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第25話

 灼熱の奔流が5層から襲い、茨の壁にぶち当たり・・・10秒だけ拮抗。

 次の防御魔法を詠唱する途中で壁となっていた茨が焼き払われ咄嗟に身体を縮める。

 灼熱の奔流を全身に浴びる・・・時間にして30秒。

 身体が焼かれる激痛の中、灼熱の奔流がようやく途絶えた。


「カヒュ・・・!」

 焼けた空気で肺と喉がやられて呼吸ができない中、必死にエルドラド・クロニクルから持ち込めた最上級の治癒の水薬をインベントリ空間から取り出す。

 最上級ポーションを浴びるように口に含み、回復に成功するとようやく呼吸ができた。


「!ハーッ!ハーッ!」


 息を整え、マイコニド達の無事を確認するため振り返る。

 よし、まだ生きてる!全身焼かれているが、≪予備生命力(ライフストック)≫の効果で生き残れたようだ。

≪予備生命力≫は1度だけ付与された対象の死を回避する魔法。

 継続ダメージによる死は防げないが、即死級の攻撃1度だけなら生存できる。


「≪魔法薬充填≫≪毒薬の霧≫!」

 最上級の治癒の水薬を使用して、マイコニド達を回復。

 今のは、炎熱系の魔法・・・私の魔法抵抗力を抜いてダメージを与えるとなると、上位クラス、下手したら最上位クラスの魔法。


 怖い怖い怖い。5階層にそんなのが居たら勝てるわけがない・・・!

 そもそも植物系クリーチャーのマイコニド達は炎熱系が弱点。

 今回は≪予備生命力≫で死なずに済んだが、あと数十秒長くあの炎が襲ってきていたら私も含めて全員死んでいた。


「あ・・・るじ」

「≪中位傷病治癒≫。悪いけど治療を手伝って」

 真菌の神官に≪中位傷病治癒≫を行使して治癒の手数を増やす。


「ゴホッ・・・。≪中位(ミドル)損傷治癒(キュアウーンズ)≫!」

 真菌の神官が行使したのは傷病治癒の上位互換魔法、部位欠損すら治癒する治癒魔法。

 私の傷病治癒より回復量が高いため、マイコニド達は回復して立て直しは出来た。


 灼熱の奔流はとんでもない熱量だったようで、5層への階段はまるでサウナだ。

「主様、妙です・・・この先、気配が全くありません」

 このメンバーで最も気配の察知に長けた真菌の弓兵がそう報告。

「気配がない?」

「先ほどまで、何かが居た気配がしましたがあの炎の後は感知できません」


 空間転移系で移動した?それか隠蔽の魔法で気配を消した?待ち伏せている?


 あんまり気は進まないが、囮を召喚して偵察に出す。

「≪植物召喚:綿玉(フラッフボール)≫」


 召喚したのは下級の植物系クリーチャー。

 白い綿毛の球みたいな植物で、風に乗ってころころと集団で転がり、綿毛の中にある鋭い突起で生き物の毛や衣服に引っ掛かり、惹きつけられるように次々と群がって最終的に獲物を物量で押しつぶす植物。

 押しつぶされ、身動きが取れなくなった獲物は綿毛の下にある突起が皮膚に突き刺さり、そこから体液を吸い上げられて養分にされるのだ。


 ちなみにエルドラド・クロニクルでは荒野エリアで遭遇でき、良質な生地の素材として狙われている。


 1回の召喚で10体くらいセットで出てきたので偵察に飛ばす。

 フラッフボール達は5層へと転がっていき5分。特に何も起こらない。


 慎重に5層へ降りていくと、そこは小さな部屋。

 部屋の中央に灰の山があり、ダンジョンコアがどこにも見当たらない。


「主様、これを」

 灰の山を調べていた真菌の兵士が何かを発見。

 何かの欠片のようなので≪対象分析≫で見てみる。


【迷宮核の残骸】

 種別:残骸

 ランク:

 破壊された迷宮核の残骸。

 もう迷宮核としては機能しない。



 やられた。誰かが迷宮核をあの炎で破壊したんだ。

 灰をかき分けて、迷宮核の残骸をかき集める。

 迷宮核は高価なアイテム。それを破壊する理由を探るためだ。


 幾つかパーツを集め、調べていくと・・・

『W-3』と彫られたパーツを見つけた。

 灰の方も≪対象分析≫で調べた結果、


【灰の山】

 種別:死体

 ランク:

 下級悪魔の死体が燃え尽きた灰


 下級悪魔(レッサーデーモン)?あんな強力な魔法を使うとは思えない。

 ・・・いや、使い捨てのアイテムならどうだろう。

 確かエルドラド・クロニクルには、使い捨てだが誰でも魔法を使える魔法のスクロールを生産するクラスもあった。

 あの強力な魔法をスクロールに記憶させて、下級悪魔に自爆を命令させた?

 下級悪魔は誰かの支配下で、迷宮核を暴走させてて・・・その証拠隠滅?


 スクロールを制作するには、そのスクロールに記憶させる魔法を行使できる存在が参加する必要がある。

 つまり、コレは・・・プレイヤーの仕業?なんのために?

 分らない・・・が、ここにある迷宮核の残骸を伯爵に持ち帰るのが先か。


「主様?」

「とりあえず、迷宮核の残骸を回収しましょう。その後、ゆっくり調べるわ」


 私達は迷宮核の残骸を持って5階層を脱出し、地上へと引き返す。

 4階層へと上がるの階段で、別の冒険者チームと遭遇した。

 中年男性らしい男所帯の5人チーム。


「む。先を越されたか」

 強奪を警戒して身構えると、その冒険者チームは地上への先導を買って出た。

「攻略者には敬意を払うのが冒険者の流儀よの」

「探索は時の運と実力よ、迷宮核は残念だが宝物庫の品で取り返せるわい」

「まぁ砕けちまってるし、今回の攻略はハズレだな」


 正直、炎のダメージは回復したとはいえ、精神的に余裕も無かったしお言葉に甘えて、その冒険者チーム『南海(サウスマリン)』(交渉中にチーム名を聞き出した)には私が宝物庫で見つけた金色のインゴットを2本報酬として渡す形で地上まで護衛してもらった。


 チーム『南海(サウスマリン)』は最初は遠慮していたが、地上までの護衛依頼という体裁で、露払いをしてもらうと説明すると納得してもらった。


 ◆


 地上への帰り道は護衛依頼をした『南海(サウスマリン)』に付与した≪敵意感知≫≪罠感知≫が大変便利だったらしく、罠やモンスターの対処も楽に終わり、2層まで戻ってくると攻略された情報が知れ渡っていたのか残念そうに撤退する冒険者チームや、鬱憤を晴らすためなのかモンスターに戦いを挑み続ける冒険者、まだ取り残したお宝があるはず!と奥へ駆け出す冒険者チームなど、反応は様々だった。


「しかし残念だったな。肝心の迷宮核がこんな有様じゃ」

「左様、砕けてしまった以上、迷宮核としての力は期待できぬ」


「いえ、今回は命と宝物庫のお宝があっただけ儲けです」

 事実、私が欲を出したせいで火あぶりにされて死にかけた。

 マイコニド達には申し訳ない事をした。反省しなくては。


「もうすぐ一層だ。地上までもうひと踏ん張りだな」

「はい」


 ようやく帰還か。

≪霞の衣≫

種別:幻惑魔法/専用

制限:上級魔女、幻惑使い、等

属性:幻惑

射程:0~10m

形状:対象指定

対象者を霞のような魔力で覆い、認識を阻害する魔法。

霞の衣で覆われた対象は他者からは姿がぼやけて見え、投射武器による攻撃が回避しやすくなる。

ただし、覆われた対象も霞の影響で遠くの敵がぼやけて見えるため、投射武器の命中精度が下がる。

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― 新着の感想 ―
こんなに簡単に死にかけるとなるとやっぱり主人公そんなに強くは無いんだな。にしても悪意を持った戦闘特化プレイヤーがいるとか厄介だな。
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