第182話
「ガァッ!!」
蜃気楼を払い除けようとクラウベルが槍斧をぶん回すが、魔法で展開した蜃気楼はこの程度では消えない。
何とかリネットを見つけないと
「≪5倍連続魔法≫≪泡沫地雷≫」
「!!そこかっ!!」
クラウベルがリネットの声のする方向へ振り返り、踏み出す瞬間に連続爆発が発生
爆破系の魔法を仕掛けていたのか!!
「ステータスを大幅に上げても、ガードも回避もできないならただの的と変わらないわねぇ~」
更に追撃で水の弾丸が連続でクラウベルへと襲い掛かる!
「ッ!ガァ!!」
クラウベルも水の弾幕を避けるために動き回るが、リネットは水を回収しながら撃つから相手の残弾は文字通り無尽蔵だ。
ダメだ、リネットはクラウベルのスタミナが尽きるまで姿を隠して遠距離から攻撃するつもりか・・・なら、これならどうだ!
「≪魔法薬充填≫≪毒薬の霧≫ッ!」
インベントリ空間からアイテムを取り出し魔法に充填。霧として吹きつける
「無駄よ~。水系魔法使いに毒や酸は効かないのは常識よ」
「えぇ。知ってますよ」
元から毒や酸を扱える水使いに毒が効かないのは承知の上だ。私が吹きかけたのは
「吹きつけたのは「食紅」ですよ」
「見つけたッ!」「ッ!?」
私のバラシと同時に透明化に使用した水が着色され、クラウベルの横薙ぎ一閃がリネットに命中!
リネットを吹き飛ばして蜃気楼空間から追い出せた!
「ゴホッ・・・!食紅なんて、何で持ち歩いてんのよ・・・ッ!」
「いえ。インベントリ空間にたまたま入れっぱなしだったんで」
ホントは適当に色が付けられるなら何でも良かったんだが、無害に色を付けられるならコレが良いと思ったから使ったので、持ち歩いている事に特に深い意味はない
「ガァァァアアアア!!!」
クラウベルは吹き飛ばされて倒れたリネットに槍斧を振りかぶって飛び掛かる!
「甘い!!≪大水球≫ッ!」
「しまっ・・・!?」
「クラウベルさん!?」
クラウベルが飛び掛かった瞬間、リネットのカップから巨大水球が飛び出してクラウベルを飲み込んだ!
「念には念を入れて≪凍結封印≫ッ!!」
巨大水球から抜け出そうともがくクラウベルに追い打ちをかけるようにリネットが水球をカチコチに凍らせて封印してしまった・・・
『ご主人!!・・・ダメか、俺も時間切れだ』
「えぇ!?」
一緒に戦っていた武具精霊のニャン吉も実体化の時間が切れたらしく姿が消えた・・・嘘でしょ・・・!?
「水妖姫、封印を見張ってなさい。私は残りを片付けるから」
ヤバい。クラウベルが氷に封印されたから私一人で戦わなきゃダメか・・・!?
マーシャさんとカイさんは・・・ダメだな、二人ともスキュラから手が離せない状態だ。・・・私だけで切り抜ける必要がある
「≪水泡機銃≫」
「≪琥珀の壁≫!」
琥珀の壁を出現させて泡状の弾幕を防御する。
琥珀の壁に泡が当たるたびに小さな爆発のような破裂音と共に琥珀に罅が入る。だが、この程度で砕かれるほどこの魔法はヤワじゃない!
「2度も見たけど・・・ゲームじゃ見た事ない魔法ね~。地属性系の防御魔法をベースにしたみたいだけど、硬い上に衝撃にも強いなんて~」
表層の琥珀が砕かれても亀裂の隙間を樹脂と樹液の混合物が埋め立てて硬化し即時修復。小ダメージを蓄積しても、こっちの修復速度の方が速い!
今の内に感知系魔法を再使用して相手の情報を少しでも獲得したい
「≪魔力知覚≫≪生命力知覚≫」
二重詠唱で知覚系魔法を同時発動するが・・・ダメだ、リネット本人は隠蔽魔法で見えないようにしてる。これじゃ相手の残存体力も残存MPも分からない
・・・ん?魔法反応が視界に漂ってる。これは・・・リネットが魔法で出した水か。本人から離れた水は知覚できるのか・・・これじゃどれだけ使ったかしか判断できないな
・・・いや、変だ。魔法で出した水ならこの反応はおかしい。
本人とは関係ないタコの体液にも同じ反応が出てる。・・・もしかして
「もう。また酸で溶かさないとダメね~」
リネットが指を向けるとタコの酸の体液が集まり出す。詠唱無しでアレができるって事は・・・私の考えが正しいなら・・・!
「くらえっ!」「!?」
咄嗟に私はインベントリ空間から魔法薬を引っ張り出してリネットに投げつける。
投げつけられた魔法薬の瓶はリネットの足元で割れて中身が瞬時に気化する
「ッ!?毒ガスなんて効かないわよ~」
「知ってますよ。ただ私の魔力を思いっきり込めましたが」
「?・・・!」
瞬間。リネットの指先に集まるタコの酸がぐにゃぐにゃと歪な形に歪み、制御を失ったように弾けた・・・やはりそうか
「無詠唱の水の操作は、魔力操作の応用でしたか」
「へぇ~。魔力操作に気づくんだ~。大抵の魔法使いにはバレなかったのに~」
原理としては簡単すぎて頭から抜け落ちてた。
彼女は水属性魔法に特化した構築だからこそ、周囲の液体に魔力を浸透させて、魔力操作技術だけで浸透させた液体を遠隔操作できるんだ。
多分、あのカップの基本能力は大量の液体を溜め込む事と、中身の液体を複数種類ごとに分けてため込み、瞬時に切り替えられるくらいか。水の再利用は本人の技量、多分この世界で後天的に獲得した技術なんだ
だからこそ、私の魔力が込められた魔法薬を混ぜれば妨害できる!
私の魔力が込められた魔法薬を彼女の操作する液体に混ぜたから、操作権の一部を奪い取れた。支配力が強いから弾けさせて邪魔する程度しかできなかったが・・・無詠唱の水攻撃は私でも封じることができる!
「それで?さっきの魔法薬の効能は~?」
「私の魔力をたっぷり込めた以外の効能としては、ただのアロマですよ」
睡眠導入のアロマ魔法薬。こっちの世界の人間なら1回嗅ぐだけで8時間はぐっすり眠る超強力な睡眠薬だけど、彼女の耐性の前じゃ良い香り程度にしかならないだろうな・・・実際に眠そうな雰囲気無いし
だが、大容量の大瓶を丸ごと1つ使っただけの効果はある。気化して広がった魔法薬に過剰に込められた私の魔力が広がり、彼女が操作していた水に私の魔力を混ぜ込んだ。こうなったらこの場で分離するのは不可能だし、水をかき集めようとしても私が妨害できる
「厄介な事するわねぇ~。無詠唱魔法どころか、水妖姫のカップまで・・・」
それはリネットにも分かったようで、彼女は水の膜でカップの中身だけは守っていた。だが、残り分量はかなり制限されたはずだ!
≪琥珀の壁≫
種別:防御魔法
制限:エリシアオリジナル
属性:地属性
射程:1~5m
形状:壁
エリシアオリジナル魔法≪琥珀の鎧≫をさらに発展させて防御壁として出現できるようにした魔法。
琥珀の鎧よりもさらに分厚く頑丈にすることで防御性能と修復速度はさらに向上。
迂闊な近接攻撃は硬化する樹液を浴びて琥珀の壁に取り込まれる結果になるため、接近攻撃への牽制にもなる。
制約として空中には出現させることができず、必ず地面から垂直、かつ自分の正面しかまだ出現させることができない(いずれは全方位任意の数を出現させたり、より遠隔に出現させて味方を守ったりできるように改良中)




