閑話3『とあるダークエルフの話』
【女ダークエルフ メッチュ視点】
私はダークエルフのメッチュ。
今、目の前に信じられない光景が広がっている。
私達ダークエルフに加勢している人間4人が、北の大陸からやってきた侵略者たちを蹂躙している。
事の始まりは数年前。
私達ダークエルフの里の北には、かつては人間の国があり、最北端の港では北の大陸の国々と貿易をしていたらしい。
密林で暮らす我々ダークエルフは、その人間の国とは適度な距離を保ちながら交易などの最低限の交流で済ませる・・・そんな間柄だった。
しかし、その国はある年、北の大陸の国との関係が悪くなり、戦争となったらしい。
人間の事情には関わらない。我々と人間では生きる時間が違い過ぎるため、最低限の交流しかしなかった。
それが裏目に出た。
北の大陸からやって来た侵略者たちは、我々の縄張りである密林まで手を伸ばしてきた。
目的は、私達ダークエルフ。
奴らは我々を奴隷として捕えようと、密林に踏み込んできたのだ。
当然、我々も密林の中で応戦し、奇襲攻撃で何度も奴らを撤退に追い込んだ。
しかし、業を煮やした奴らは密林ごと里に魔法で火を放ち、史上類を見ない大火事となった。
里が炎に包まれ、これまでかと思った時・・・奴らは我々以上に怒らせてはいけない存在を怒らせていた。
それは、いつの間にか密林に住み着いた、『ジャコウ』と名乗る人間の女魔法使い(本人は魔女と自称していたが)。
艶のある茶色い髪を、確かカンザシとかいう髪飾りで纏め、まるで(言い方は悪いが)毒虫のような黒地に黄色の派手な蝶の柄をした衣装(ワフクと本人は言っていた)に身を包んだ、異国風の人間。
我々が気が付いた時には、密林の片隅で見たことも無いほど上質な織物を作っては、私達や人間の国と商売していて、いつの間にか小さな家まで造っていた。
密林で暮らすには豪華な衣装は不似合いな風体だったが、上質な布は衣服の材料だけでなく、それだけで財産になり、布を売ってくれるならばと特に何も言わずに隣人として置いていた彼女の怒りに、奴らは触れた。
「よぉも、家を燃やしてくれたなぁ・・・!」
独特な言葉遣いで、怒りに燃えた彼女は魔法で見たことも無い巨大な蟲を使役し、密林から侵略者たちを追い出した。
そこから、彼女は我々ダークエルフに加勢し、侵略者達との戦いが始まった。
ジャコウが行使する魔法は巨大な蟲を召喚し使役する『蟲使い』系と呼ばれる魔法。
エサさえあれば、あり得ない速度で増殖する蟲の群れを使役する。
ジャコウの協力を得ながら侵略者達を撃退し、防衛し続けること、2年。
「チッス!ジャコウ姐さん!」
「お久ーっすジャコウの姐さん」
「あら、ウチだけやなかったんやねぇ。異世界に飛ばされたの・・・」
ジャコウの知り合いだと言う、銀の髪をした人間の兄妹がさらに加わった。
兄が『ホワイトフォックス』(愛称:ホワイト)、妹が『スノウブラッド』(愛称:スノウ)と名乗る兄妹。
ホワイトは雪と氷を操る事に特化した魔法使い。
スノウは長槍と二頭立ての軍馬が牽く戦車を操る戦士。
二人が加勢すると、今まで密林で防戦だった戦況が打って変わって、さらに北の密林の外の平原や街に戦線を押し上げることができた。
そして翌年、占領されていたある街を攻略すると、攻め落とされていた人間の国を治めていたという王族の生き残りが我々に接触してきた。
「ベエルサロ王国、第2王女『アメリア・パロ=ヴェームフ・ベエルサロ』と申します。
ダークエルフの皆さま、どうか祖国奪還にお力添えを戴けませんか・・・?」
そこからベエルサロ王国軍の残党と合流した我々は、連合軍となって街や村を解放しながら北進を続け、つい最近になってさらにジャコウの知り合いという人物が現れた。
「人に首輪付けて檻に入れるたぁ、テメーら何様じゃァーーーーッ!!」
解放戦の真っただ中、捕虜収容所を攻略中にその怒声が聞こえ、私たちの目の前で金属鎧で武装していたはずの侵略者達を素手で殴り飛ばす男。
金属の鎧をまるで粘土のように素手で叩いて曲げ、侵略者達を木の葉のように吹き飛ばし、捕虜たちに取り付けられていた首輪や足枷を素手で引きちぎる。
金属製の檻もどうやら素手で破ったらしい・・・
「お、シュウじゃん」
「破壊僧さんチーッス」
「破壊僧じゃなく破戒僧じゃ!」
「いや、話す言葉は変われへんやろ・・・」
武闘僧のシュウ。
黒い髪を短く刈り上げ、鋼のような筋肉を持つ僧侶。
信仰は『戦神:アウレルス』を信仰しているという(聞いたことが無い神だったが・・・)
「信仰もエルドラド・クロニクルかぁ・・・」
「まぁリアル宗派も同時に信仰しとるけど、別にええじゃろ。
クリスマス終わった後に初詣しても特に天罰下らんし、神様も小さい事いちいち気にせんじゃろ」
そこからは快進撃だった。
平地においてはスノウの戦車に敵の戦列が粉砕され、陣地はホワイトの凍てつく吹雪で崩壊し、攻城戦ではジャコウの使役する蟲の大群が防壁を飛び越え、その毒牙によって内側から崩壊。
戦闘で傷ついた味方は、シュウの治癒の祈りであっという間に戦線に復帰。
死者以外は脱落することなく、我々は次々と街や村を解放した。
そして・・・今日。
占領された最後の港を巡る決戦が・・・終わった。
「なんじゃ、口ほどにも無いのォ」
「愚兄。見ろ、まるで人が」「言わせねぇよ!?バカ妹」
「お疲れさん、無事に戦争終結に向かえそうやなぁ」
彼女たちの足元に転がっているのは、我々の捕虜となった侵略者たちの司令官や貴族達。
「これから、北のイデア王国と交渉かぁー・・・」
「しゃーねーでしょ。こっちは海軍兵力ボロボロだし、ダークエルフは陸戦だから、ココが攻勢限界っしょ」
「でも、こうして人質おるさかい・・・向こうも下手に戦争はできへんやろ」
「よし、勝鬨ィーーーーーッ!!」
シュウの合図と共に・・・5年かかった侵略者達との戦争が幕を閉じた。
いや、これから始まるのだ。北大陸の国々との交渉が・・・!
≪裁縫≫
種別:生産/専用
制限:針子系クラスの習得
属性:生産
射程:接触
文字通り裁縫のスキル。
裁縫道具一式と糸と布と型紙があれば、衣服を生産することができる。
最上位の針子系クラスが作成する衣服は、素材に依っては並の金属鎧に匹敵する防御力を持つ。




