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第4話

 鶏の鳴き声で目が覚めた。

 知らない天井だ。


 ・・・いや、宿の天井だ。私の家の天井じゃない。

 夢なら眠ると目が覚めるとか思っていたが、違ったらしい。


 目が覚めると空腹も感じる。

 眠気覚ましに無限水筒を出して水を一口飲む。


 ・・・夢ではないらしい。


 ローブのまま寝てしまったが、服に皺がついた様子も無い。

 杖と水筒をインベントリに収納して、1階に降りる・・・と。


「おはようさん。朝食かい?」

 女将のロットナー夫人が鍋をかき回しながら挨拶してくれた。

「おはようございます。 朝食をお願いします」

「あいよ。 席で待ってておくれ」


 1階の酒場では人は疎らに座っていたので、適当に目についたカウンター席に座って待つ。


「おまちどうさん」

 そう言って女将さんが盆に乗せた料理を運んでくる。

 茶色っぽい丸いパンが2つと大豆っぽい豆とひき肉の炒め物っぽい料理、野菜とコマ切れ肉が入った透明なスープ。

 コレが朝食らしい。


「いただきます」


 まずはパンを手に取る。 ・・・なんか硬い。

 例えるなら焼いたトーストを冷蔵庫で放置してカチカチにしたヤツ。

 大きいので千切って食べようとしたが硬い。

 何とか千切ってスープでふやかしてみる。

 ・・・うん、何とか食べられそうな感じなので食べてみる。

 ・・・風味も何もない。 塩気は感じるが、バターを加えていないのかパサパサだ。

 正直言うと、微妙。

 食べられなくは無い・・・が。進んで食べる気がしない。

 豆とひき肉の炒め物をスプーンで掬って食べてみる。

 ・・・味はイケる。ただ味付けが塩だけ。

 スープ・・・周りを見て椀を啜るのはNGな可能性もあるのでスプーンで飲んでみる。

 ・・・塩気しか感じない。出汁も風味も無い。

 スープの肉・・・塩辛い! 多分塩漬け肉?を塩抜きせずに煮込んだ感じだろうか? とにかく単体で食べると塩気が強すぎる。

 野菜、シャキシャキだ。新鮮だが芯が残ってる感じがする。


 異世界転生モノで現代の料理を振舞ったら何故か絶賛されるのも分かる気がする。

 なんて言うか・・・とりあえず火を通して食べられるようにする!って感じで味は二の次・・・って印象。


 全体的に塩気が強いのは・・・村人が肉体労働者が多いからミネラルを欲しているせいかもしれない。


 これが、異世界飯・・・。

 タダ飯とは言え、残すワケにもいかないので頑張って完食。


「ご、ご馳走様でした」

 食事で空腹は満たされたが、なんだか体力が減った気がする。

 日本の美食文化って素晴らしかった。 異世界飯ヤバい・・・。


 衝撃の異世界飯を堪能し、食器を返すと女将さんに話があると呼び止められた。

 話を聞くと度重なるゴブリンの襲撃で負傷した村人がまだ結構居るらしい。

 治癒の魔法が使えるなら有償でも良いから声を掛けてみてほしいと頼まれた。


「この村に魔法使いは?」

「居るには居るけど、治癒魔法は使えないよ。 少なくとも治癒魔法を使えるだけの才能を持ってる人間なんて、町の教会にでも行かないとお目にかかる事は無いね」

 居るんだ、私以外にも魔法使い。


「その魔法使いは?」

「食料品店のアネットが少しだけ魔法を使えるね。

 と言っても、塩とか油を少し作れる程度だけど」


 塩と油を作れる? 何の魔法系統だろ。

 少なくとも塩や油なんてエルドラド・クロニクルでは食料品ショップに行けば簡単に買える品だから、魔法で作る必要も無いし・・・。

 私もすべての魔法を網羅してはないが、エルドラド・クロニクルでは聞いたこと無い魔法だ。


「女将さんからも、村の人に私が治癒魔法を使える事を知らせておいてください。

 報酬と症状次第で治してみます」

「分かったよ。 治癒魔法なんて貴族か金持ちの商人が受けられるものだと思ってたけど、居る所には居るもんだね」


 ミミズクの古巣亭から出て村を散策してみる。

 先ずは地理から覚えよう。


 ゲイリーウッズ村は開拓農村らしく、畑が多い。

 畑の作物を見せてもらうと主な作物は小麦、キャベツ、豆、カブ。あと1世帯だけリンゴを育てていた。

 4輪作で小麦、豆、キャベツorカブ、そして休耕地のサイクル。

 休耕地では鶏を放し飼いにしている。


 とりあえず、挨拶を交わして情報収集を進める。

 その過程で治癒魔法による治療を頼まれる事がそこそこあった。

 なんでも今年に入ってゴブリンの襲撃が増えて村人がケガで動けなくなっているらしい。

 戦いに出た村人は貴重な労働力でもあるため、ゴブリンとの戦いによる負傷で村の生産力に深刻なダメージが入っている。


 コレは顔と名前を売るチャンスと思い、1人につき大銅貨3枚で≪下位傷病治癒(レッサーヒーリング)≫による治療を開始。

 大した額と思ってなかったが、払えない人間が何人か居たため、大銅貨の代わりになりそうな物である酒類や嗜好品、貴重品等と交換という条件で治療した。


 中には嫁入り道具を泣く泣く差し出す人まで居たので、元気になったら私から買い戻すようにと言っておく。

 タダで治療するのは簡単だろうがそういう事すると後々つけ上がるヤツが出そうなのでやらない。根拠はネトゲ。

 それと今後の活動資金のため、治療は有償だ。


 治療のために家々を周っていると、カークと会った。

「エリシア、村長が呼んでいる。 お前の家についてだ」

 おっと。私を探していたのか。

「分かった。すぐ行く」

≪下位傷病治癒≫

種別:回復魔法

制限:習得可能職Lv2

属性:魔法/回復

射程:0~5m

初歩的な回復魔法。傷を消毒し、出血を抑え、傷口を塞ぐ。

回復量は低いが習得難易度はかなり低く、幅広い魔法系、信仰系クラスが習得可能。

傷を回復させられる対象は生物に限定されるため、非生物には効果は無い。

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― 新着の感想 ―
エリシアはサービスを提供している。それは肉体労働や鍛冶師が作る製品とは違う。魔法、呪術、治癒の薬……それらは多くのエネルギーを消耗する。 それに、薬草は育てるか、あるいはモンスターがうろつく場所で採取…
[良い点] 永住する気ないなら過剰に優しくするとそれが当たり前なったとき後が怖いから線引きした方がお互いいいよね
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