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第33話

 夏が終わりに近づく頃。

 そろそろ川魚の季節だと教えられたので、今日は北の丘にある沢にマイコニド達と魚釣りに出掛けた。


「釣りなどせずとも、私のブレスで沢にいる魚を全て献上しますが・・・」

 環境破壊じゃん。アカネさんアウト。


「釣れるかどうかわからないから釣りは面白いのよ」

 雨の日に内職で作った釣り竿と糸、針は狩りで捕えた動物の骨。

 エサは適当に畑に居た害虫を使う。


 日陰で待つ事数分。アタリが来た。


「よっ!」

 上手く合わせようとしたが逃げられる。

 やはり上手くいかないか。


「他は釣りとかできる?」

 って振り返ると真菌の弓兵が矢で泳ぐ魚を射貫いて獲ってた。

 なにあれスゲー・・・


 魔術師の方は・・・バーベキューの準備か。

 土を操って簡単なカマドを作ってた。

 え?炭焼き用の網もある?いつの間に・・・


 沢でのんびり釣り糸を垂らしながら釣りをしていれば、時間がゆっくりに感じられる。


 昼に差し掛かった辺りで、バーベキューに入る。

 氷入りの箱で冷蔵したお肉を焼いて焼き肉、肉は冷蔵庫で熟成されているのでジビエ肉だが食べやすくなってる。

 狩りたてお肉は死後硬直で硬くて食べ難かったが、熟成させると下ごしらえもあるが柔らかくなって食べやすい。


 あぁ・・・タレが欲しい。

 塩でも美味しいけどやっぱりタレが恋しいな。

 アレどうやって作るんだろ?今度調合で似たような物作れないか試すか。


 次はジビエソーセージか。

 こっちも燻製が上手くいったようで、悪くなる前にさっさと焼いて食べる。

 ガチガチに燻製させたお肉は寿命も延びるけど、美味しくないからなぁ。


 ・・・お酒も欲しいな。ビールとか。

 この見た目でお酒飲むのは犯罪的なのもそうだが、自然の中で酔っぱらって前後不覚になったら危険だから持ってきてない。

 あと、村にあるお酒もリンゴ酒とエールしかないし、しかも常温保存だから温いんだよなぁ・・・

 密閉技術を開発して冷蔵庫、本格的につくるか。

 確か大正時代とかその辺の冷蔵庫はでっかい氷塊を入れた箱って感じって聞いてたし、氷なら真菌の魔術師に作らせればいい。


 一通りバーベキューを楽しんだ後、暫く釣りや水遊びを楽しんで帰った。


 釣れた魚は余った分を村に分けて、残りは私とマイコニド達の晩御飯。

 こっちの世界の川魚は・・・泥臭かった。

 後から聞いたがあの種の魚は、1日水を張った壺か生け簀に入れて絶食させないとダメだったらしい。


 ◆


 夏の暑さが収まり、秋の涼しい風が吹く頃。

 今日はマイコニド達が村人たちに防衛訓練を行う。


 暴走したダンジョンの脅威は過ぎ去ったが、この世界はかなりシビアで食い詰めた野盗とかモンスターの襲撃のリスクが普通にあるので、村人でも自衛手段は持たないとダメらしい。


 一応、定期的に伯爵配下の巡回はあるらしいが、そもそも電話のデの字も無い世界、どうやっても通信にタイムロスは発生するし、訓練を受けた兵士だろうと数で勝る野盗に包囲されて袋叩きにされたら普通に負ける。

 最低でも助けが来るまでは生き残れる武力を持たないといけない。


 って事で、簡単ながら男衆には私の魔法で作った木製の槍を配って前衛の訓練。


 槍はエルドラド・クロニクルでも安心安全な武器種の1つ。

 リーチが長いので大抵の近接武器より先に先制でき、両手武器なのでそこそこ威力があり、なにより安いので替えが効く。

 真菌の兵士の指導の下、突く訓練をひたすら行う。


 薙ぎだとか叩きつけの訓練もしないのか聞いたら

「一朝一夕で身につく物でもありませんし、薙ぐと周りの隊列が乱れるので、突きだけなら素人でも身に着けるのは簡単ですから」

 とのこと。

 リアル武術素人な私はそういうのは詳しくないので、ドーピングでサポート。


「はい。訓練がキツイ人はこっちを飲んでみて」

 私の呼びかけに何人かの軟弱者が振り向いた。

 私の手にあるのは、試験管に入った緑色に輝く薬。


「え、エリシアの嬢ちゃん。ソレ毒じゃーないよな?」

 失礼な。

「毒じゃなくて魔法薬です。『成長加速の薬(2時間)』です」


 飲むと2時間だけあらゆる行動から習得できる経験値量がアップする魔法薬。

 即席育成にはこれが一番だ。


「コレを飲むと、一時的に作業の上達を速めることができますよ」

「ホントかよ・・・」


 すっごい疑わしい目で見られた。

 一応コレ、初心者救済用のアイテムで、上級プレイヤーにレベルだけでも追い付くためのアイテムだ。

 とっくにLv100(成長限界)に到達した私では使い道が無いのでココで放出する。


 何人かの若者が、私の手から受け取りゴクリと一気に飲み干す。


「・・・なんだ、特に何とも無いな」

「ホントか? よし、俺も試すか」


 それを聞いた人たちが何人かゴクリ。


「一応、30分(アンプル)1時間(小瓶)2時間(試験管)3時間(フラスコ)、それぞれ用意してるんで」

 時間が短いほど量が少ない。


 度胸の無い人は30分を飲んでるし、最初に来た度胸のある人は2時間のヤツを服用して訓練に戻る。


 効果は・・・うーん、微妙。

 上達速度は目に見えて上がっているらしいが、素人目では判断がつかない。

 やっぱり実戦訓練が無いと経験値はショボいらしい。


 って事で、教官役のマイコニドに頼まれて、下位の植物クリーチャーで軽く実戦。


「≪植物召喚:木偶人形(ウッドパペット)≫」

 召喚したのは、人間サイズの木で出来た人形っぽい植物クリーチャー。

 木偶人形は敵を見つけたら素手で殴りかかるだけで、大した能力も速度も何もない。

 下位なので強くもないから序盤で囮とか盾に使うくらいしか使い道がない。

 村人の訓練相手にはちょうどいいサンドバックだろう。


 とりあえず訓練に出た村人の半分である7体を召喚して、戦わせる。


『うぉぉーーー!!』

 木偶人形は声を出す器官も無いので無言で向かうだけだが・・・けっこういい勝負してる?

「いい勝負してたらダメですよ。

 あんな程度に手間取っていたら実戦ではやられてしまいます。

 戦闘に慣れた人間なら、スキルや魔法を使うのは当たり前ですから」


 厳しい評価だが、それもそうか。

 では更なる村人たちの成長を願って追加の木偶人形を召喚しておいた。


『鬼畜!』『悪魔!』『魔女!』

 なにやら罵る声が聞こえる。なるほど元気が有り余ってて何より。


「≪植物召喚:木偶人形≫」

 追加に喜んだ村人たちの声(悲鳴)が聞こえるな。


 良い事できたぜ。

≪召喚:木偶人形≫

種別:召喚魔法

制限:庭師の魔女Lv1

属性:召喚

木偶人形を召喚する召喚魔法。

木偶人形は特に強くも無く、ただ真っすぐ相手に突進して殴り掛かるだけの低級クリーチャー。

他の召喚クリーチャーよりMPコストが安いのが唯一の利点。

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魔女は本当のことだから罵倒では無いのでは?
ご神体……エリシアさんが祭られてそう
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