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第32話

 夏が後半に差し掛かったころ。

 今朝から雷雨だったため、今日は野良作業は中止して室内で過ごす。


 雨の日は基本的に誰も外に出ず、道も村ではまともに舗装されてないのでぬかるんで危険だからだ。

 最近はポーション制作を抑え、内職に手を出している。


「≪木材変形(ウッドファブリケート)≫」

 木材を自由に変形させる魔法。

 コレを使って、この世界由来のボードゲームのコマを作っている。


 この世界にもチェスや将棋に似たボードゲームが存在しており、『クレキカ』と呼ばれている。

 ルールは『歩兵』『魔術兵』『僧兵』『騎兵』『弓兵』『王』の6種のコマを操るチェスそのまんま。

 コマの動きは弓兵はルーク、魔術兵はクイーン、歩兵はポーン、僧兵はビショップ、騎兵はナイト、王はキングの動きそのままだ。

 庶民でも簡易的なコマで遊べ、貴族や富裕層は芸術性の高いコマを所有しているらしい。


 って事で、内職として美少女フィギュアっぽいコマを作れば売れると思って製材の過程で出た木片を変形させて作ってる。

 モデルは元の世界で見たアニメや漫画のキャラをそのままトレース。

 これが結構難しく、集中しないとデザインが歪み、作り込み過ぎると今度は強度不足で脆くなる。

 イメージ通りにいかなくて、気に入らないから何度も修正したりして砕けたり、重心が偏ってまともに立たなかったりで苦戦している。


 マトモにできたのは、アカネをそのままモデルにした王のコマだけ。

 仕方が無いので、歩兵や僧兵、魔術兵も全員マイコニド達をモデルに作ると・・・けっこうアッサリできた。

 ほぼ毎日見てるから、細部の作り込みも問題無し。

 でもマイコニド達とアカネのコマだけじゃゲームが成立しないので、相手側のコマも作ろうかと考えたが、気が付けば夜になっていた。

 夜は流石に蝋燭の灯りじゃ暗すぎるので中断。


 次の日、雷雨は過ぎ去ったので肥料と農薬を蒔いて野良仕事を再開。

 今回は林の中にある小さな断層を整備する。

 ココは粘土を採掘できるので、マイコニド達と共にツルハシで断層の一部を切り崩し、≪庭園作成≫の魔法で階段を作る。

 村では炭焼きにレンガを使っているが、他所の村から買っているため、お金がかかる。

 なら、自作した方が安いので材料があるなら自作で焼成レンガに挑戦したい。

 量産に成功したら、村人たちの家も木からレンガにできると思う。

 木と藁でできた家だと火事になったらあっという間に燃えるが、レンガなら燃え移る心配もない。


 高温にも耐えられる耐火レンガも作れるようになれば、製鉄・・・とまではいかなくとも、小さな鍛冶場程度なら作れるようになるし、窯とか作って自作のピザとか作りたい。

 ・・・まぁまずは、レンガの研究を終わらせてもらう必要があるけど。


 粘土自体は村でも需要があり、整備した断層からは村人とマイコニド達が定期的にツルハシやシャベルを使って採取する予定だ。


 ◆


 さて、整備も一通り終わったので、村から荷車を借りてマイコニド達を街へ派遣する。

 目的は2つ。

 戦利品の売却と知識の収集だ。

 派遣するマイコニド達には街で売られている書物、主に学問書や技術書を手に入れてくるように頼んである。

 念のため、余った商品用低位ポーションと伯爵から貰った金貨も派遣するマイコニド達に渡しているので、足りない場合はそれで工面してほしい。


 村では本1冊手に入れるのも難しいので、やはり街と定期的に交易していきたいな。

 あと、街道までの道も未舗装だから、レンガが出来たらそれで道を舗装すれば移動スピードも上げられる。


 真菌の神官は往診で忙しいので、真菌の兵士達と交渉役に魔術師1名を派遣。

 とりあえず、ポーション関連の書籍と魔法関連の本を売却額を予算として手に入れてくるよう頼んだ。



 派遣して一週間後、派遣したマイコニド達が帰ってきた。

 戦利品と商品用のポーションの売却額で本は買えたらしく、金貨と数冊の本を渡してくれた。


「えーっと?『初級魔術理論』、『王国薬草図解』が上下巻、『簡易調合手引書』、『錬金術の心得』、『魔道とは何か』・・・そこそこあるのね」

「はい。街にある『魔道組合』という組織がこのような書物を扱っていました。あと、これも渡されました」

 そう言って渡されたのは・・・丸めた羊皮紙?

 広げて読むと、魔道組合主催の発表会のお知らせと書かれた広告。

「魔道組合はどうやら特許のような資格を発行する国際機関らしく、定期的に魔法に関する知識を発表する場を用意しているそうです」

 ふーん・・・


 開催時期は・・・冬か。

 会場はパ・ブシカの街にある魔道組合支部か。

 聞けば自由に持ち帰ってよい感じに配られていたそうだ。

 参加費用は・・・大銅貨8枚か。払えない額じゃないな。


 この世界の魔法は知っている魔法が多いが、時々私も知らない独自の魔法がある。

 食料品店にいるアネットさんは、錬金術の魔法を行使できるがそれ以外にこの世界独自の魔法を幾つか習得していた。

 植物や動物の肉から油を搾る≪搾油(グリス)≫。

 岩などから塩分を抜き出す≪塩化(ソルト)≫。

 その他、生活がちょっと便利になるような魔法が色々ある。

 言っては悪いが、田舎の食料品店で働く程度のなんちゃって魔法使いでもこのレパートリーだ。

 これが貴族や国が後ろ盾(バック)についた本職の研究者なら、私では想像もできない魔法を開発していて不思議じゃない。


「これ、参加してみたいね」


 別に学者のつもりは無いが、一応は大学まで進学してゼミは通ったことがある。

 ・・・単位落として中退したけど。

 この世界での研究発表とか特許技術にも興味はあるし、個人の財布から参加させてもらおう。

《搾油》

種別:生産魔法

制限:不明

属性:生産(?)

射程距離:接触

手で触れた作物や肉から油分を搾る魔法。

油分を搾った作物や肉類は栄養素はあるが味が落ちるため、家畜用の飼料になる。

特定のクラスが無くても習得はできるらしいが、エリシアは2週間2時間練習して習得できなかった

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― 新着の感想 ―
ゲームのシステム外の魔法はプレイヤーには習得出来ないのかな?
[一言] キノコ軍団の駒が揃ったなら、相手陣営として用意すべきは亀軍団ですかねぇ
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