第174話
クラウベルを伯爵邸に連れて戻り、伯爵と共に話し合いが始まった。
「それで。王城に悪魔武器とやらがあるから、回収したいと」
「悪魔武器はマトモに使いこなすことを考えていない、所有者を暴走させ、怪物として暴れさせるために作られている武器です。
保有したとしても百害あって一利なし。・・・領地を持つ貴族の間でも、噂には聞いたことはありませんか?人間が突然怪物化して暴れた・・・と」
「・・・聞いたことはある。素行の悪い傭兵や冒険者が呪いの武器をどこからか手に入れ、怪物に変じたという。・・・確か冒険者組合で悪魔武器を回収し、解析を試みた話も聞いたが、何も分からないとだけしか・・・」
あぁ。そう言えばトールさんが持って帰った冒険者組合、伯爵の街だから当然情報知ってるよな
「・・・分かった。だがどうやって悪魔武器を見つけるつもりだ?」
「鑑定魔法や鑑定系スキルに頼らざる得ませんね。竜種は魔法で呪いの残滓を感知して大雑把な座標は把握していますが、誰が所持しているかまでは把握できません。
なので、私が直接見る必要があります」
「そうか・・・」
「それと、タダで協力を求めません。・・・こちらを」
クラウベルがインベントリ空間から出したのは・・・おぉ。大きなエメラルドが連なった金の首飾り。高そうだな・・・効果無しなのが残念だけど
「・・・分かった」
「私達の方は?」
「当然用意している。コレだ」
クラウベルがインベントリ空間から出したのは・・・黒い箱。いやコレは封印か。中身は何だろ?
「中身は『無銘神性の落胤』だ」
ゲェ!!
「なんつーモン出してんのよッ!」
「特級呪物じゃないですかッ!」
「なんだ?それは・・・」
あぁ伯爵は知らないか。と言うか知って良い物じゃないが
「無銘神性・・・つまり神の成り損ないの落胤・・・半神性存在です。
当然マトモな生物じゃないですし、一般的なモンスターとは比較にならない神話の怪物ですね」
「なぜそんな物を報酬に・・・?」
「超強力な呪物だからよ。落とし子とはいえ神性生物から生まれた存在だから、上手く使えば神話級の装備の材料にしたり、強力な儀式の供物に使えるのよ。失敗したらとんでもない事になるけど」
「最上位級になると、手に入れるためにでっかいギルドが血眼になって本気で潰し合いするくらいですからねぇ・・・」
鑑定結果は・・・神格は下位クラスから生まれたモノか。
この程度だったら大手ギルド所属なら取引に出せるくらい持ってても不思議じゃないレベルだ。最上位級の神格の落胤だったら戦争の火種だからなぁ・・・
昔、野良で組んだパーティーがある落胤を相手にレイド戦をしていると、メンバーの1人がたまたま封印成功させて最上位級の落胤を入手した結果・・・それを巡ってその場でPVPが発生し、更にその後ろの大手ギルドが出張って来て収集つかなくなった大事件があったな。
その時は最終的に所有権があるプレイヤーがオークションに突っ込んで、大手ギルド同士による財力の殴り合いが始まって、そのプレイヤーはかなりの大金と引き換えにある大手ギルドに手放したんだっけ?
最下級クラスは上位プレイヤーや私を含めた古参勢なら割と持ってたり加工品を所持してるけど、下位となるとエルドラド・クロニクルでも億単位の金貨が動く。
こっちの世界じゃ最下級でも手に入れるのはほぼ不可能だろうな。
そもそも神格と遭遇する事なんてほぼ無いし、したくも無い
「最上位呪詛系封印の≪黒箱≫で封印処理済み。
神格の系統は祟り神系の獣神で完全無力化済みだ」
「祟り神の落胤なんて迂闊に使えないですよ・・・」
完全無力化済みなら・・・まぁ安心か
獣神の祟り神とか下位でも私達のギルドじゃ滅茶苦茶手を焼かされる相手なのによく持ってるな・・・
「不満なら、別の物にしようか?」
「マーシャさんどうします?」
「レートを考えたらむしろ出し過ぎって思うけど・・・」
「私では利用も加工もできない荷物だからな。拠点を持ってて加工できる人間の手に渡しておきたい。
特に聖域と戦う勢力ならこれくらい持たせておきたいぐらいだ」
下位の神格の落胤を「これくらい」か。・・・利用できるとしたらレーシアさんか?あの人、最上位まで魔法付与できるクラスを習得してたし上手く魔法付与できれば、即戦力級の装備が造れる・・・と思う
「なら。受け取っておきましょう」
「よし。短い間だがよろしく頼む」
クラウベルと握手を交わし、共闘が成立。
「私のクラスは前衛型の『槍使い』。武器は槍斧だ」
クラウベルのクラスは槍斧持ちの槍使いか。
槍使いエルドラド・クロニクルでは戦士系の中でもかなり基本的なビルドで、広い間合いと防御の隙間を縫う鋭い突きが特徴で、装備によっては素早い身のこなしでヒットアンドアウェイを得意とする高機動型から重武装に盾と併用して高い防御力と制圧力のある壁役もできる優等生だ。
そして槍斧は両手武器で突きだけでなく戦斧としての機能も持ち合わせているので振り回せば破壊力がかなり高いアタッカー向けの武器種だ。
クラウベルが見せてくれた槍斧は彼女の精霊武具らしいが能力までは話さなかった。まぁお互い見せずに済むならそれでもいいか。
「私は弓と短剣の切り替え型。前衛も後衛両方できるから遊撃に回るわ」
「私は後衛の魔女系。武器は長杖ですね。あと一人、今は別行動してますけど僧侶の仲間も来てます」
「都合よくバランスのいい編成になったな・・・。いや好都合だ。
悪魔武器を相手に油断はできない。悪魔武器の性能や相性次第ではプレイヤーも苦戦するし、単独では返り討ちに遇うことも珍しくない。
不意打ちで奪い取るのが理想だが、悪魔武器の能力が解放された場合は力を貸してほしい」
「えぇ。まぁ。・・・伯爵。そういう事なので明日の打ち合わせはそれを含めて警備に話を通しておきましょう」
「分かった。念のため避難ルートや城内でも戦いやすい場所もその時に教えよう。
悪魔武器の怪物が現れたらそこに誘導してくれ」
さて、こんな物か・・・ベッティちゃんにも悪魔武器や避難ルートの事を伝えておかないと
≪黒箱≫
種別:封印魔法/制限
制限:呪詛系魔法が使用できる最上位魔法使い系クラスLv15以上
属性:呪い
射程:0~30m
形状:空間指定
指定した空間ごと対象を呪詛で作った黒い箱に閉じ込め、圧縮する魔法。
この魔法への回避や抵抗に失敗した対象は空間ごと手のひらサイズの大きさまで圧縮され、人間の場合は即死。モンスターならばアイテムとして持ち運ぶことができる。
内側から解除する方法は無く、術者は外から解除する方法を任意で設定できる。
主な利用方法は対人戦の場合は強力な即死魔法として。対モンスター戦の場合は有用な対象を生け捕りにして取引に使用するために行使される。




