第49話
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スキルから魔法や異世界の種族、地名やアイテムの解説まで頑張ろうと思います
魔法薬の中毒症状
治癒の水薬は便利で手軽な回復手段として知られているが、薬は過ぎれば毒となる。
短期間に多量に治癒の水薬を使用すると、徐々にポーションの毒素が体に溜まり、中毒症状を引き起こす。
初期症状として依存症状、喉の渇きや空腹感。
そこから倦怠感、集中力の欠如。
さらに悪化すると免疫力低下や情緒不安定。
重篤症状で突発的に行動不能となる。
ポーションの毒素量は品質に直結しており、高い品質のポーションであればリスクを気にせず使用できるが、品質が悪いポーションは効き目が悪いだけでなく、ポーションの中毒性が高まり、中毒症状の悪化につながる。
エルドラド・クロニクルでは低品質、低ランクのポーションを多量に使用してのゴリ押しスタイルを規制するための仕様だったが、こっちではマジで命とりだ。
「神官!手を貸して!」
神官を呼びつけながら、インベントリ空間から中和剤を取り出し
「≪洗浄≫≪魔法薬充填≫≪薬師の指先≫」
洗浄の魔法で清潔にした手で爪で薬物注射する魔法を行使し、中和剤を投与。
「何をすれば?」
神官が壇上に上がり、指示を聞いてきたので
「生命力増強と傷病治癒を」
「分かりました。≪生命力増強化≫≪中位傷病治癒≫」
ポーションの中毒症状は≪病毒治癒≫では治癒できない。
ポーションに含まれている毒素も治癒に必要な物質だから、毒と認識されていないからだ。
「≪中毒症状緩和≫≪2倍魔法効果増強≫≪臓器賦活≫」
中和剤である程度持ち直したところで中毒症状を解除する魔法とHPの自然回復速度を向上させる魔法を行使。
よし、だいぶ顔色が戻ってきた!
重篤症状だと≪中毒症状緩和≫では効果が無いから、中和剤を使って持ち直させる必要が出てくる。
だから低品質を作るのは嫌なんだ、余計な手間が増えるから・・・・!
「ゴホッ・・・!」
よし、呼吸安定。意識ももうじき戻るはず。
刺し傷自体は・・・あのポーションで治ったか。
「処置終了です」
「お見事でした。今の処置を記録しても?」
・・・?
「別に、大丈夫ですけど・・・」
「あぁ、失礼。私は聖堂司祭のイリーオ。
先ほどの中毒症状についての研究をしていた者ですが、対処法については未だ糸口が見えず・・・。
貴女は私よりこの症状に深い見識があるようですね」
「薬屋なので・・・毒と薬の知識はある程度持ってます」
「お暇なときに、ぜひ意見交換をさせてください。では」
そう言ってイリーオ司祭は立ち上がって壇上から降りた。
「ゲコッ!」
・・・あ。コイツ、カエルに変えたままだったわ
面倒だけど戻すか。
「≪魔法終了≫」
手を叩いて魔法を解除すると、カエルの姿からアホ錬金術師が元に戻った。
「こ、この・・・!」
掴みかかろうとしてきたのでつい反射的に杖を向けると、大人しくなった。
「私にこんなことをしてタダで済むと思うな小娘!私は錬金術組合の組合長だぞ!」
「劣悪ポーションで偉そうにするんじゃーないわよ。
アンタの作ったポーションで死にかけた人が出たのよ?」
「だったらなんだ!高位傷病治癒の水薬はこの街では私しか作れん!
大体お前はなんだ!どこの誰か言ってみろ!」
あぁそうか、コイツ私の顔も知らないんだったか。
他人の薬草で調合を成功させてたくせに。
「魔女のエリシア。低位治癒の水薬のレシピ発表者で、アンタが今の調合に使った薬草も、私が伯爵に納税した品よ」
「 ・ ・ ・ ハァ!?」
「その薬草、名前は『命血霊草』。
効能は生命力回復効果と強力な臓器賦活効果。
この辺りに自生してる『命緑薬草』より効能が強い分、調合には正しい手順で成分を安定化させないと、強烈な中毒症状を招く」
実を言うと安全性だけで言うなら『命緑薬草』は効能が低い代わりに、調合されたポーションの品質が悪くても中毒症状が出にくい品種だった。
多少雑な調合をしても、中毒症状があまり出なかったのはこの薬草が主原料で調合されていたからだ。
ただ、命緑薬草だけではどう頑張っても中位傷病治癒の水薬までしか調合できないが・・・
今後の研究で命血霊草と命緑薬草の交配種でも作ろうかな・・・?
上手く交配できれば、薬効を高めつつ調合難易度も下げられるだろうし。
「で、デタラメ言うな!ポーションで中毒症状など聞いたことも無いわ!」
「薬も過ぎれば毒となる・・・ってこっちの世界にはそんな言葉無いか」
今まで売られているのは命緑薬草製のポーションで、単価も高いので多量に使用する事は少ない、だから中毒リスクは僅かだったんだろう。
故に、中毒症状については今まで知られていなかった。
多少品質が悪くても、生産量を増やそうとした結果がコレか・・・
そして、このアホ錬金術師は命緑薬草と同じ感覚で調合してしまったから、こんな結果になった。
「手柄を焦り過ぎたでしょ。このレシピは飲めば絶対に中毒症状が出る、危険な調合よ」
「~~~~~~~ッ!!!だったら、だったらお前にできるのか!高位傷病治癒の水薬が!」
私の指摘に顔を真っ赤にしたアホ錬金術師がそう言い放つ。
「できる」
私はテーブルに並べられているアホ錬金術師が使っていた道具を使い、インベントリ空間から命血霊草を出し、その場で調合を開始。
「≪生産品質向上≫≪小さな幸運≫≪副作用除外≫≪生産速度向上≫≪生産性安定化≫≪奇跡の一滴≫」
自身に生産系スキルと魔法を重ね掛けして調合し・・・
「おい、なんだその工程は!」
なんだようるさいな。
「黙って見てて」
横から挟まれる口がうるさいので睨む。
静かになったので黙々と作業を再開し、静かな実演の後。
「完成。≪品質保護:薬物≫」
最後に品質保護を施して完了。
「誰か、鑑定できる人は?」
私が鑑定魔法を使っても、このデブは納得しないだろう。
「では、私が鑑定しよう」
参加者の中から出てきたのは、魔道組合の組合長ゼガルタ。
壇上に上がった組合長ゼガルタに調合した高位傷病治癒の水薬を渡す。
「では、≪道具鑑定≫≪魔法看破≫
・・・ふむ。間違いなく高位傷病治癒の水薬、それも最高品質だ」
彼は受け取ったポーションに鑑定魔法を行使し、僅か10秒で認められた。
「バカな・・・!あり得ん!最高品質の高位傷病治癒の水薬だと!?
何かの間違いだ!どうせ偽装魔法でも使ったのだろう!」
「≪魔法看破≫ではそのような魔法は認められなかった。
それに、勝手ながら彼女の作業工程も魔法で監視させてもらったが、偽装効果を持つ魔法やスキルを行使していないのも確認済みだ。
それとも、私の鑑定に何か不服でもあるのかね?」
「~~~~~~~ッ!!!」
顔を真っ赤にしたアホ錬金術師は私を睨むと
「くそ!覚えていろ!」
とベタな捨て台詞を吐いて壇上から退場した。
もう一回カエルに変身させてやればよかったな・・・
≪樹皮の鎧≫
種別:防御魔法/制限
制限:森神官、錬金術師、庭師の魔女、その他
属性:強化/防御
射程:0~10m
形状:装備/対象指定
対象に樹皮の追加装甲を纏わせる魔法。
覆っている樹皮は対象の動きを全く阻害せず、物理防御力が向上し追加HPを得る。
この装甲は植物の性質を持っているため、回復魔法の対象になる。
装甲のHPが0になるとこの魔法は消滅する。




