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第168話

 新年が過ぎて1か月ほど経過。まだ冬の時期なので畑は定期的に手入れする程度しかやることが無く、村人や冒険者も寒いので出歩かない時期に意外な客が来た


「よ。エリシア」

「トールさん!?」


 パ・ブシカの街でラーメン屋やってるはずのトールさんが来た


「会いに来たのは用事が有ってな。1つはコイツだ」


 そう言って表にある荷車を指差す・・・積んであるのは以前に戦ったドッペルゲンガーの悪魔武器。琥珀で封印された状態のままだ


「コイツの解析をエルフに任せるって話に冒険者組合で決定になってな。封印解除と同時に俺らでぶっ壊して残骸をエルフに解析してもらうことにした」

「そのままだとまたコピー体が出てきますからね・・・破壊は賛成です。

 ただ、残骸はドラゴンに引き取ってもらいますね」

「お前ドラゴンに知り合い居るのかよ・・・後で紹介してくんね?」

「まぁ。その時になって都合が良かったらですね」


 ドラゴンとの通信手段はまだ無いが、残骸や悪魔武器を探知できるらしいしその内また来るだろう


「で、もう1個が・・・お前に依頼だそうだ」

「依頼?」


 トールさんが懐から取り出したのは・・・ネヴァン伯爵の封印が押された便箋

 貴族からの依頼かぁ・・・嫌な予感がするが、無視すると後が面倒くさそうなので見るだけ見る


 えーっと内容は・・・私でも理解できるように回りくどい飾り文章を切り捨てて要点だけ書いてくれてるな。

 戴冠式での毒見役と緊急時の医療処置の依頼か。

 どうやらあのゴタゴタの後で上級王は退位が決定し、今年の春に新たな王様が即位することになるとの事。その戴冠式の宴料理での毒殺対策として私の力を借りたいらしい。

 現状どこの貴族にも肩入れしておらず、能力が規格外に高く、貴族や権威に興味も無く、不埒な貴族からの脅しや取引に応じない性格で、そして王侯貴族へ暗殺を企てる『動機が無い』私が、一番無難だから・・・か


 まぁ。このゲイリーウッズ村、戦力だけ見れば現状人外魔境とも言えるかもしれない。

 一騎当千級のプレイヤーが数人住んでるから下手な貴族の軍隊なんて鎧袖一触だし、そもそもそこら辺の雑兵の群れ相手なら天使やマイコニド軍団で事足りる。

 設備や装備も整ってきたのでその辺のダンジョンが暴走してモンスターの大群が来ても迎撃できる自信があるし、エルフとかドワーフが大量移住してくれたから人材の層も分厚くなった。


 この村を脅せる存在となるとソイツはもう「魔王」とかそのレベルじゃないかな・・・


 王様を暗殺するにしても毒殺なんて面倒な真似せずともマーシャさんだけでも証拠も残さずスッと行ってサッと終わらせるだろうし、私でも超巨大化させた樹霊王でも突っ込ませればソレで壊滅させられるし・・・思う所は有っても、ぶっちゃけ暗殺したいとは思わないしなぁ


 報酬は・・・大金貨15枚と、鉄道建設に対してコネクションの援護、王室宝物庫にある魔法の品(マジックアイテム)を1つ贈呈・・・大盤振る舞いだな。普段からこれくらい気前が良いと助かるんだけど・・・


「返事は何時まで出せば良いですか?」

「早い方が良いって言ってたな。遅くても1か月以内に返事貰ってこいって言われた」


 ん~~~。条件付きで受けるか。

 私は紙に返信として「私の顔を見せない事」、「治療費用は患者か伯爵が負担」、「万全が欲しいなら追加費用次第で探知が得意なマーシャさん等も連れて行く」、「貴族と顔合わせたくないんで会場には姿を見せず別室待機」などの条件を書いてトールさんに渡す


 貴族のやり取りなんて知らんし、出会っていきなり「不敬だ跪け!」とか言われたら面倒この上ない。

 なら必要な時以外は姿を見せず、毒殺対策の監視と治療にだけ専念させてもらう方がマシだ


 貴族の相手は面倒だけども、何でもかんでも村内で完結できるわけが無く、他所から手に入れるなら貴族のコネが有ると何かと便利だ。

 封建制度がまだ根強いから、商人との取引もアポなし訪問より貴族からの紹介を受けた方が何かとウケが良いし


 最低限だけの付き合いをして、良い取引相手程度の距離感を保ちたい


 さて、返事を受け取ったトールさんと共に私は他のプレイヤー全員で村外れの平原に出て、封印解除を行う。

 封印状態だと悪魔武器は何もできないが、こっちも何もできないからね


「レーシアさん。封印解除と同時に≪魔法効果破壊≫をお願いします」

「えぇ。もしもの場合は、全員でもう一度・・・」


 軽く打ち合わせを終え、悪魔武器を覆う≪琥珀封印≫を解除。

 琥珀が樹脂と樹液に戻り、中身が外に出たその瞬間、悪意と言うか背筋が凍るようなあの嫌な雰囲気が噴き出た


「レーシア!」

「≪魔法効果破壊(ブレイクエンチャント)≫!」


 レーシアさんの≪魔法効果破壊≫が発動した・・・が

「!?抵抗(レジスト)されました!!」


 刀身に亀裂が入ったが、完全破壊されずドッペルゲンガーの悪魔武器がコピー体を創造。最初にコピーしたのは・・・マーシャさんか!!


『≪隠密不可視化(ミラージュ・ハイド)≫』


 !!透明化のスキルか!悪魔武器を持ったコピー体の姿が蜃気楼のように揺らぎ始める・・・が、それを阻止したのはタカオ君。

 ダッキングによってスキルで完全に姿を消す前にコピー体を()()()


「≪組み伏せ≫ッ!」

 そして即座に相手を地面に押さえつけて身動きを封じる≪組み伏せ≫を発動!

 打ち合わせしたとはいえ、即座に動いてくれて助かった


「うぉ!長くは持たなそう!」

「全員で押さえつけろ!」

 激しく暴れる悪魔武器とコピー体を前衛組が総出で押さえつけ、その隙に詠唱を終えた私とレーシアさんが魔法を行使


「「≪魔法効果破壊≫!!」」


 私とレーシアさん二人掛かりでの≪魔法効果破壊≫を受けて、流石に抵抗できなかったのかようやく砕け散った・・・なんてタフなヤツ

野伏(レンジャー)

系統:探索系基礎

主武装:特に制限なし

自然環境での探索や追跡、狩りを得意とする探索型クラスの一種。

薬師クラスほどではないが薬草の知識や薬の知識、狩猟関連の技能や知識、動物やモンスターの探知や追跡、即席の罠やシェルターの作製など幅広い便利系スキルを習得、使用できる。

単体で多くの便利系スキルが習得できるため、エルドラド・クロニクルプレイヤーの中には空いた枠でとりあえず習得してる場合が多い

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― 新着の感想 ―
まぁ、貴族相手はね。 王都周辺で既に力量差を見分けられずに不敬だ何だと食って掛かられてるから関わらずに済むならその方がお互い気持ちよく過ごせるよねって。 厄介なドッペル剣も、幾ら相手を完コピできても…
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