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第19話

 トールさんからの返信を受け取って3日が経過した日。

 早朝に櫓で見張りをしていた真菌の魔術師から≪通信≫を受けた。


『早朝に申し訳ありません、街道方面から騎馬と歩兵を確認しました』

 騎馬と歩兵・・・?


『人間の武装集団で数は50人前後。冒険者と思われる者も確認できます』

 って事は、討伐隊かな?ゴブリンの襲撃もこれで終止符か。

 フハハハハ勝ったな(フラグ)


 私は身支度を済ませて、報告を受けた櫓へ箒で移動。


 この時間帯は村人たちの起床時間を過ぎて朝食だったり朝の仕事に入る時間、私はもっと朝は遅いが電気もガスも無いこの村では、太陽が昇る頃に起きて日が沈むときに寝るのが常識。

 むしろ太陽が昇っても数時間は寝てて、夜も起きている私は村の生活リズムからズレている方だ。


 櫓に到着して見張りのマイコニドと合流し、櫓から軍団の様子を見てみる。


「≪魔法隠蔽(クローズドスペル)≫≪望遠(フォーカス)≫」


 遠見の魔法で軍団の様子を確認すれば、歩兵の方は正規の軍隊って感じではない。

 マイコニド達と違って足並みはバラバラだし、装備も統一感が無い。

 アレは冒険者の寄せ集めって感じかな?チーム単位で固めて歩かせてる。

 騎馬の方は・・・こっちは結構少数。10騎くらいかな?

 騎馬部隊は装備が統一されているけど・・・なんだろう冒険者ではない雰囲気を感じる。

 あ、装備が推定冒険者より上質な気がする。

 歩兵の殆どは革鎧だとか安っぽい武器で、騎馬部隊の方はちゃんとしたプレートメイルに長柄武器と装備がしっかりしてる。


 あ、1騎この村に近づいてくる。先触れってヤツかな?

 遠見の魔法を解除して、村長へ≪通信≫を飛ばす。


「ドゥッチ村長」

『うわぁ!?な、なんだ?急に声が聞こえる!』

 あーしまった、ゲームの感覚で勝手に繋いだらビックリされるか。


「失礼、エリシアです」

『あぁ、エリシアさんでしたか・・・ビックリした・・・。

 何か御用でしょうか?』

「えぇ、今魔法で貴方に思念を飛ばしています。

 街道方面に50人程度の人間の軍団を発見しました。

 今、その軍団から1騎こっちに向かってきています」

『分かりました、出迎えましょう』

「了解、通信(コンタクト)を切ります」

 通信を終えて、櫓から降り、出迎えるために村長と合流。


 村にやって来たのはやはり先触れだった。


「馬上より失礼。我々はネヴァン伯爵率いる義勇討伐隊である。

 北部を襲撃するゴブリン共の討伐の途中である」

「村長のドゥッチです、いかなる御用でしょうか・・・?」

「うむ。情報によるとゴブリンが発生するダンジョンが村の北側にあるという情報を手に入れた。

 そこで我々はこの村に陣を構え、ゴブリンが発生するダンジョンの攻略に挑む。

 誰ぞ地理に詳しい案内役が居れば心強い」


 なるほど、案内役か・・・

 村の狩人ではゴブリンのダンジョンまでたどり着けないだろう。

 狩りの班にいる真菌の兵士か弓兵に案内させるか。


「村長。ウチの狩りの班に案内させましょう」

「そうですね、お願いしても良いですか?」

「任せてください」


 うーん。ダンジョンってヤツも気になるな。

 案内に紛れ込んでついていくのもアリか?マイコニド達を連れていけば冒険者チーム(笑)で誤魔化せるか?


 なにより、ダンジョンコアとかいうお宝は手に入れられれば一生安泰と言われるだけの価値があるらしいし・・・マイコニド達に紛れ込んでみるか。


 やって来た討伐隊は村の外にある林でキャンプを張って休憩に入るようだ。

 そこに村人たちが自作の携帯食料とかを売り込んでいるのが見えた。

 ・・・なるほど、あんな感じで売るのか。

 貴重な貨幣獲得の機会だし、私も便乗して売り込んでみよう。


 私は目についた鎧姿の男に声をかけた。

「あの、すみません」

「ん?何かなお嬢さん」


 近づいて気づいたけどこの人、背ェたっか!身長190cm以上あるな。

 周りの人間よりなんか雰囲気もあるし、装備も一番良さそう。


「ポーションを買いませんか?村の近くで生えている薬草から作りました」

「ポーション?手持ちにはあるが、あればあるだけ助かる。少し見せてくれ」

 私は以前街で売ったの売れ残りの1つを見せると、その男は腰のポーチから片眼鏡(モノクル)のような道具を出して、ポーションを観察しはじめた。


「低位治癒の水薬・・・ってなんだ!?この効能は!低位傷病治癒+10に加えて未開封時品質劣化が起こらないだと!?」

「へ?」


 私がマヌケ顔を晒していると鬼気迫った顔で詰め寄られ

「幾らで売ってくれる!」

「大銅貨5枚で」「安すぎるぞ!」

 安すぎ!?安すぎるで文句言われたの初めてなんだけど!?


「良いか!このポーションの効果は中位傷病治癒-5とほぼ効果が変わらん品質だ」

 マイナス!?そんな品質だったら捨てろよ!私なら即廃棄するぞ!

「加えて永続的に劣化しないとなると、長期間保管して常備できるのだ!これが何を意味するか分かっているか!?」

「えーっと、いつでも高い効能を得られる?」

「低位治癒の水薬、否低級の治癒系統魔法全体の価格が大きく下がるのだ!」

 良い事では?

「これでは治癒関連の価格設定に大きな打撃を受けることとなる!

 このポーションは最低でも銀貨1枚、いや銀貨2枚にしても買う人間は居るだろう!」

 銀貨!?たかが『低位傷病治癒の水薬』に銀貨2枚ィ!?

品質保護(クオリティキープ)≫させただけで!?


「このポーション、在庫はどれだけある!」

「えーっと」

 確かあの後も増産して・・・

「100本ありますけど」

「ひゃ・・・ひゃっぽん・・・中位傷病治癒-5相当が100本だと・・・!?」


「伯爵!どうされましたか!」

 男が騒いでいるのを聞きつけたのか、周りに人が集まってきた・・・


 ・・・え?『伯爵』・・・?

 まさか、この人・・・


「もしや貴方って・・・」

「ふむ。そういえば名乗っていなかったな。

 私こそ、この討伐隊最高指揮官にしてネヴァン家当主。

『ニコラウス・ヴァン・フォークス・ネヴァン』である」


 マジモンの貴族様に売り込みかけてたァーーーーーーッ!!


「大銀貨、いや金貨で支払おう。全て購入(回収)する」

 全部!?

「こんな物が北部で大量に流通すれば、最悪我が国の経済に大きな混乱が起こる」

 そこまで深刻なの!?私、経済とか特に詳しくないから知らんけど!


「とにかく、このポーションは大銅貨5枚(庶民の贅沢)で手が届く品ではダメだ。

 即刻、価格調整を見直すように」


「は、はい」

 在庫全部が金貨に代わって行政指導された・・・

≪魔法隠蔽≫

種別:共通技能

制限:Lv10以上の魔法使い系クラス全般

属性:隠密

射程距離:自身

形状:なし

魔法発動した際、発動を悟られないように隠蔽する技術。

このスキルは自身を対象とする魔法の行使に対して発動できる。

効果が発揮したとき、魔法の発動は探知系魔法や探知スキルに感知されない。

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― 新着の感想 ―
今魔法で思念を飛ばしています。 『ファミチキください』
いきなり貴族に目をつけられちゃったか。でも良い貴族っぽそうだな。
[一言] 安く買い叩けるのに優しすぎない?と思ったけど、流通を気にしないといけない立場の方だったか。真っ先にそちらの方を気にしたのはいい為政者っぽいなあ。
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