第13話
「俺の記憶違いじゃなかったら、エリシアさんだよな?その姿と装備」
「はい。・・・急に魔法使ってスイマセン、正体を抜くのにコレが一番手っ取り早いと思って」
悪気は無かったが、敵対行動と誤解されるような行動をしたので頭を下げる。
「いや、良いんだ。今のは人物看破だろ?抜かれて困るステータスしてないから良いけどよ・・・相変わらず対人は苦手らしいなぁ! 対人で看破系使うなら探知阻害と防殻貫通を併用しろっていつも言われてんのによ!」
うぐぅ!お、おっしゃる通りです。
笑われてしまった・・・。まぁ不用意に看破しようとしたらそうなるよね。
「ロージーもナイフ仕舞え、俺の仲間だコイツ」
トールさんに言われてロップイヤーの店員・・・ロージーもナイフを下ろして鞘に納める。
あっぶなぁ、まだ睨んでるし・・・。ホントゴメンって。
「二人も落ち着いて、多分大丈夫だから」
壁に立ててある短槍に手を伸ばすマイコニド2人を止めておく。
「ちょっと待ってろ、暖簾下ろしてくるからよ」
そう言ってトールさんは表の暖簾を下ろして戻ってきた。
「ロージー、紹介するぞ。 エリシアだ。
前に俺が話してた仲間の一人で、魔法薬とか作ってたヤツ。
で、エリシア。コイツはロージー、兎人って種族でウチの店員だ」
「どうも初めまして」
「は、初めまして」
すっごい不機嫌そう。
「連れてるのはマイコニドか。って事は今は庭師の魔女か?」
「はい。生産寄りの魔女系です」
「俺は今、ほとんど純戦士系でな、やっぱ魔法使えねーのキチーわ」
トールさんの習得クラスは確か戦士系クラスが多かったけど今も戦士系か。
純戦士系って事は魔法系クラスは1つも入れてない状態か。
「トールさんビルド聞いても良いですか?」
「抜けてないのかよ。まぁ良いけどさ。
えーっと・・・
『戦士』20
『剣士』20
『侍』20
『剣豪』15
『大剣豪』10
『料理人』10
『屠殺者』5
・・・のトータルレベル100」
うーわ、ゴリゴリの物理アタッカービルド。
しかも戦士から侍までレベル20させてるし最上位クラスの『大剣豪』まで習得してる・・・。
料理人と屠殺者が申し訳程度にあるのは・・・何かの素材集めとかかな?
確か屠殺者のスキルで革と肉のドロップ率を操作できるスキルがあった気がする。
「私は『魔女』15、『上級魔女』13、『薬学の魔女』13、『庭師の魔女』13、『占い師』10、『農夫』13、『薬剤師』13、『ポーションマイスター』10・・・ですね」
「半分は非戦闘系クラスで、魔女系統も魔女と上級魔女抜いたら生産サポートクラスか・・・。
いや、こっちの世界だとむしろこれくらいの方が暮らしやすいのかもな」
やはりトールさんもこの世界は異世界だと考えてるのか。
「トールさんは、いつからこの街に来たんですか?店とかあるし」
「あー大体2か月くらい前だな」
二か月!?私はまだこの世界に来て1週間も経ってない。
「私はまだこの世界で1週間も過ごしてないですよ?」
「って事は俺らがこの世界に来るのはだいぶズレてる・・・って事か?俺はこの世界で3か月くらいだ」
そこからトールさんはこの世界で目を覚まして街に来るまでの経緯を話し始めた。
「ゲーム中にいきなり寝落ちしたって思ったら、気が付いたらなーんも無い草原のド真ん中で気が付いてよ、恰好はゲームの装備で何だこりゃ!?って訳も分かんねぇ中、草原を彷徨う破目になってよ。
夜は真っ暗で何も見えないし、モンスターは襲ってくるし、道は分からねぇしで大変だったわ。
料理人スキルで倒したモンスターを料理したりして、何とか食いつなぎながら草原を歩き回ってたら、偶然ロージーが居た獣人族のキャラバンに拾われてよ。
モンスターから剥いだ毛皮とかを現地の金に交換して、街まで一緒に過ごしてたんだ。
その後、まぁーアレだ。なんだかんだ色々あってロージーとこの街でラーメン屋することにしたんだ」
最後端折りすぎ!
「で、そっちはどうだったんだ?」
「私の方は・・・」
とりあえず、私もこの世界で目を覚ましてから経験した事を掻い摘んで話した。
「なるほどなぁ。北の村じゃゴブリンがそんなに出て来てるのか」
「ほとんど毎日10体前後来てますね。そのたびにマイコニド達で迎撃してますけど」
「この辺のゴブリンはゲーム基準だとレベルが10以下ってトコだから、数さえ上回れば村人でも対処できる脅威だって話だが、毎日10体以上ってのは異常だな」
「ゴブリンが毎日来て、建物もボロボロ怪我人も多かったんですよ。全員治しましたけど」
「それで金巻き上げてたんかよ、異世界でも現金なヤツだなお前。
偶然とはいえ、会えてよかった、もう二度と他のメンバーには会えないと思ってたからな」
「私とトールさんが居るって事は、あの日にログインしてたメンバーも来てるんでしょうか」
「さぁな。あの日ログインしてたメンバーは俺たちを含めて全員で24人。
来てるとしても時期がズレてる可能性が高いな」
やっぱりかー。
「おっと、そういえば資金調達の途中だったか。
ポーションの売り先なら俺に任せてくれないか?」
「トールさんが? 一体どうして」
何かツテでもあるのだろうか?
「この店は冒険者もよく来るんだ。
生傷が多い連中だから、ポーション類はバカ売れするぞ」
冒険者か。確かに危険が多そうな仕事だし、下級傷病治癒程度でも金は取れそう。
「では、今夜はここを借りて良いです?」
「奥のリビング使え。 客は俺から声かけておくからよ」
やったね
「場所代は売上の半分くらいで良いぞ」
チッ。場所代は取るか
「分かりました。 治癒系魔法の相場知ってます?」
「あー。確か聖堂の僧侶がやってた下級傷病治癒が1回大銅貨7~8枚くらいだったか?」
えっぐぅ!?僧侶なら下級傷病治癒程度なら低レベルで習得できるでしょ!?
「ウチは大銅貨5枚でやりましょう」
レベル100の私はMP総量も回復速度も低レベルとは違うのだよ
私は夕方頃に再びトールさんの所に戻ると約束して、宿に戻ることにした。
≪魔法範囲拡大≫
種別:魔法補助スキル/共通
制限:魔法系クラス
属性:使用魔法に依存
射程:使用魔法に依存
MPを倍数消費して魔法の効果範囲を拡大するスキル。
予め倍数を宣言することで次に発動する魔法の効果範囲を拡大し、通常より多くの対象へ影響を与える。
この時、倍加した効果範囲に比例してMP消費量も倍加する。
最大5倍まで倍加可能。