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第26話

 一層では冒険者の総攻撃によってモンスターは完全に排除され、無事に地上まで脱出できた。


「ありがとうございました」

 約束のインゴットをチーム『南海』に渡し、ダンジョン前で陣を置く伯爵の天幕へ報告に行く。


 ネヴァン伯爵の天幕の前で、供回りの人を通して報告の旨を伝えると、天幕の中で席に案内してくれた。

 ・・・何故かマイコニド達は席に着かず、私の後ろで待機してるけど。

 待つこと10分ほどして、高価そうな衣服のネヴァン伯爵が天幕の奥から出てきた。


「迷宮核を発見したと聞いているが」

「はい」

 布袋に詰めた迷宮核の残骸を渡す。

 布袋を側近の人が確認し、伯爵に見せると・・・伯爵は片眉を上げた。

「見たところ、破壊されているな・・・事情を聞こうか」

「実は・・・」


 私は4層での事を説明。伯爵はそれをじっと聞いた後・・・

「分かった。迷宮核が破壊されたのは残念だが、此度の事は人為的な可能性を含めて、こちらでも調査を行うとしよう。

 討伐隊はこの地にて数日かけてダンジョン内の魔物を掃討する予定だ。

 迷宮核についての懸賞金は支払うことはできんが・・・この情報については、別途褒賞を用意しておく。

 ご苦労だった」


 そう言って、伯爵の側近に報奨金の入った袋を渡された私達は村へと帰ろうとした時・・・


「報告!ゲイリーウッズ方面から武装集団が来ています!」

 慌てた様子で見張りであったであろう人が駆け込んできた。

「何!?数は!」

「30を超える・・・マイコニドです!」


 ・・・それ、アカネじゃね?

 慌てて、現場に向かうと・・・


「主様ぁぁぁあああああああ!!!」

 うん、マイコニド全員と共にアカネ達が来た。


「あー。ウチの身内です・・・止めてくるんで」

「身内!?どういうことだ!?」


 後ろから伯爵が私への疑問を投げかけてくるが、無視してアカネ達の前へ箒を使って飛行。


「はいストップ。ステイ、ステイよアカネ」

「ご無事ですか!供につけた配下に報告を受けて全軍で駆け付けました!」

 うん、無事だから落ち着いてね。おいそこのマイコニド達。ダンジョンに突撃するなー?殺気ビンビンで武器持って何しようとしてるの?


「主様の玉体に傷を入れた不届き者は、直ぐに誅罰を」

「落ち着きなさい」

 チョップを入れてアカネを黙らせる。


「ポーションと回復魔法で全回復してるから、休めば平気よ」

「さ、左様ですか・・・」

「うん、無事だから村に戻りなさい。ほら解散」


 アカネ達と共に村へ戻ろうとした時、

「ちょっと待て。まだこっちの話が終わっていないぞ」

 伯爵に呼び止められた。


「マイコニドを従えているのは分かっていたが、なんだ彼女は!マイコニドを統率しているようだが・・・」

 なんだと言われても・・・


「マイコニドの女王種。『真菌の女王(クイーンマイコニド)』ですよ」

「はァ!?冗談だろう!マイコニドの女王種など聞いたことも無いぞ!」

「魔法で召喚した守護者です」

「バカな!女王種であるのが確かなら、災厄級・・・いや魔神級に比類するぞ!」

 んなアホな・・・いや、この世界の人間が基準なら、アカネレベルで国を征服させるのは、無茶でも無いか?

 制限時間無制限で、時間さえあれば土地の養分から兵力を文字通り『栽培』できる、しかも兵士一人でも現地の一般人を圧倒する。

 ・・・うん、厄災って言われたら納得か。


「私の命令は絶対に聞くんで大丈夫です」

「それを聞くと、なおさら安心できないんだが」

 なぜ!?


「規格外の薬師・・・であるならば、辺境に埋もれた賢者とも言えたかもしれん。

 だが、世に疎く、規格外の兵力と能力を持ち合わせ、ダンジョンを攻略し、迷宮核すら破壊する炎にも耐えた。

 いったい何者なのだ。お前は」


 真っすぐな目でネヴァン伯爵が私を見る。

 ・・・どう、しようか。

 適当な事言って誤魔化す?でも、悪い人間とは思えない。

 村人達の反応とか、街の様子から見ても、優良な統治者なのは間違いない。


 私が返答に詰まると

「ソイツは、俺と同郷・・・で済ませてくれね?伯爵サマ」


 討伐隊が切り開いた道を通って・・・トールさんが姿を見せた。

「トール。お前の同郷だと?」

「トールさん!?」

「ヨォ!エリシア。上手く立ち回れって言ったろ。バカヤロー」


 トールさんの恰好は・・・店で見た半袖シャツにズボンと前掛けの料理人スタイルに2mほどの長さの『太刀』を背負っている。

「答えろトール!お前の規格外の強さは知っていたが、他にも居たとは聞いてないぞ」

「あースマン。あの時はマジで他のヤツも来るとは知らんかった」

 雰囲気的に、かなり親しそうな感じだが・・・


「知り合い・・・ですか?」

「おう、ラーメン屋の開店資金稼ぐのに・・・ちょっとな」

「ちょっとではない!冒険者組合が懸賞金を懸けた高位の魔獣を事も無く切り伏せて、挙句に私が従士の称号を授けようとした時の事を忘れたか!」

「確か『従士とか無理。フツーの営業マンな俺がそんなの貰っても困るわ』・・・だったっけ?」

「フツーノエイギョウマンとはなんだ!訳の分からん言葉で私の話を蹴ってその態度はなんだ!」

「良いじゃねーか、俺は街でラーメン屋したいんだよ。

 それに冒険者じゃ手に余る魔獣とか、ちゃーんと定期的に狩って(仕入れ)るから、お前も悪くない落としどころだったろ?」


 うわー。トールさんもアグレッシブだなぁ。


「それで。この魔女・・・エリシア殿も、お前と同格の存在というわけか」

「まぁな。戦闘力なら俺より弱いが、こっちの世界の基準じゃ十分・・・なんつったかな。魔神級?とかならぶっ飛ばせるレベルな」


「トールさん、転移者とかそういうのは既に・・・?」

「話が分かる上に、かなり頭も切れる貴族だったからな。

 割と早い段階で異世界の事は話した。隠して探られても面倒だったから、適当な知識とか諸々も含めてな」


 トールさん、異世界系漫画の主人公ですか?

《武器攻撃致命化》

種別:強化魔法/共通

制限:上位クラス習得

属性:強化

射程:0~10m

形状:対象指定

武器のクリティカル率とクリティカルダメージ量を向上させる魔法。

対象が持つ武器を1つ指定して、物理攻撃のクリティカル効果を向上させることができる。

ただし、投射武器などの持ち主の手から離れる武器や、武器を通じて発動させた魔法には効果が無い。

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― 新着の感想 ―
この世界の魔神安くね?
[一言] 強いって理不尽押し付ける側は統治者にとって頭が痛いでしょうな
[一言] 4層での事をしっかり説明したのなら後半のような事にはならないような? 過少に報告したのか隠蔽したのか…明らかに他の悪質なプレイヤー(か同等の存在)がいるんだから施政者に話を通すのが筋な気もし…
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