第22話
ダンジョンの4層。
探知魔法ではモンスターの気配が多い。
良くも悪くも一番乗りにこの階層に来てしまったらしい。
遭遇するモンスターもゴブリンやオーガのクラス持ちが当たり前に出てくる。
ゴブリンメイジ、ゴブリンスカウト、ゴブリンソルジャー、ゴブリンアーチャー、オーガソルジャー、オーガシールダー、オーガバーサーカー・・・その他いろいろ!
範囲攻撃魔法はMP消費が重いのでマイコニド達への強化を優先。
出てくるモンスターはゲーム基準だったらLv30~35って所かな。
無傷で勝てるが、やたらと数が多いので連戦してる状態。
ゲームと違って動き回れば息も切れるし、罠やモンスターに対して常に上下前後左右・・・全方位を警戒しないといけない。
これがダンジョンか・・・!魔法が使えなかったら多分罠で詰んでる。
魔法が使えても、二度とダンジョン攻略なんて嫌だ!
≪宝物探査≫の指針に従って移動しながら、向かってくるモンスターをマイコニド達が蹴散らす。
道中のモンスターは脅威じゃない、が油断できない。
4層でとんでもないモンスターと遭遇したのだ。
ソレは大樽を背負い、松明を持ったゴブリンの軍団。
ゴブリンスーサイドトルーパー、自爆特攻してくるゴブリンの軍団である。
大樽の中身はおそらく爆薬かそれに類する何か。
20体を超える決死隊ゴブリンが私達を見つけた瞬間、松明を振り回しながら自爆特攻しようと突っ込んできたのだ!
「≪集団束縛≫!」
幸いにも遭遇したのが通路で距離もあったので、密集していたところを集団束縛の魔法で拘束。
束縛に抵抗しようとゴブリンスーサイドトルーパー達が松明を振り回した結果、ある1体の樽についていた導火線に着火。
盛大に連鎖爆発して自滅してくれた。
アレが至近距離の乱戦で起爆したらと思うとぞっとする。
スーサイド系のモンスターは、通常種より弱い代わりに自爆特攻してくる恐ろしいモンスターで、その自爆に巻き込まれた場合、レベル差に関係なく大ダメージは免れないのだ。
「まさか異世界に来てアレが出てくるとは思わなかったわ」
しかも自爆するからドロップアイテムも台無しにする、嫌われモンスターだ。
実は特定のスキルを使えば自爆させずに倒す方法もあるらしいが、私は使えないので遠距離から自爆させる。
マイコニド達にはあんなマネは絶対させない。
さて、恐ろしい自爆兵たちを片付け、ダンジョンを進むとようやく≪宝物探査≫の指針が指した場所にたどり着いた。
どうやら、オーガやゴブリン達の宝物庫らしく、見張りのオーガソルジャーが2体居たが特に特筆するべき事も無く排除。
≪魔法知覚≫では魔法の品を5個ほど発見した。
持ち帰って鑑定するためインベントリ空間へ回収。
他に目ぼしい物として銀色の金属インゴットが5本、金色の金属インゴットが3本。
鞘に収まった丈夫そうな剣(魔法は付与されてなかった)
金糸のシンボルが織られたタペストリーっぽい旗(何処かの国か組織のシンボルかな?)
宝石っぽい鉱物が18点、宝石アクセサリー類8点(これも魔法付与はされてなかった)
後は、ぱっと見では価値が分からなかったので放置。
目についた価値のありそうな物をぶんどって、インベントリ空間・・・にはもう入りきらなくなったので、真菌の神官が持参した背負い袋に入れる。
袋詰めした後、宝物庫内で休憩を入れる。
持ち込んだポーションで私と真菌の神官はMPを回復させ、真菌の兵士達や弓兵にはHP回復速度向上のポーションを配布。
治癒の水薬は即効性が高いが、使い過ぎれば中毒症状のリスクがあるため、休憩は基本回復速度向上ポーションで回復を促す。
中毒症状になると、ポーションの効き目が悪くなり、ポーションを定期的に使用しないとHPとMPの最大値が減り続ける状態になる。
中毒症状を解除するアイテムはあるし、中毒解除の魔法も使えるので気にするリスクではないが、気を付けるだけで良いならMPやアイテムの無駄を減らすために回避。
回復を待つ間に無限水筒で水を出し、マイコニド達と一緒に軽く食事を摂る。
携帯食料として持ち込んだのは、燻製肉のベーグルもどきサンド。
厚めに切った燻製肉をベーグルパンもどきで挟んだシンプルな料理。
燻製肉を挟むベーグルパンっぽい物は雑穀パンで、味は・・・正直言えば日本のパンの方が断然美味しいと言えるレベル。
これでも村の料理レベルは最近向上しているのだ。
最初に食べた衝撃の異世界飯では、パンが凍ったトーストみたいにガチガチだった。
しかし、マイコニド達が村の外から山菜やハーブを持ち込み、つい最近では真菌の魔術師が酵母まで作ってしまったのだ。
(ホントはテレビで見た『カビから抗生物質を作る話』を思い出して、私もスキルで作れるかの実験材料にカビを注文した副産物)
おかげで歯が立たないほどのガチガチパンは無くなり、ベーグルもどきが作られるようになった。
ちなみに、ベーグルパンは小麦粉に塩と水だけで作るが、ベーグルもどきが雑穀入りなのは小麦粉の節約。
目指すは日本の食パン。欲を言えば焼きそばパンなどの総菜パンも実現したいな。
ただ、村にはバターが無いから乳製品を生産できる家畜が欲しいな。
いや、植物から油を搾ってマーガリンを作るか・・・?
作り方知らないけど、マイコニド達に研究させれば作れるかもしれないし
食事を終えて、休憩を切り上げると階段方面から気配が近づくのを感知。
ここまでの戦闘の痕跡を辿られているのか、最短ルートで近づいている。
「誰か来ますね」
「主様、どうしますか」
・・・宝物庫にはまだ物があるし、先に進んでしまおう。
追ってきたら、対応は考えるけど。
「先に進みましょう、相手も宝物庫が狙いかもしれないし。
私達は十分な収穫も得られたから、ダンジョンコアまで進んでしまいましょう」
『了解』
マイコニド達の揃った返事を聞いて、ダンジョンの最奥。5階層へと私達は目指す。
≪大いなる助力≫
種別:強化魔法/神官専用
制限:前提魔法≪小さな助力≫≪助力≫の習得
属性:強化魔法
射程:0~10m
形状:対象指定
祈りを捧げ、対象に神霊または精霊などの信仰対象からの助力を与える魔法。
助力を与えられたキャラクターは物理攻撃力と生命力が向上し、HPの最大値が上昇する。
ただし、この魔法は生きている対象にしか効果を発揮せず、ゴーレムや不死者などには効果が無い。