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第2話

 ゴブリン達の片づけを他の村人に任せ、カークと呼ばれていた村人の後ろに付いて行く。


「さっきは助かった。あのゴブリン共をこうも簡単に倒すなんて」

「大した事じゃないわ。 それより村は大丈夫なの?」

「・・・あまり良いとは言えないかもな。 畑は荒らされた上に、男手は半分以上怪我で動けない」


 村の広場を通り過ぎ、村の中でも大きな家の前に着いた。


「ここが村長の家だ。 まず俺が話をつけるから少し待っててくれ」

「・・・早めにお願い」


 カークが頷くと、村長の家のドアを叩いて呼び出す。

 少し間を空けて、やせっぽちの体格、白髪と深い皺がある顔が特徴の小男が出てきた。


「カーク! もう大丈夫なのか?」

「村長。 襲ってきたゴブリンはもう全て倒した。オーガもだ」

「なんと・・・ 他の男も無事なのか?」

「何人か怪我はしたが全員軽傷だ。 あそこに居る魔法使いのおかげで」


 村長が私を見て・・・訝し気な顔をする。

 ・・・見た目が若いからかな・・・?

「魔法使い? あの歳でオーガを追い返せるだけの魔法が使えるとは思えんが」

「いや村長、あの魔法使いはゴブリン10体とオーガ2体をあっという間に全滅させたんだ」

「・・・信じられん、がお前がそんなウソを言う男でもないか」

「その代わり・・・俺が報酬を払うと言ってしまったんだ。 まだどれぐらい要求されるかは分らんが、村の危機に手を貸してくれたんだ」

「分かった、分かった。 あぁ、お待たせして申し訳ない。 どうぞ上がってください魔法使い殿」


 村長が扉を開け、私を招いたので入る。

 村長宅の中は、まるで童話の世界のようだ。

 石造りの暖炉に板張りの床、ちらりと見えた土間のような場所では薪で料理するようなカマド。


 土足のまま家に上がるのが普通らしく、カークも一緒に村長宅に上がる。

「どうぞ、こちらに」

 村長が椅子を引いてくれたので、席に座る。

 テーブルを挟んだ向かい側正面に村長、その右隣にカークが座った。


「では改めまして・・・。ゲイリーウッズ村の村長、ドゥッチです」

 握手を求めてなのか、手を差し出されたので・・・握手。

「魔女の・・・」

 なんて名乗ろう。・・・アバターの名前で良いか。

「・・・エリシアよ」

「カークだ。普段は村で木こりをしている。 さっきは助かった」

 村長と軽く握手した後、カークとも握手して座り直す。


「それで、報酬ですが・・・どれほどでしょうか・・・?」

 村長がこちらの顔色を窺いながら、そう問いかける。

 ・・・どうしようか。相場とか知らないし、どれくらいだろうか。

 見たところ、裕福・・・とは言い難そう。

 カークや村長の服はパッチ等の補修跡が目立つし、ざっとこの部屋の中を見ても物が少なく、調度品のようなのも見えない。

 タダって言ったらそれこそダメだろう。私が疲れただけ損。

 今、必要なのは・・・金じゃ無いな。便利だけど早急に要る物ではない。

 なら物資。それと情報だ。 ゲイリーウッズって何処だ?欧州とかの地名?

 この家の内装から見て明らかに現代とは思えない。


「報酬は・・・まずこの国について少し教えてほしいの」

「この国・・・ですか?」

「えぇ。 私は遠い国から研究のためにやって来たの。 異国の文化や植物を研究するためにね。まずは情報から欲しいわ」

 カバーストーリーはこんな物で良いか。

 この国の常識とか知らなくても異国人って言い訳ができる。

「はぁ・・・。分かりました。

 ゲイリーウッズはイデア王国の東部、イースリー領の北にある開拓村です。

 今、地図を出しますね」


 村長はそう言って立ち上がると戸棚から地図らしき巻物を出してテーブルに広げた。

 地図は・・・いやコレ地図? ほとんど何も書いてない。

 主要な街道っぽい線と、コレは森を表してる?っぽいマーク。

 大雑把に街?や村?の場所も書いてあるが・・・縮尺とかどうなってるんだ?精度も期待できそうにないな。

「ゲイリーウッズの場所は・・・ココです」

 村長が指さしたのは森っぽいマークが書かれたエリアから少し離れた位置。

 地図でいうとけっこう北側かな。


「ここから南の街道を馬で1日進んだ先に、イースリー領の中心で交易拠点のパ・ブシカの街があります」

 聞いたこと無い地名ばっかりだな。

「パ・ブシカはどれぐらい大きな街なの?人口は?」

「交易拠点ですし、商人や職人、冒険者が大勢いますからこの辺りでは大きな街です。 流石に人口までは分かりませんが・・・」

 馬で1日って具体的な距離が分からないな。

 とりあえず、街道に沿って進めば大きな街が有ると覚えておこう。

 ・・・あとついでにコレも聞いておこう。


「コレを見たことある?」

 私が取り出したのは、エルドラド・クロニクルで使われている金貨。

 エルドラド・クロニクルではゲームの舞台に黄金郷が存在しており、その痕跡として金貨が大量に流通していた。ゲーム内での取引には全て黄金郷から発掘された金貨が使用されているのがエルドラド・クロニクルの設定。

「金貨・・・ですか。触っても?」

「えぇ。どうぞ」

 村長は恐る恐る触って、眺める。

「・・・イデア金貨とは模様が違いますね。 とても精巧で・・・複雑な模様」

 村長は指で金貨を弾くと澄んだ金属音。

「本物の金貨ですね、音で分かります。 限りなく純度の高い金貨。 一体何処の金貨ですか?」

 エルドラドの金貨は知らない・・・か。でも金であるのは証明された・・・のかな?

「故郷の通貨よ。イデアの通貨を見せてくれる?」

「えぇ。 少々お待ちを」


 村長は私にエルドラド金貨を返し、巾着袋から3種類のコインをテーブルに並べた。

「左から価値が低い順に銅貨、大銅貨、銀貨です。ここにはありませんが、大銀貨に金貨、それより価値が高い大金貨、白金貨、大白金貨が王国で使われています。

 私達庶民は、基本的に銅貨か大銅貨で生活が成り立ちますが」

「大きい硬貨の方が価値は高いのね。 大銅貨を銅貨に替えると?」

「大銅貨1枚で銅貨10枚ですね。大銅貨10枚で銀貨1枚です」

 10進法かな。覚えやすくて助かる。

「銅貨1枚の価値は?」

「そうですねぇ・・・。場所にも依りますが、この村なら銅貨1枚で黒パン1つ食べられるかどうか・・・ですかね」

 銅貨やっす。 いや、この村がインフレしてるだけか?金も物資も無いから何でも高くなってるとか?

「町ならどうなの?」

「大銅貨5枚あれば、ジョッキ一杯の酒と豪勢な食事がありつけますね」

 うーん。聞いた感じだとこの村が困窮してインフレしてるのかな。


「良いわ。 報酬の件だけど・・・先ず欲しいのは土地よ」

「土地・・・ですか?」

「えぇ。 土地と家を用意してほしいの」

 金も物資も無いなら土地しか取れそうに無いし。

「家もですか!」

 食い気味だな。なんか嬉しそうだし・・・。もしかして安すぎたか?もうちょい吊り上げるか。

「えぇ。植物を育てる畑とかも欲しいから広めの土地が良いわね」

「なるほど広い土地ですか、開拓村ですから土地なら沢山ありますとも」

「家は新築で広い方が良いわね。石造りで頑丈なのが」

「ほぅほぅ。広くて石造りで頑丈。問題ありません」

「家具もつけてくれると嬉しいわね」

「もちろんですとも。村の家具職人にすぐ作らせます」

「研究用の工房とか、あと地下室もできたら欲しいわね」

「村の男たちにすぐ取り掛からせます」

 なんだなんだ?ここまでアッサリ通ると逆に怖いぞ。

 というか村長の目が『絶対に逃がさん』って目で見てる。こわっ。

 えーと他は・・・。

「家ができるまで、世話してくれると助かるけど」

「どうぞどうぞ。村の酒場の2階が宿ですが、今は誰も泊まっておりませんから好きなだけお泊りください。食事も私の家でご馳走しますとも」

「あー・・・」

 えーっと。えーっと。

「い、家を管理してくれる使用人とか・・・」

「えぇ!村一番の働き者の娘をつけさせていただきます!」

 ダメだ、これ以上思いつかない。あと村長、顔が近い。鼻息が荒い!


「じゃ、ソレでよろしく」

「えぇ!今後ともよろしくお願いいたします!」


 ・・・まぁ良いか。タダで拠点ゲットしたし。

≪嘆きの大絶叫≫

種別:攻撃魔法/上級魔女専用

制限:Lv5以上

属性:魔法/呪い

射程:0~15m

形状:貫通

嘆き女を召喚し、指定方向にいる対象群に向けて呪いの叫びを聞かせる魔法。

嘆き女の叫びを浴びせ聞かされた対象は呪い属性ダメージと状態異常耐性低下を受ける。

嘆き女の叫びは遮蔽物を貫通し、有効範囲にいる複数対象へと同時に効果を発揮する。

ちなみに嘆き女は見た目はアンデットのように見えるがエルドラド・クロニクルでは”精霊種”と分類されている。

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― 新着の感想 ―
街を見る前にこの辺鄙な村を拠点にしてしまって良かったんだろうか?
ほら見ろ… 女になってたった5分なのに、もう土地も家も巻き上げてる! :) 冗談だよ。今のところ、いい始まりだね。彼女が女性として、魔女として、そして異世界から来た人間としてどう適応していくのか楽しみ…
[一言] オーバーロードの二次創作ですか?
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