第55話
ご愛読ありがとうございます。
皆様が知りたい設定情報などを感想で教えてください。
スキルから魔法や種族、地名やアイテムの解説まで頑張ろうと思います
領主として、私の最初の仕事をする。
それは「戸籍」と「住民票」の作製である。
ぶっちゃけると、この村には戸籍を管理する書類は無い。
一応、パ・ブシカの街には「出生届け」とか「移住証明書」があり、伯爵から権利を貰った時にそれらの書類も持たされたんだけど、誰がどこの家に住んでるとか、土地の権利関係とか、相続人が誰それの誰だとかは村の中で勝手に身内ルールで回していて、その関係でトラブルもけっこうある。
ってことで、トラブル解決のためにはきちんとした書式で管理しようと考え、とりあえず『戸籍』から作る事にした。
住民一人一人に戸籍を与え、管理をスムーズにすれば解決・・・と思ったんだが
「まさか、自分の名前も書けない人が居るとは・・・」
村の中で4割くらいの人が自分の名前も書けない読めないの文盲だった。
他2割は中学生くらいの読み書き計算が出来て、残りは自分の名前と簡単な文章くらいしか書ける人間が居ない。
マジかーって思ったが、この村には義務教育どころか学校すら無かったんだった。
そりゃ誰でも文字が読めるワケ無いか。
中学生くらいの読み書き計算できてる人達は、街で出稼ぎに出た時に覚えたり、近隣の村や街の聖堂にお金を払って神官から授業を受けた人、必要だったから自費で勉強して覚えていた等の理由で知識を得た人。
そういう人は村ではかなり少数派で村長とか小作人抱えてる地主とかだ。
小作人の方は・・・うん。お金無いから勉強なんて無理だよね。
とりあえず、文字の読み書きが難しい人には代筆で処理して住民票を作成。
出来上がった戸籍は纏められて役場の金庫に保管する。
次の仕事は『整地』だ。
これもトラブルの種であり、何が問題かというと・・・無計画な開拓によって畑の形や広さ、所有者がバラバラな土地が入り乱れているのだ。
以前の決まりでは『開拓したヤツが所有者』って大雑把なルールにしたので、土地を得るために手あたり次第に開拓したのは良いものの、開拓作業が一人でできるはずがなく、複数人で共同して開拓作業をして、その後話し合いで解決していた。
まぁぶっちゃけ誰もが大きな畑を欲しがるため、超揉める。
功労順で優先されるが、当然納得できない人が出るのでガチで喧嘩する時もある。
そして、農道も真っすぐ引かれていないのであちこちグネグネ曲がってて、交通の便が悪い。
これも土地の配分を決める時に境界線を農道にしちゃったので、真っすぐ引けなかったからだ。
ってわけで、一度私の拠点を除いた村全員の家を除いた土地や畑を測量し、再開発する。
道を真っすぐ引き直し、できるだけ以前と同じ広さの畑と土地を再分配する。
道が入り組んでいると、移動に時間が掛かり、なにより見栄えが悪い。
当然、自分の土地に勝手に手を入れられることに不満を漏らす人も出てきた。
「今のままでも畑はやっていけたんだ。考え直してくれよ」
「秋に撒いた小麦がまだ畑にあるんだ。勘弁してくれよ」
「このままでは土地が入り乱れて、不便とトラブルが増えるばかりです。
土地の整理は必要な事なんですよ」
って事で、越冬させている畑には手を入れるのが難しいため、比較的新しい土地から整理を始める。
そして村には段階的に区画整理を行う事を周知させて、古い土地にも手を入れていく予定だ。
区画整理は大工事なので魔法の出番。
「≪庭園作成≫っと」
≪庭園作成≫のエディット機能を使って農道と畑をキチッと整理。
整理され再分配された土地には所有者名義の権利書を発行して、所有者をはっきりとさせる。
今まで地税計算はあの魔法の天秤が自動計算してたらしい、万能過ぎじゃない?
私はそんなことできないので権利書のコピーから地税を計算する。
未整理の区画は測量だけ済ませ、仮の権利書を発行する。
≪庭園作成≫の魔法のおかげで土地の面積を簡単に調べられるから、開拓から測量まで万能過ぎて助かる。
測量と再開発で冬が過ぎ、新年を迎えた。
今年から私達が制定したルールでこの開拓地は運営される。
「ってことで、マイコニド軍団にはアカネを最高指揮官とする屯田兵みたいな感じで。
常駐戦力兼労働者って立ち位置で、税金から給料を出す予定だから」
「承りました」
今まではマイコニド軍団には狩猟採取で自給させていたが、本格的に私直轄の私兵として運用する。
仕事が大きく変わるわけではないが、立ち位置を明確にしておいた。
税収が入れば給料も私が払う。
とりあえず年俸って事で、税収が入るまで給料は待ってもらうけど。
「とりあえず、マイコニド達の戸籍も作ったし、自由に土地や財産を持つ権利はあるから、給料を楽しみにしてて」
「はい。ところでマーシャ様は・・・?」
「あぁ、マーシャさんも戸籍作って、仕事渡したよ」
マーシャさんには自警団を組織してもらうことを頼んだ。
強いし、情報戦が得意で諜報能力もあるマーシャさんは本来ならスパイとして敵地に送り込むのが理想の運営だが、属性による精神変化で不安定なので、とりあえずマイコニド軍団とは別枠の警察組織である自警団の運営を任せた。
軍事力であればマイコニド軍団で大体は事足りるが、マーシャさんが組織する自警団は警察の仕事を請け負ってもらう。
揉め事の仲裁から犯罪捜査と犯罪者の逮捕、パトロールによる犯罪の抑制・・・あと、不穏分子の発見と捕縛。
無いに越したことは無いが、発展して人口が増えた時に敵方のスパイとか暗殺者とかが紛れ込んでも対処できる組織が欲しいのだ。
マイコニドを追加召喚しても良いかと思ったが、マイコニド達に頼り過ぎるのは良くないし、同種族にしか分からない悩みや考えもあるだろう。
ついでに言えば、元傭兵や冒険者崩れみたいな仕事は無くて血の気の多い人が近隣には一定数居るので、そういう人の受け皿にはちょうど良いかと思っている。
ちょっと反抗的でも、マーシャさんなら上手く躾けてくれる・・・ハズ。
≪スイートベリー≫
種別:魔法/専用
制限:庭師の魔女、森司祭等
属性:植物
射程:接触
形状:低木
甘いベリーの木を種から瞬時に育てる魔法。
採取に専門的な知識や道具は必要なく、素手で採取してそのまま食べることができる。
欠点はすごく腐りやすいため、採取したらその日の内に食べることをお勧めする。




