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第20話

 ポーション100本は無事、討伐隊が受け取り、私は伯爵にガチ説教された。


 伯爵はこの地域一帯の流通や行政権を持っており、個人売買を取り締まる事は無いが、この世界において私が作るポーションは品質が高すぎるらしい。

 街で売られている低位ポーションの質は『劣』から『並』程度で私が『優良』の高品質ポーションを100本も抱えている事は異常な事らしい。


「100本もあれば多少品質の差異があると思ったが・・・。

 全て『優良』品質、それも品質劣化しないように封印も施されているとは・・・」

 本来はこのレベルのポーションを手に入れようとするなら、王都や聖地と呼ばれる地域でも名の有る薬師に依頼する必要があるらしい。


 つまり、こんな辺境の開拓村で作れるはずがないレベル・・・と。


 品質保護もこの世界ではかなりマイナーな魔法で、ポーションでは中位以上の調合品にしか使われないらしい。

 冒険者が使う低位のポーションでは回転数を考えて劣化前提、使用期限付きで作るらしい。


「付加効果で+10もあれば劣品質の中位傷病治癒と大差無い品だ。

 劣品質であれば中位傷病治癒の水薬は銀貨1枚ほどが組合の相場だ。

 それを半値で売れば価格崩壊が起きるのは目に見えているだろう」


 冒険者ってかなり劣悪な環境だったんだなぁ・・・劣品質の治癒の水薬とかお腹壊さないの?

 エルドラド・クロニクルだと劣品質の薬とか食べ物は使用し続けると確率で病気になったり中毒症状を起こす設定だったけど・・・


「今回は無知であるとして注意で済ませるが、以後は気を付けるように」

「はい・・・」



 ◆



 伯爵からの説教が終わり、討伐隊の休憩が完了。

 ダンジョンへの道案内は狩りチームのマイコニド達を1チーム。

 真菌の兵士2名、真菌の神官1名、真菌の弓兵1名に私も入れた5人チーム。

 アカネは村の防衛指揮として留守番を頼む。


 指揮官が2人だとネヴァン伯爵が持っているか分からないけど、鼓舞系スキルが喧嘩する可能性が高い。

 鼓舞系スキルは複数同時には発動せず、後から使用した効果は前の効果を打ち消して発動してしまう。

 せっかくの鼓舞スキルによるバフも打ち消し合っては意味が無くなる。


 ネヴァン伯爵には私が魔女である事、範囲攻撃魔法が使える事を申告。

 村人達も私が範囲攻撃魔法を使えることは知っているので、彼らの証言の後押しを受け、追加戦力として加入できた。


 討伐隊は昼前にマイコニド達の案内で丘を進み、ダンジョンを目指す。

 道中でオーガを連れたゴブリンの一団を見つけたので、≪毒薬の霧≫で麻痺毒を浴びせてトドメをお願いする。


「オーガは簡単に無力化できるものなのか?」

「まさか!あの毒がどれほど強力かは測れませんが、オーガを簡単に無力化するなど冒険者10階位以上の実力は必要です」


 伯爵が側近と何やら話しているのが聞こえた。


「10階位とは何です?」


 気になるワードが聞こえたので、会話に参加。

「聞こえてしまったか。ダンジョンを攻略する冒険者の強さの指標みたいなものだよ。

 冒険者の実力を測っている冒険者組合の強さの指標で、どれほど深い階層まで攻略できるかを示しているんだ。

 駆け出しは0階位。ダンジョンの階層を攻略できると実績を示せば1階位、2階位と階位を伸ばせるんだ。

 階位が高い冒険者ほど、深いダンジョンを攻略できる実績と実力が認められ、冒険者としての格が示されるんだ」

 側近が代わりに解説してくれた。なるほど、冒険者のランクか。

 ダンジョン攻略が本業の冒険者はダンジョンにどれだけ深く潜れるかが強さの指針になるのは納得。


「稀に、その基準から逸脱する人間もいるけどね。

 半年前サールダンの街に現れた『0階位の攻略者』は、たった一人で0階位のまま15階層あるダンジョンを攻略してダンジョンコアを持ち帰ったのは有名な話だね」

 ソイツ絶対プレイヤーだろ。後でトールさんに情報送ろう。


「なるほど」

 最低でも私はこの世界のダンジョンで10階層程度までなら活躍できると判断されたか。


 遭遇戦を無傷で片づけた討伐隊はダンジョンの入り口の近くまで到達。

 ダンジョンの入り口前では、情報通りゴブリンやオーガがキャンプのような物を作っていた。


 私達は伯爵とその側近の号令で直ぐに布陣して戦列を整える。


「よし、先ず魔法と弓。続いて投擲で先制し、奴らの数を減らせ!

 ゆくぞ!≪鼓舞:戦技不乱≫!」


 戦技不乱は確か物理攻撃の命中率とクリティカル率を向上させる鼓舞系スキル。

 討伐隊には物理攻撃職が多いし、当然の選択か。


 鼓舞スキルを受けると集中力が増したような気がする。

 周りも遠隔系のスキルや魔法を発動に合わせて私も魔法を行使。

 えーっと周りの邪魔をしない魔法だと・・・


「≪三倍(トリプル)魔法範囲拡大(エクステンドスペル)≫≪集団束縛(マス・ホールド)≫!」

 使用したのは、指定した範囲内に居る敵対者の身動きを封じる≪束縛≫の範囲魔法。

 ゴブリンやオーガ程度なら抵抗できずに拘束され、身動きはできないだろう。

 MPが六割ほど減ったので、MP回復速度向上のポーションを一気飲み。

 自分で作った物だけど、あんまり美味しいとは思えないな。

 暇なときに味の改良も研究してみよう。

 私の魔法範囲内で束縛されたオーガやゴブリンは、完全に射的の的。

 身動きができずに矢と魔法で処理された。


 さて、運よく生き残っていたオーガやゴブリンは武器を持って接近してきた。

 ココからは投擲武器持ちが削りつつ、前衛がエンゲージする作戦。


「≪詠唱歩行(ムーヴキャスト)≫」

 呪文を詠唱しても硬直しないスキルを起動して後ろに下がりつつ、次に強化魔法の準備。


「≪魔法対象集団化マス・ターゲットスペル≫」

 次に発動する単体魔法の対象を『範囲(指定)』に変更するスキルを起動。

 コレで5mの円形状のゾーン内に居る味方を強化魔法の対象にできる。

 ・・・代わりに強化数値と強化持続時間が半分になるけど。


「≪勇敢(ヒロイック)≫!」

 発動させたのは、精神作用系の強化魔法。

 効果の対象者は、勇気が湧き出て攻撃力と生命力が上昇し、恐怖や狂気に対する完全な耐性を得る魔法だ。


狂戦士化(バーサクフォーム)≫の魔法も使えるが、狂戦士化させて乱戦になったら、どんな事故が起こるか分からないし、使わない。


 前線は乱戦に入り、近接でのぶつかり合いにシフト。

 マイコニド達の方は、レベル差が元からあるから無双してるね。

 槍の一突きでオーガの急所を抉り、弓の一矢でゴブリンが数体貫かれる。

 真菌の神官は・・・あぁ居た。後方で回復魔法で支援か。


 さて、こちらの戦力が序盤から有利に攻撃してゴブリンやオーガが次々と倒れ、ダンジョンの外に居たゴブリンやオーガは怪我人を出しつつ全滅させた。


「前哨戦は終わった!各自は準備と隊列を整え、ダンジョンに突入せよ!」

 馬に騎乗した状態で駆け回り、伯爵が号令を出す。


 さぁ、いよいよダンジョン攻略だ!

≪詠唱歩行≫

種別:技能/共通

制限:神官系or魔法使い系クラスLv5以上

属性:なし

射程:自身

形状:なし

魔法詠唱をした状態で移動できるスキル。

詠唱中は移動速度が半減し、騎乗できない代わりに、魔法を詠唱しながら移動して魔法を行使できる。

エルドラド・クロニクルの大型ボスは範囲攻撃が基本なため、範囲攻撃から逃げ回りながら魔法を行使する必要があるので、大型ボス戦攻略には魔法使い系や神官系には必須スキル。

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― 新着の感想 ―
効果範囲を拡大させているとはいえ拘束魔法だけでMPが6割も削られてるのを見るとやっぱり無双が出来るだけの強さは無いか。
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