閑話14「とある貴族令嬢の話」
私はヒルデガート・キララダ=ヴェリンス。
聖帝国の由緒正しきヴェリンス家侯爵令嬢
今日は名門貴族学園であるコペストピー貴族学院への入学式。
今年から5年間、この学園で貴族としての立ち振る舞いやあらゆる教養、そして社交界の人脈を学ぶため・・・そして、私の婚約者である第3皇子との仲を深めるため、学院に入学します
お互い、政略結婚だと分かってますが、生涯を共に過ごすのに険悪ではいけません・・・この5年間の学生生活を通じて皇子の好みや性格、その他全てを理解し、彼との婚約を万全な物にしなくては
気持ちを新たに、学院の正門を潜ると私の婚約者、第3皇子のヴィクトル殿下とその友人たちが見えた
「殿か・・・ッ!?」
近づき、殿下に声をかけようとしたその時、ヴィクトル殿下の隣に見るからに「不審者」が居た。
肥満体の身体に黒縁の眼鏡、そしてどう見ても同世代に見えないくらいの中年男性の見た目でその恰好は真っ赤な下着1枚だけの不審者ッ!!
なぜこんなにも人が居るのに誰一人この不審者について誰も言及しないの!?
「おや、ヒルダ(私の愛称)。おはよう・・・どうしたんだい?顔色が悪いようだけど」
「え、あの。殿下・・・?その・・・そちらの方は・・・?」
まさか何かの間違いと思い、不審者に指を向けると
「?あぁ、君とは初対面だね。紹介するよ、さっきそこで知り合ったスギモト君だよ。僕達と同学年だって」
嘘でしょッ!?
「あ、あの。殿下・・・彼のその姿は・・・?」
「あぁ。彼は異国からの留学生だからね」
異国だからと言ってその恰好はいかがな物かしら!?
「初めましてヴェリンス家侯爵令嬢。スギモトと言います。よろしく」
「ヒッ」
彼が握手を求めたと思うが、手を伸ばした時に思わず小さい悲鳴が出てしまった
「す、すいません。少々用事を思い出しました!失礼いたしますわ!」
私はその場から逃げ出した。
なんで!?なんで誰も彼のあの異常な格好に疑問を抱かないの!?
・・・まさか。最近噂になっている『悪魔武器』と呼ばれる恐ろしき道具の仕業・・・!?
それで殿下達を操って・・・!?
・・・護らなければ。貴族一員として、君主の血筋に列なる彼を・・・!
廊下に張り出されたクラス表を確認すると、殿下と同じクラス。
・・・そしてあのスギモトまで同じクラス・・・ッ!!
教室内でもスギモトの異常な格好は誰一人として疑問を抱いていない。
どういうことなの・・・!?私以外に誰も彼を異常とは思っていないの!?
・・・こうなったら、私独りでも解決しなければ・・・!
決断は済ませた。放課後に私は寮に持ち込んだ短杖を持ち出し、スギモトへの襲撃を決意。
あのような不審人物を殿下の近くに置くわけにはいかない・・・!
男性寮の近くに張り込むと・・・来た!都合よく一人だけ・・・!
素早く物陰から飛び出し、スギモトの背後をとって背中に杖を向ける
「動かないで・・・!」
「むっ・・・!ヴェリンス嬢、いったいどういうつもりで・・・!」
「とぼけないで。どんなまやかしを使ったか分かりませんが、私には貴方の本性は見えてましてよ・・・!」
先手必勝の決意で魔法を詠唱
「!?・・・ま、待った!」
待ちませんわ!食らいなさい!
「≪炸裂火球≫!」
「ぐわっ!?」
直前に彼の抵抗を感じ私の魔法が爆発・・・爆炎と煙が晴れると、スギモトは小さく火傷をしただけでほぼ無傷。威力をほぼ封殺された!?
「待った!話を聞いてほしい!」
「うるさいですわよ変態!」
「変態は認める!だが誤解だ!」
「どう誤解の余地があると言うの!!」
「私はこういう者だ!」
彼が何もない空間から何かを引っ張り出すと・・・マント?
マントに刺繍された紋様は・・・聖帝特務騎士!?
聖帝国どころか北大陸各国から選りすぐりの超人を引き入れたエリート戦闘部隊。入団試験だけでも希望者の8割はリタイアか再起不能が当たり前の超精鋭部隊・・・それが・・・
「なんで変態がそのような物を!?」
「俺は特務騎士だ!任務で学院に潜入護衛しているんだよ!」
「護衛・・・ならなんでそんな恰好をしているの!この変態!」
「幻影魔法で成りすます関係上・・・衣服のような装備まで幻影を纏わせるのは負担が大きいからだ。
出来るだけ何も身につけていない状態で幻影魔法を被ることで長時間も高度な幻影を維持できる」
「・・・」
すごく疑わしい・・・
「・・・分かった証拠をもう一つ出す。これだ」
そう言ってスギモトが出したのは特務騎士の証である受任勲章。そして皇帝陛下の消印がある命令書・・・認めたくないけど・・・本物ね
「まさかLv100の「幻術使い」の幻影を初日で看破されるなんて・・・マジか・・・学生程度なら余裕のハズなのに」
そう言って彼は自信を喪失したのかその場で膝をついて落ち込んだ
「残念でしたわね。私には『真実の祝福』が有りますの。
あらゆる幻術や幻影、変身を常に見抜くことができますのよ」
「祝福持ち・・・しかも看破特化系か。レベル差無視して見抜くとか理不尽だろ・・・
だが、誤解しないでほしい・・・俺の任務はヴィクトル殿下の護衛。
そして『悪魔武器』への備えとして潜入しているんだ」
「ホントに?」
「ホントだ。最近になって悪魔武器、そしてそれを生産する『聖域』の活動が非常に活発化している。今までは存在すら確認できなかった正規メンバーが姿を見せて破壊活動をした報告も上がった。そこで、一番潜入任務に適した俺が派遣されたんだ」
・・・心の底から疑いたいが・・・真実の祝福には彼が嘘を言っている反応は無い・・・本~~~~~ッ当に認めたくないけど
「・・・一応は信じましょう。ですが、そのような格好で二度と私の視界に入らないように」
「・・・分かった。誤解させて済まない」
その後、スギモトと別れて寮の自室に戻った。全く特務騎士と言うのは変態の集まりだったの・・・!?
次の日
「おはようございます。ヴェリンス嬢」
全身タイツでスギモトが登校してきたので、私は≪炸裂火球≫をスギモトの顔面に叩き込んだ。
やっぱり変態じゃないの!!
≪幻術使い≫
系統:魔術師系派生
主武装:「短杖系武器」「発動体効果装備」「衣服装備」
習得魔法系統:共通魔法全般、幻術魔法、精神操作魔法、等
魔術師系の中で幻術や幻影などの精神操作系の魔法に特化した系統。
共通魔法を除いて直接的な破壊力のある魔法は使えないが、幻術や幻影の魔法を駆使して隠密行動や乱戦での混乱や同士討ちを狙うなどの搦め手を得意とする。
非常に癖が強い魔法が多いため、極めたならば対多数に対する強力な切り札にもなり得る




