第173話
赤い鬣亭に入ると・・・客層は随分と人相の悪そうな人間が目立つな
誰も彼も革鎧に物騒な武器を手に届く位置に置いてて、見ただけで暴力と腕っぷしが商売道具ですって主張してるのが分かる
そんなイメージの直後、クラウベルから≪通信≫が来た
『来たな。2階の左奥の席だ、そのまま上がってこい』
「・・・二階の左奥だそうです」
「オッケー」
階段を上がって2階・・・左奥の席はあそこか
言われた席にはかなり雰囲気のある女性が座っている。真っ赤なレザー製のロングジャケットにグレーのへそ出しタンクトップ、黒のズボンは同色のプロテクターらしい物が取り付けられており、靴も黒い厚底のロングブーツ。
黒髪黒目で日本人っぽい顔だが横一線に大きな傷跡・・・グラスを持つ手もバンテージが巻かれているがその隙間にはびっしりと傷痕が見える。
一回手をバラバラにした後で縫合して復元したって言われたら納得しそう
髪も前髪が邪魔にならないよう適当に切っただけのように見えるくらい不揃いなのに、全体でみると何処か野生的に見える。
「・・・来たか。はじめまして私がクラウベルだ」
「エリシアです」
「マーシャよ」
「まぁ座ってくれ。立地は悪いがここの飯はそう悪くない」
テーブルに並ぶ料理は・・・日本にあった料理にかなり似た見た目の料理だ。厚切りフライドポテト・・・っぽい厚切りの芋の揚げ物(ジャガイモじゃなくて紫芋っぽいのが使われてる)と蒸留酒。ウイスキー系かな
私達が席に座ると、クラウベルは酒を壁際に退かして話始めた
「さて。手短に話そう。私は鳴動竜王配下の竜種から依頼を受けて、悪魔武器の回収をしている」
「鳴動竜王・・・それで私の事を知ったんですか」
「この王都にやって来たのを知ったのは偶然だがな。私は傭兵として悪魔武器の破壊と回収を請け負う代わりに竜種から生え変わりで抜け落ちた鱗や牙を報酬で貰うって約束で悪魔武器を狩ってる。
そこで、この王都に悪魔武器の1つが入り込んだ情報を得たんだが・・・保管されているらしき場所が王城でな。傭兵の私じゃ入れない」
「王城に悪魔武器が?」
「誰がどうやって持ち込んだかは知らん。だが確かな情報だ。
王城に入って直接調べたいが、今王城とその周囲は戴冠式を控えてて警備が多くてな。強引に入り込んで調べたら持ち主が悪魔武器を使って被害が余計にデカくなる可能性が高い。
そこで、お前たちの協力者って事で戴冠式のパーティーに紛れ込んで城に入り込みたい」
「それが嘘で貴方が王城で盗みや悪事をしない保証は?」
「信じろって言っても難しいのは分る。だからコイツを預ける」
クラウベルが出したのは≪魔女の契約書≫・・・内容は記入済みか。
内容はクラウベルが契約から1週間は自衛以外の理由で悪魔武器所有者以外の人間への攻撃や財産の破壊を禁じる内容。ペナルティも結構重めに設定してるな。
鑑定結果は本物。私達がサインすればクラウベルは自衛以外では私達に危害を加えることはできない
・・・これなら信用は出来るか
「私以外にも竜種の依頼で悪魔武器を狩るヤツも現れてる。
竜種にとっては自分達から出たゴミで私達を雇えるなら安いってな」
うーん。竜種にとっては鱗だの抜け落ちた牙だのはゴミ扱いか。私も黄金よりそっちが良かったなぁ・・・
「引き受けても良いですけど、私達が城に入る理由は祝賀会の毒見や治療としてですし、伯爵に雇われているんで伯爵の許可を取ってからですね」
「そうか。・・・よし、その伯爵と話しをつけに行こう。紹介してほしい」
「いえ。≪通信≫でやり取りしましょう。マーシャさん隠蔽スキルお願いします」
「了解。≪密談室≫≪盗聴検知≫・・・≪介入迎撃:爆破≫」
マーシャさんが検知と隠蔽スキルを発動し、更にスクロールで攻勢防壁まで発動。私もそれに連動して迎撃魔法を行使
「≪迷宮障壁≫≪盗人への罰:苦痛の呪い≫≪介入迎撃:不治の呪い≫≪報復用意:5連続爆破≫・・・≪3倍魔法対象複数化≫≪3倍魔法範囲拡大≫≪通信≫」
普段使いならここまでやるかァ?って思うが相手は聖域・・・元プレイヤーだから盗聴系の魔法やスキルを張り巡らせるくらいやってのけるはず。
対策されて通信に介入したとしても、爆破トラップを張り巡らせているので流石に爆破って派手な効果を隠蔽するのは無理なはず。
発動を検知したら即座に重要な会話を打ち切って、爆破現場に向かえば敵が見つかるって寸法だ・・・王都内で爆発とかしませんように・・・
私の祈りが通じたのか、そもそも聖域勢力がこの王都に居なかったのか、介入の反応が無く、伯爵に≪通信≫が繋がった
「伯爵。エリシアです。少し相談したいことがありまして」
『相談?・・・大抵の事ならば聞こう。君たちには恩がある』
「では。・・・悪魔武器という呪物が王城に持ち込まれた可能性があります。
その事実を知らせた人が王城を調査したいと言ってまして・・・」
『・・・その人物は?』
「≪通信≫で会話を繋げてます」
「はじめまして伯爵。傭兵のクラウベルと言います。私は竜種、鳴動竜王の配下から依頼を受け、悪魔武器の破壊と回収を請け負った者です」
『竜種・・・!?本気で言っているのか?』
「証拠として、報酬に渡された牙を見せる事も出来ます」
『・・・その悪魔武器とやらが王城に有るとして、君なら対処できると?』
「危険な場合もあるので、戦闘になった場合は速やかに王城から離脱することをお勧めしますが・・・異世界人数人で挑めば最小限の被害に抑えられると思います」
『・・・詳しく話を聞こう。エリシア殿、私の屋敷までクラウベル氏を案内してくれ』
「分かりました」
会話は割とあっさり終わり、≪通信≫を無事終了させて盗聴防止の攻勢防壁も解除。維持するにはコレきついんだよね
「では。案内を頼む」
「えぇ分かりました」
私達はクラウベルを連れて伯爵の別邸へと戻る事になった
≪介入迎撃≫
種別:防御魔法/汎用
制限:防御魔法と攻撃魔法を習得できるLv10以上の魔法使い系クラス
属性:接続先の魔法に依存
射程:自己
形状:障壁
術者が後に行う≪通信≫を始めとした情報をやり取りするスキルや魔法を行使した時に妨害や改ざん、盗み見などを外部から受けた時にカウンターとして介入者をターゲットに魔法を発動させる魔法。
この魔法自体には攻撃性は無く、あくまで接続先にある魔法を条件下で発動させるための条件付けを行うための魔法。
維持し続けるためには発動時に接続先の魔法の消費MPを支払った後でその1/4を10秒ごとに支払い続ける必要があるため大規模な魔法を条件付けに選ぶと長時間の維持は負担がとても大きい




