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第45話

 マーシャさん。

 ≪マグナ・アゾット≫のメンバーの一人で、ギルド内では諜報と暗殺担当。

 エルドラド・クロニクルではギルド同士の『領地』があって、ギルドに所属するプレイヤー達はその領地の広さやその地域の利権を狙って、毎週のように『領土戦』という奪い合いが発生する。


 ゲームでのマグナ・アゾットの本拠地はマップ端の離島で水産業と島固有種の動植物がメインの利権だった。

 地域固有の利権は当然、ギルドにおいて大きなアドバンテージであり、狙っているギルドは多いが、ギルドのメンバーが防衛に当たっていた。

 私は基本的に生産メインで活動しているが、マーシャさんはゴリゴリの情報戦争で対人戦や諜報戦で活動し、領土戦では敵対ギルドの奥まで侵入して破壊工作まで担当していた。


 不意打ちアリ、道具使用無制限、奇襲攻撃前提であるならギルドで一番敵に回しちゃいけないタイプの人。

 ギルド最強のパラパラ炒飯さんも、真正面からなら勝てるが不意打ち前提ならかなり分が悪いと言わしめる。


 そんな人が・・・今、私の隣でジョッキ片手にラーメン食べてる。


「あ~。生き返る!ラーメンもひっさしぶり!」

「王都に居たのかよお前・・・連絡くらい入れろよ」

「だぁーって、目が覚めたら地下牢で監禁されたんだよ?

 何とか抜け出してぇー、しばらく追手とかやり過ごしてたけど、王都から抜け出すにも見張りがキツイから、ずーっと潜伏してたらひっどい国だったしさぁ~」

「マーシャさん、飲み過ぎですよ」


 この人、リアルでも酒好きだったなぁ。

 ボイチャ繋いで領土戦してた最中も、ビール飲みながら敵陣地を爆破して呵々大笑してたし・・・

 本人曰く、酒を入れた方がぶっ飛んだ方法が思いついて敵の裏を突けるとか言ってるし、成果出てるから誰も何も言わないけど。


「あれだけ人を射貫いて、よく食べたり飲んだりできますね」

「え? 別に普通でしょ?」


 ・・・は?


「いや、人が死んでるんですよ?」

「・・・だから?」


 ・・・オイ、ちょっとマジ?


「マーシャさん、ここはリアルで、ゲームみたいに死んでもリスポーンとか無いんですよ?」


 私の言葉の後、マーシャさんの顔が真っ青になった後・・・











 吐いた。



「おいおいちょっと待ってろ!バケツバケツ!」

「あわわわ・・・!」

 えーっと、とりあえず・・・!

「≪浄化(キュアー)≫!」


 慌てて≪浄化≫を行使すると、顔色が戻ってきたが・・・


「ゴメン、ちょっと待って。価値観がぐっちゃぐちゃで・・・ナニコレ気持ち悪・・・」


「マーシャさん、ちょっと良いです?看破で症状見るんで隠蔽系全部切ってください」

「ゥェ・・・お願い・・・」


 スキルが全て切れたようなので看破系の魔法を行使して診断。

 状態異常・・・無し。原因は?属性が『混沌/悪』・・・コレか!


「意識をしっかり!≪勇敢≫!」

≪勇敢≫を行使すると、顔色はマシになったようで・・・


「あぁ・・・もう大丈夫。マジでどうかしてた・・・

 リアルで殺人とかやってないのに、平気だったけど・・・コレ自覚するとヤバいわコレ・・・」


「おい、大丈夫かよ。とりあえず水飲め」

 マーシャさんはトールさんが差し出した水を飲み干し・・・


「・・・で、私ってどうなってるワケ?」

「状態異常は見られなかったんで・・・多分、アバターの『属性』に引っ張られたのかも」


 エルドラド・クロニクルではあらゆるキャラクターには『属性』がある。

 それは習得しているクラスだったり、習得するスキルの傾向、クエストの選択肢の選び方などの傾向で決定されている。


 大まかに『種族』『社会』『カルマ』の3属性に分かれており、その属性によってはNPCが敵対的だったり友好的な対応をすることがある。


 マイコニド達なら『植物族』『秩序』『中立』。

 私は『人間族』『秩序』『善』。

 トールさんは『人間族』『中庸』『中立』。

 そして、マーシャさんは『人間族』『混沌』『悪』。


『混沌』の属性は世界に変化を求める「変革」の属性。

 社会規範や法律、果ては世界の法則すら変化を求める属性。

 これ自体は悪ではない。変化が無ければ世界が停滞するため、変化をもたらす属性として必要な存在だからだ。

 問題はカルマ属性である『悪』属性。

 この属性は『他者()の不利益を前提に考える思想』だ。

 悪属性の行動は、目的達成に破壊的で好戦的手段を好む傾向にあり、マーシャさんは『目的のためなら手段として殺人すら許容する』思想に引っ張られていると思われる。


 ちなみに『善』の属性は『他者(味方)に利益をもたらす事を前提に考える思想』で、『中立』属性は『自身の利益を優先する思想』。


「つまり、私ってサイコパスなワケ?」

「多分、アバターの属性を変えない限りは、そういう思想に引っ張られますね」

「やっべーな。悪属性・・・」


 これは大変なことになってきた・・・


「対人有利な属性って大体は・・・」

「悪属性だな。特に暗殺者とか盗賊みたいなタイプは悪属性を持たなきゃ習得できねぇ」

「はぁ~~~。この世界ってクソね、あ。リーダー!ラーメンお代わり。

 コレ戻しちゃったし、新しいのに交換してよォ」

「ハイハイ。だが、この状態で戦闘に出すのはダメだな。

 永住するにしても、元の世界に戻るにしても、マーシャ、お前は不安定だ」

「そぉ~・・・かもね。自覚すると私ってエグイことやってたわ・・・鬱になりそう」


 マーシャさんは凹んでカウンターに突っ伏した。

 アバターの属性ってこうも影響が大きいのか・・・


「悪いエリシア。コイツの面倒をお前の村で頼むわ」

「えぇ~・・・村の暮らしも余裕ある訳じゃないですよ?」

「大丈夫よ~食い扶持くらいは自分で何とかするから。狩人とか」


 大丈夫かなぁ・・・まぁ見捨てるのも忍びないし・・・

「しばらく、村でカルマ値を上げれば・・・悪属性は抜けるはずですし、それまでは面倒見ましょう」

「サンキュー! あ、リーダー!エールもお代わり!」

 マーシャさんに抱き着かれたが・・・うわ!ゲロ臭い!

 しかもまだ飲むの!?

社会属性

『秩序』

世の均衡を望み、変革を否定する属性。

社会規範や法律を尊ぶ属性であり、世界の均衡を望む属性。

必ずしも善ではなく、悪法でもルールならば従い遵守を選ぶ。


『中庸』

己の理念に従う者。自立と自己本位を尊ぶ者。

己を基準として、世の変化をその時々で受け入れるか否定するか考えが変わる者。

自身の理念に沿った物事は受け入れ、受け入れられない物は否定する。


『混沌』

世の変化を望み、変革に挑む者。

世の理、社会規範、法律に変化を求める存在であり現状を否定する。

望むは平穏ではなく激動であり、それは善意や悪意ではなく使命感で求める者。

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― 新着の感想 ―
主人公やたらと村人の手伝いとかしてるなぁって思ってたがアバターの善性に影響されてたのか。それで平気で人殺しもできるようになるってやばいな。村で平和な暮らしをするだけで善になれるのか?
マーシャさんのマーはマーライオンのマー(違う)
マーシャに情報防殻の事教えて貰って凹む未来が見えそう
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