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第28話

 ダンジョン攻略から一晩経過。


 私は従士の提案について考えていた。

 あの提案は受けるべきではないのは分かっている。


 伯爵の狙いは3つ。

『私を含めたマイコニドの軍勢の統制』

『私のポーションの量産技術』

『トールさんへの人質』

 ってところだろう。


 ただ、相手は()()。戦闘能力がどうのこうの言える相手ではない。

 ハッキリNOと言えないのは・・・度胸が無いのもそうだが、伯爵を怒らせた場合、この地には居られなくなる。

 トールさんの戦闘力を知っている伯爵は、この領地を支配している。

 軍勢なんか差し向けて逮捕なんてせずとも、あの人が『エリシアと取引するな』と一声出されただけで、マイコニド達を抱えた私は詰む。

 食料、衣服、日用雑貨、マイコニド達では自給できない物は外部に頼らないといけない。


 伯爵から見れば、私は『出所不明の武装勢力(テロリスト予備軍)を抱えた怪しい魔法使い』

 攻撃する理由は、それで十分だろう。


 村を出て、他所へ移るのも考える。

 ・・・いや、ダメだ。敵対的なプレイヤーが襲ってくるかもしれない状態で、大勢のマイコニドを引き連れたら目立つし、複数の格上のプレイヤーに遭遇しただけで詰む。


 諦めて提案を飲むしかないの・・・?


 そう悩んでた時。《通信》でアカネに拠点の林へ呼び出された。

 ・・・アカネからの呼び出しなんて珍しいな。普段なら、向こうから出向いてくるのに。


 呼び出された場所へ到着すると、アカネが待っていた。


「主様・・・私どもが邪魔でしたら、召喚を解除してください」

「それは・・・」


≪召喚解除≫

 召喚魔法が使える魔法系クラスなら自動的に習得するスキルで、術者が召喚したクリーチャーを全て消す。

 弱ったクリーチャーを召喚解除、後に再召喚すればHPも状態異常もリセットするので、召喚士が戦線の立て直しに使ったりする。

 つまり、()()()()()()()()()()()()()


「私達の存在が、主様のご迷惑になるのであれば。この身は潔く退去します」


「もう一回召喚しても、ソレはアカネである保証は無いよ」

「はい」


 ゲームとは違う仕様で召喚されたアカネ。

 召喚を解除した後、同名のクリーチャーを召喚してもソレがアカネなのか、違う個体の真菌の女王なのか、私にも分からない。


 もし、再召喚でアカネではなかったら・・・

「私は・・・アカネが消えるのは嫌だな」


 あぁー。クソ。エリシアになる前からそうだった。

 面倒な事、嫌な事、全部投げ出そうと放り出して、周りに流されるまま仕事して、結局大事な物も一緒に投げ出そうとしてる。


 腹をくくれ(エリシア)

 コレは失敗したらやり直しの利かない現実だ。

 アカネは私のために自分が消えても良いと覚悟があった。


 貴族がどうした。向こうが権力を使うなら、Lv100の私は武力で殴り返してやる。

 トールさんも蹴ったんだ。私が蹴って何が悪い!


「スゥーーーー・・・よし!明日、伯爵に断ってくる」


 ほら、夜中に訪問とか迷惑だろうし。明日の朝くらいなら迷惑にならないと思うんだよね。

 ・・・日和った訳じゃないぞ?・・・いや、誰に言い訳してるんだ私。



 ◆


 アカネの覚悟を告げられて次の日。

 アカネとマイコニド全員を引き連れて、ネヴァン伯爵の天幕へ訪問する。


「・・・」

 今更だが緊張してきた。伯爵が逆ギレして武力衝突とかしたらこの国でお尋ね者なのは間違いない。

 ・・・いや、大丈夫。トールさんだって話を蹴って、平気そうにしてるし。


「《勇敢(ヒロイック)》」

 緊張を跳ね除けるため、自分を対象に《勇敢》を発動。

 魔法の無駄遣いだろうが・・・おぉ!すごく勇気が湧いてきたぞ!

 オラー!貴族様がなんぼのもんじゃい!


 私は伯爵のいる天幕へ入り、挨拶抜きで用件を伝える。

「伯爵!従士の話、お断りします!」

「そうか。まぁ当然だな」


 ・ ・ ・ あれ、終わり?


「元々、断って当然の最低水準で提示したからな。

 あの条件を飲む方がどうかしてる」


 ・・・ん?

「分かりやすく言ってやるとな。()()()()()だけだ。

 あの条件とは比べ物にならない話でもトールは即答で断っていたからな。

 異世界人は、権威に興味が無いらしい」


 えー・・・

「それで、朝から随分と大勢での訪問だが・・・ほかに用事があるのか?」


 吹っ掛けられた・・・つまり・・・断られるの前提だった・・・?


「あの、ウチのマイコニド達なんですが・・・」

「それなら、迷宮核の暴走で召喚された、とでも誤魔化しが利く。

 要塞に使用されたダンジョンでは、友好的な存在が召喚されるのは常識だからな。

 ダンジョンの暴走で召喚された被害者を村で保護したことにしておく」


「あ・・・はい」

「他に用事が無ければ、もう帰っていいぞ」


 特に怒られるとか面倒に交渉を重ねるとか何もなく。

 本当に、あっさりと帰された。


「よ。エリシア」

 帰る道中で、帰り支度をしているトールさんと遭遇。

「あの、従士の話・・・伯爵は吹っ掛けたって言ってたんですけど・・・」

「そりゃそうだろ。本気なら書面が届くし、勧誘側が手付金とか手土産とか色々出すのが常識らしいぞ。

 少なくとも口約束とかで従士になれるワケねーし」


 ・ ・ ・ ン?


「トールさん知ってたんですか!?」

「え、あんなの秒で断るヤツだろ。

 少なくともアレは、貴族が平民に出世をネタにした半分冗談みてーなヤツだから、すぐ断って大丈夫な勧誘だぞ。

 あんな条件受けるヤツはガチで切羽詰まったヤツだけだし」


 んな貴族ジョークわかるか!!


「つまり、蹴った事を伯爵からキレられてるトールさんって・・・」

「あぁ。ガチの方で断り方間違えたわ。そのせいで面子潰された事、根に持たれてな・・・」


 貴族って怖い。

《茨の壁》

種別:防御/専用

制限:Lv8以上の植物魔法を習得しているクラス

属性:防御/召喚

射程距離:1~15m

形状:壁/地点指定

高さ5m、幅10mの茨の壁を召喚する魔法。

茨の壁は独自のHPと防御力、耐性を持ち、視界と射線と移動を阻害する。

この魔法で召喚された茨の壁は植物なので、治癒魔法の対象にできる。

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時間制限が無くなったことによる維持コストとかどうなってるんだろうか。
なろうで蔓延しすぎて評判の悪いテンプレの、何でもホイホイと原住民の頼みごとを聞く「奴隷主人公」になるのを断ったのは良かった。 あくまで個人の主観なので気にせず読み捨てて頂きたいのですが、 領主の行動…
[一言] 立場のあるお貴族様が何も知らない平民に貴族ジョーク飛ばすのは単なる悪質な嫌がらせなんよ あわよくば的な思惑もあったりしそう
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