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第29話

 討伐隊は10日かけてダンジョンとその周辺を山狩りをし、モンスターを掃討。

 従士の話を断って以降、伯爵から私に何か言われる事も無く・・・


「これにて、討伐任務の完遂を言い渡す。ご苦労だった」


 討伐隊の作戦が終わった。


「ドゥッチ村長。ダンジョンは無事無力化し、周辺一帯のモンスターも掃討した。

 今年の税を例年の半分とし、浮いた余裕で来年以降の収穫を元通りにするよう励め」

「ははーっ」


 それだけ言い残して、伯爵たち一行もパ・ブシカの街へ帰ってしまった。


 マジで冗談半分だったらしい。私の《勇敢》分のMP返せ!



 ◆


 討伐隊が帰って1か月経過。

 季節は真夏となり、青い麦が風に揺られる季節。


「・・・あっづ・・・」

 私は夏バテした。


 いや、この世界クーラーとか無いし、冷凍庫も無いからアイスとか冷たい飲み物とか全くない。

 しかも畑の面倒は毎日見ないといけない。

 熱中症にならないのは、生命力ステータスが高いおかげか・・・?

 とにかく、この暑さはヤル気を無くす。


「主様が毎日ローブ姿なのが悪いのでは?」

 アカネはいつの間にかノースリーブのサマードレスに衣替えしてた。

 オ・ノーレ。私も夏衣装装備が欲しい。


「だって、ゲームで収集してた装備はぜーんぶエルドラド・クロニクルの金庫に入れたままだから、服はこのローブと村で作ってもらった貫通衣(ワンピース)しか無いもん」


 ちなみにワンピースは洗濯中だ。

 インベントリに収納して再び出せば洗濯せずに汚れが落ちる!

 ・・・なんて事はなく、汚れたワンピースをインベントリ空間に収納して、再び出しても汚れたワンピースのままだったので、諦めて洗濯している。


 私の家は地下と基礎の工事を終えて柱と一階部分の組み立てが始まっている。

 トールさんからの手紙では、壊れた迷宮核は伯爵がコネを使って調査しているらしい。

 従士の勧誘の話も、冗談半分のあれっきりで(トールさんの方はまだネチネチ言われているらしい)平和・・・でもなかった。


「主様、また来ました」

「えー・・・」


 邪妖精(ピクシー)である。

 ファンタジーのド定番である妖精はとっても可愛らしい・・・ワケ無い。

 邪妖精とは、日本で言う妖怪みたいなヤツで、トンボのような薄くて透明な羽を持った小人の姿をした生物・・・いやアレ生物か?

 妖精と名前に付いているが、言ってしまえば『自我を持って笑えないイタズラをする自然現象』だ。

 退治しても自然界の魔力から何度でも産み落とされ、土地の魔力が尽きない限り何度でも生まれ変わる。

 自我はあるが、人間が定めた善悪の区別なんて知らないし判断しない。

 ただ、純粋な興味と好奇心で魔法を行使して、周りのリアクションを笑う、害獣である。


 風を吹かせて洗濯物を飛ばすなんてまだカワイイといえる。が・・・

 放置してつけ上がらせると、子供を攫う、家畜を暴れさせる、家に火を点けて火事を起こすなどキリが無い。

 原因は分かっている。迷宮核が破壊された影響だ。


 ダンジョンに宿る魔力の渦を、迷宮核は暴走していてもある程度の制御をしていた。

 本来なら適切な方法で機能停止させれば、ダンジョンの魔力を迷宮核に封じることができた。

 しかし、強引な火力による破壊で、ダンジョンに渦巻く魔力が周囲一帯に漏れ出て、その結果として邪妖精たちが大量発生したのだ。


「キャハハハハハ!」

「ソーレ!モットモット!」


「あんのクソ虫ども・・・!」


 今日は私のマンドレイク畑に目をつけたらしい。

 咲き始めたマンドレイクの花を毟って食べたり、勝手に掘り返してマンドレイクを叫ばせたりとやりたい放題。

 対処に出たマイコニド達は・・・あぁ、マンドレイクの叫びを聞いてダウンしてる。


「ア!まじょダ!」

「いじわるまじょガきたゾー!」

「にげロー!キャハハハハハ!」


「待てこの害虫!」

 邪妖精は弱い存在で弱点も知っている。

 ただ、森にまき散らされた魔力から何度でも復活するし、複数体で協力すると、上位の魔法を使ってくる。

 妖精系の魔法はシャレにならない効果が多いから面倒くさい・・・!

 邪妖精たちは逃げながら《妖精の矢(ピクシーアロー)》を私に集中砲火するも、その程度の魔法は装備で無効化できる。


「《嘆きの大絶叫(バンシースクリーム)》!!」

 嘆き女(バンシー)を召喚して、林の奥へ誘い込もうとした邪妖精たちを一掃。

 残りの邪妖精は林の奥で待ち伏せて、本命の魔法を準備しているだろう。

 その手は乗らない。


「《魔法知覚(センスマジック)》」

 魔法を可視化させてやれば・・・いた!

 どうやら《落とし穴(ピットフォール)》の魔法に引っかけようとしていただろうがお見通しだ!


「《果物爆弾(フルーツボム)》!!」

 行使するのはただの果物を爆弾に変える魔法。

 オヤツにする予定だったリンゴを爆弾に変えて、投げ込んで3カウント。

 爆発音と共に隠れていた邪妖精共は魔力へと還元された


「まったく毎日毎日懲りないんだから・・・!」


 これだけやっても、明日にはまた懲りずにイタズラしようとやってくる。

 迷宮核ごと低位悪魔を自爆させた正体不明には、死にかけたのを含め、ピクシー大量発生の恨みが加算された。


 妖精除けの魔法薬とかあったっけ?こう毎日ちょっかい出されると、流石に無視はできない。


 妖精除けの方法として定番なのは、ドアに蹄鉄を飾る。

 妖精種は金属類が弱点で、妖精が金属に触れると一時的に無力化され、金属繊維で編まれた布で掴まれれば致命的だ。

 妖精を捕まえるガラス瓶も鉄などの金属がガラスに含まれているので、ガラス類も弱点。

 瓶詰めにしてやろうかと思うが、捕まえるのは手間だし金属繊維なんてこの村で作れない。

 小さくて飛べるので、植物魔法で捕まえるのも難しい。


 森に魔力が放出された影響は他にもある。

 狩猟班のマイコニド達の報告だと、北の丘の向こうにある森林地帯で、魔力影響を受けた魔獣型モンスターが活発化しているらしい。

 夏は魔獣型のモンスターが活動的になる時期ではあるが、村人から聞いた話と比べて、より凶暴性が増しているそうだ


 次から次へと厄介な・・・

《果物爆弾》

種別:攻撃魔法/庭師の魔女専用

制限:庭師の魔女Lv5、果物1個

属性:植物

射程:5~10m

爆発範囲:半径3m

形状:投擲

片手で持てる飲食可能な果物を1つ選択し、爆弾に変える魔法。

投擲から3カウント後、もしくは爆弾に変えた果物を誰かが食べた場合は爆発する。

爆弾に変えた果物によっては、特殊な効果を与える場合がある。

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マイコニドに氷を作って貰えばいいんじゃないかな?
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