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第1話

 森の外を目指して飛行中。

 森の木々より高く飛んでいるので何かにぶつかる心配は無い・・・が。

 正直言うと困惑している。


 この世界は何なのだろうか。

 とりあえず、魔法が使える事はさっき確認できた。インベントリ空間も使える。ゲームみたいな世界、だが照り付ける太陽と身に受ける風やその他私を刺激する五感が現実であると知らせる。

 エルドラド・クロニクルはPCゲームだが五感まで再現されたVR技術とか聞いたことも無いし、そもそもキーボードマウスで操作するゲーム。


『現実で寝ている間にエリシアのコスプレをさせられて山の中にでも放り込まれている』と考えるにしては魔法も使えるし今まさに箒で空を飛んでいるから除外。

『コレは夢だ』と考えるには・・・ずいぶんとリアリティがある。

 これで夢だったなら、むしろ良い。何も心配せずにこの夢を満喫させてもらう。


 最悪なのが『ゲームのアバターで異世界にやってきちゃった』というネット小説でありがちなヤツ。


 夢ならばエリシアの身体で死んだり何か大変なことが起こっても夢から覚めるで済むが、コレが異世界で現実であるとするなら、ケガや病気が死に繋がる。

 エリシアのHPやMPは分かった。


 なら今、エリシアが習得しているクラスは・・・と脳内で検索してみると、すっと頭に浮かんできた。


魔女(ウィッチ)』Lv15

 魔法系。呪いなどの状態異常(バッドステータス)魔法や攻撃魔法が習得可能。

上級魔女(アークウィッチ)』Lv13

 魔女の上位クラス。習得魔法は魔女系魔法を前提とする上位互換魔法。

薬学の魔女(メディスンウィッチ)』Lv13

 魔女と薬剤師から派生。

 魔女よりさらに強力な状態異常系統の魔法に加え、ポーションなどの薬品系消耗品の効果を向上させるスキルや魔法を習得できる。

庭師の魔女(ウィズガーデナー)』Lv13

 魔女と農夫から派生。

 植物系クリーチャーを召喚する魔法や植物関連素材への採集、加工に関する魔法を習得できる。

占い師(フォーチュンテラー)』Lv10

 魔法系。探知、追跡、分析といった情報系魔法を習得できる。

農夫(ファーマー)』Lv13

 生産系。植物関連の素材を採集、生産するスキルを習得できる。

薬剤師(ドラッグメイカー)』Lv13

 生産系。種別:薬とそれに関連する素材を扱うスキルを習得できる。

『ポーションマイスター』Lv10

 生産系。薬剤師の上位互換スキルを習得できる。


 トータルレベル:100


 ゲームではメニュー画面から習得可能なクラスを10個まで、最大レベル100以下に納める形でセットできるから好きなタイミングで好みの構成に変えられる。

 ・・・まぁその後に構成に合わせたスキルをショートカットキーに登録しなおす必要もあるけど。

 セットされたクラスのレベル合計値が100になるといくら経験値を集めようともレベルアップできないし、セットされていないクラスの専用スキルや専用魔法は発動できない。


 とりあえず別のクラスを付け替えられるのか?と頭の中で試してみたが、頭の中ではクラスの付け替えができない。


 やばい・・・今の構成だとエリシアは格下しか勝てそうに無い。

 最後にプレイしてた時は森で薬草採集してたからなぁ・・・。

 自衛のために上級魔女入れてるけど、ガチビルドで襲われたら逃げる以外に手は無い。


 あと私は個人の対人戦が苦手。

 上位プレイヤーとお遊びでPvPしてみた事あるけど、ほぼ何もさせてもらえなかったのは嫌な思い出。


「町か村か、とにかく安全地帯目指そう・・・」




 ◆



 森の外を目指して飛行していると、丘の向こうで煙が見えた。

 焚火なのか火事なのか。とにかく人か何かは居ると判断し、やや加速させて丘の向こう側を目指す。


 丘を越えた辺りで村のような建築群が見える。

 藁ぶきの屋根?のような背の低い家が沢山とその周りを囲む石垣、その外には何かの畑が平野に広がっており・・・ゴブリン?とオーガ?の混成部隊が畑を踏み荒らしながら石垣の内側にいる村人らしき人間達と戦っていた。


「えぇー・・・」


 怒声を上げながら、村人たちっぽい人間は槍や剣、手斧などで石垣に取りつこうとする外敵を追い払う。

 ゴブリンやオーガっぽい軍団は石垣を乗り越えようと突撃と後退を繰り返している。


 村は見つけたけど安全地帯じゃなさそう・・・。

 どうするべきかなぁ・・・。


 無視するのは一番簡単。

 さっさと他を探してしまうのが一番楽だろう。

 地上で戦っている人々はこちらに気づいていない。


「でも見捨てるっぽくて後味悪いなぁ・・・」


 軽く見てみた感じだと、村人側は何度も突撃を受けて負傷者でも出たのか数が少ない。

 防衛している村人は8人くらい、対して攻め手はゴブリン10体にオーガ2体。


「ん~・・・。村人に加勢・・・?」

 報酬目当てに加勢してみるのもアリかな。

 無償でやる義理も無いし、適当な村人に売り込んでみよう。


 ゴブリン達が石垣から退却したのを見計らって、迎撃拠点の後ろ村の広場らしい場所へ着地。


*@$&#+*!?(誰だお前は!?)


 降下する時に私を見つけた村人がこちらに駆け寄って話しかけてきた。

 何だコレ、全く知らない言葉なのに意味が理解できる。こわっ。


「あー。旅の魔法使いよ」


 返事をしてみると・・・


「旅の魔法使い・・・ 冒険者か?」

 通じた。ナニコレ怖い。私は何語を話しているんだ・・・?


「違うけど・・・。飛び入りの売り込み。 報酬を出すなら加勢してあげる」


「・・・良いだろう。 今は何でも良いから人手が欲しいんだ。

 だが報酬の交渉はゴブリン共を追い返してからだ」

「それで良い」


 よし。交渉成立。

 ゲームならゴブリンやオーガなんて今の構成でも簡単に蹴散らせる。

 ・・・もし、想定より強かったらさっさと逃げよ。


 箒をインベントリに入れ、杖を持って迎撃地点に加わると、周りの村人たちは訝し気な目でこちらを見る。


「カーク、なんだあの小娘は」

「旅の魔法使いと言っていた。金を出すなら加勢するとも言っている」

「本気か? ゴブリンならともかくオーガを撃退できるとは思えん」

「今はどんな見習い魔法使いでも手が欲しいんだ。 魔力の矢(マジックアロー)でゴブリンの1体でも減らしてくれれば、まだ勝ち目はある」


 私を見て、ヒソヒソと話しているが、丸聞こえだよ。

 失礼な。魔力の矢程度、100連射できるぞ。


 少しすると、石垣の向こうでは隊列を整えたゴブリンとオーガが再度突撃の構えをとり・・・隊長らしきオーガが吠えると、全員で突撃してきた。


「来るぞ!構えろーッ!」

 村人たちも槍を石垣に並べて迎え撃つ姿勢。

 こちらもMPのリチャージが終わったところだ。

 突撃するオーガの1体に杖を向ける。


「先ずは様子見の ≪魔女の一撃(ウィッチスマイト)≫」

 杖の先端から、私の腕くらいの大きさの黒い杭のような物が出現。

≪魔女の一撃≫は杖を向けたオーガに向かって一直線に飛んでいき・・・その胴体を大きくえぐり取った。


「・・・おぇ・・・」

 えぐり取られたオーガの身体からボタボタと血が噴き出て1体倒れた。

 ・・・≪魔女の一撃≫って大した威力の魔法じゃないはずなのだが、レベル差かな?

 兎に角見た目がヤバい。想定より私の魔法は威力が強いらしい。

 いや、オーガが弱いのか・・・?どっちにしろグロい・・・。モザイクって偉大だったんだな。


 いきなり主力であったであろうオーガが1体倒されたのを見て、ゴブリン達の突撃が止まった。

 足が止まったのなら好都合、範囲攻撃で片づけよう。


「≪二倍(ダブル)魔法範囲拡大(エクステンドスペル)≫≪嘆きの大絶叫(バンシースクリーム)≫!」

 MPをごっそり減らして魔法を発動させると、目の前に半透明でぼさぼさの髪をした灰色の女性が姿を現し・・・

『アアアァァァアアアアアアァァァアアアアアアアア!!!』

 この世の物とは思えない絶叫を上げた。

 思わず耳を塞いだが、正面に居たゴブリン達は・・・おぉふ。

 ゴブリン達の目や鼻、耳から血が噴き出てる。

 十秒ほどで叫び声が終わり、灰色の女性が姿を消せば・・・ゴブリン達は絶命していた。

 ・・・ゲームでもチョイチョイ使ってたけど、イメージ悪いな。

 魔女系は呪いとか状態異常引き起こす魔法が多いからかな。


「な、んだったんだ・・・?」

 おっと、効果範囲からは除外してたけど叫びは聞こえていたのか、村人たちも耳を押さえていた。

 今後は注意しないと、フレンドリーファイアで報酬減額されたら笑えない。


「終わったよ。 確認して」

「あ、あぁ。 見てくる」

 村人たちが石垣を乗り越えて、ゴブリン達の死体に近づいて確認し、暫くして戻ってきた。


「確認した。 奴らは全滅していた。約束通り報酬の交渉に入ろう」


 他の村人たちは私を見て、ドンビキしていたのかも・・・。

 ・・・今後は自重して、もう少しイメージの良い魔法使おう。

≪魔女の一撃≫

種別:攻撃魔法/魔女専用

制限:Lv1以上

属性:魔法/呪い

射程:0~15m

形状:射撃

対象へ呪いの杭を射出する魔法。

Lv1以上の魔女クラスを習得していれば習得できる。

呪いの杭が刺さった対象は呪い属性ダメージを受け、生物であれば激痛により『スタン』状態になる。

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― 新着の感想 ―
主人公の口調が完全に女だけど精神までメス落ちしてしまったか?
[一言] > 魔女の一撃 主に腰に大ダメージ入りそう
[一言] 魔女の一撃といえばぎっくり腰の俗称だからなあ。胴体真っ二つはよほど重症だな!
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