがデカイ)たかが「風邪」とバカにできない。
伝染病が流行った僻地なら患者を集めて隔離した建物1つ焼き払って、感染を抑制するっていう過激な方法を使うくらい警戒されていると言えば、その重要度が分かると思う。
とりあえず、風邪薬1つで村と町が救えるなら安い物で、しかも提示された報酬は、効能が認められたらレシピだけで大金貨5枚。さらに今後聖堂がレシピの特許を保証して限定公開し、聖堂が回収した特許料を私が貰うことになっている。
レシピが売れ続ける限り何もしてなくても金が入るのは良いね。不労所得バンザイ!
って訳で作ったよ「抗生物質」。
元々村の衛生は酷かったし、伝染病は私も警戒してたので割と最初から抗生物質は研究してた。
カビから抗生物質作るのは・・・うん。すんごい努力の連続だった。
魔法の影響かなんか知らないけど、半端じゃない種類のカビを1種類ごとに分析して、いろんな種類のカビから実験する過程でなんかヤバい猛毒とか変な副産物とか量産しつつ、この夏にようやく完成した。
何でも治せる・・・のは言い過ぎだが、万能薬に限りなく近い抗生物質は大抵の病気の予防と治療に役立つ。
ここに私の製薬スキルで効能を底上げしてあげれば、魔法由来の疾病にも耐性を持つ強力な治療薬になる。
大量生産の方法までは手が回らなかったが、このレシピを元に頑張って量産する方法を検討してもらおう。
って訳で使い魔に薬のサンプルとレシピ、効能を書き込んだ手紙を持たせてパ・ブシカの聖堂に届けてもらう。
一応、薬物鑑定で効能も調べ、念のためにマイコニド達に捕まえてもらったネズミとか小動物で動物実験は済ませてあるので、後は聖堂で抱えている患者で臨床実験してもらうだけだ。
次に、村に上水道を設置する計画も進めてある。
村の飲み水は村の各所にある井戸から汲んでるけど、ぶっちゃけ効率悪いので、北側の丘にある水源に取水塔を設置して水をくみ上げ、傾斜を利用した水道橋で重力の力で村に引き込みながらろ過、浄水した後に貯水タンクに一時保管し、風力を利用したポンプで水圧を与えて村の各民家に配管で供給する。
こうすることで井戸に頼らず、水道が使える。
ついでに下水道も整備する計画も同時進行。
レンガ工房が完成して稼働したので、レンガで下水道と浄水槽を本格整備。
沼地を下水処理場として整備しなおし、浄水した後は下流の川へレンガ製の水道橋で放流。
計画では下水道の完成に2年、上水道の完成は2年半って所らしい。
で、そのために今村の各地の地面を掘り返して下水トンネルを工事中だ。
今までは農業用の用水路を下水と一緒に流してたらしいが、下水道が完成した後は生活排水は全部下水道で処理する。
さて、ファンタジーの下水処理で定番なのはスライムというイメージが強い。
弱くて、無害に近く、知性は無いが、汚物だろうが何でも処理してくれる日系ファンタジーの定番モンスター。
で、こっちの世界のスライムは・・・うん。普通にモンスターだった。
何でも食べる貪食な性質は一緒だが、無害どころか普通に生き物だろうと植物だろうと何でも取り込もうとするため、超危険なモンスター。
日本の国民的RPGのザコではなく、洋風ファンタジーの強敵ポジションだった。
単純な打撃や斬撃などの物理攻撃では体積を減らす程度で致命傷にならず、放置していれば周りの有機物をガンガン食べて土地を荒らしながらどんどん巨大化して成長する。
そんな激ヤバモンスターが、取水塔建設予定地を偵察していたマイコニド達に見つかり、出現報告がされた。
丘の水源を縄張りに、水を飲もうと近寄る野生動物とかモンスターを食ってデカくなりつつあるらしい。
「討伐しかないよねぇ・・・」
出現原因は・・・多分丘向こうの森の魔力が原因だそうだ。
ホントあの迷宮核崩壊って事件しか起こさないな!
≪肉体石化≫
種別:状態異常魔法/魔女専用
制限:魔女Lv8以上
属性:地/呪い
射程:0~20m
形状:対象指定
生き物を「石化」状態にさせる呪い。
石化された状態では身動きが出来ず、肉体の属性が「地」に変更され、斬撃、刺突属性に耐性を持ち、殴打属性の耐性が低下する。
ただし、この魔法は生物にのみ対応しているため、非生物系のクリーチャーや人工物には効果が無い。




