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第12話

「いらっしゃいませー!」


 扉を開けて暖簾を潜ると、店員らしき人物から元気な挨拶。

 ただ、人間ではない。

 ロップイヤーと呼ぶべきだろうか、肩の辺りで切りそろえた茶髪に髪色と同じ毛で覆われた垂れ長の兎の耳をした種族。

 それ以外はぱっと見人間の姿。エルドラド・クロニクルではプレイヤーは種族が人間で固定だったから、異世界人だとしてたら彼女はエルドラド・クロニクルプレイヤーではなさそう。


「3名様ですか?」

「えぇ」


 店内は結構狭い。

 4人用のテーブル席が2つと7~8席くらいのカウンター席。

 カウンター席の向こう側では誰かが調理中なのが分かるがここからだと顔が見えない。

 一番奥は扉で閉ざされている、が多分あそこから厨房やバックヤードに入るのかな。

 中に居る客も居ない。そういえば、今はお昼過ぎで昼食の時間からは少し外れた時間帯だからかな?


 ロップイヤーの店員に促されて、4人用テーブル席に着く。

 メニュー・・・は無いみたいで壁に貼られた品書きには『塩ラーメン』と『鶏のから揚げ』だけ。

 金額は・・・塩ラーメンが大銅貨2枚。鶏のから揚げが1皿大銅貨3枚。


「二人は何か食べる?」

「よろしいのですか?」

「我々は1日2食で事足りますが」

 そういえば村でのマイコニド達の食事は昼食は食べずに朝と夕方の2回だった。

 今は村での食料調達が安定してないけど、余裕が出来たら1日3食食べさせないと。


「塩ラーメン3人分お願いします」

「はい!塩ラーメン3人前ですね!」


 とりあえず目の前のマイコニド2人にも塩ラーメンを食べさせよう。

 財布の中身はまだギリギリ余裕がある。

 注文を受けたロップイヤーの店員はドアを通ってオーダーを通しに行った様子。


 待っている間に、カウンターの向こう側の調理場を覗き込んでみる。

「塩ラーメン3人前お願いしまーす」

「あいよ」

 声からして・・・男性っぽい。

 規則的な包丁で食材を刻む音から、手際はかなり良いと判断するけど。

 お、後ろ姿が見えた。黒髪の短髪・・・肌は健康的な褐色。

 声と体格から判断するに歳は・・・20代くらい?

 看破系の魔法で暴くべきだろうか・・・。いや、敵対されたら困るしせっかくのラーメンを食べ損ねるのは困る。

 ・・・看破はラーメン食べ終わってからにしよ。


 すこし時間が経過して、ラーメンが運ばれて来た。

「お待たせしました!塩ラーメン3人前です!」


 油が浮いている透明なスープに麺と刻んだ野菜、鳥肉のチャーシュー?が乗ったシンプルなラーメンが出て来た。

 あと、木を削ったらしい箸とレンゲ、フォークもあった。


 私は箸でラーメンを一口食べる・・・。美味い!

 この世界で今まで食べた料理は微妙だったが、コレは日本でもお金が取れるレベルで美味い!

 麺は太目で多分手打ちと思う。製麺機なんてあるとは思えないし。

 シッカリとコシが有って食べ応えがある。

 チャーシュー!コレは・・・なんだろ?鶏じゃ無いのは分かる。

 でも鳥肉系のチャーシューかな。村だと肉の大体は塩漬けか燻製でガッチガチに硬く乾燥させたヤツばっかりだから柔らかい肉は久しぶり・・・!

 野菜!ちゃんとシャキシャキしてても芯まで炒めてあって柔らかい!

 スープも味がちゃんと付いてて、マトモに飲める!


 うーーーーーまーーーーーいーーーーーーーぞぉーーーーーーーーー!!!



 ・・・ふぅ。夢中になってスープまで飲み干してしまった。

 マイコニド達は・・・おぉう凄い夢中で食べてる。

 うんうん、分るぞ、焦らずゆっくり食べなさい。


 確信した。この味は日本の美食を知っている人間じゃ無ければ作らない味。

 そして・・・。


【美食効果】

 HP+30%

 HP回復速度+10/s

 スキルクールダウン-5/s

 筋力+20%UP

 生命力+20%UP


 強力な美食ボーナス。おそらく『料理人』クラスが習得するスキル『医食同源(バイタルレシピ)』の効果。

 エルドラド・クロニクルでは『料理人』が制作した料理を対象が食べると、食材に応じて様々なボーナス効果を受ける。

 通常の『料理』でも僅かに食材の特殊効果を得られるが、『医食同源(バイタルレシピ)』が有ればさらに強力な食事効果を得られる。

 多分、それ以外でも制作補助スキルを併用してる可能性は高いが・・・。

 確信した。料理人はエルドラド・クロニクルプレイヤー、多分レベルからして最低でも50以上で私と同じレベル100でも可笑しくない。


 バレないように店員が掃除している隙を見て、店主であろう料理人に杖を向ける。


「≪人物看破(アプレイザルパーソン)≫」

 杖の先に展開された魔法が店主に放たれ、途中で『打ち砕かれた』。

 しまった情報防殻(セーフディテクション)か・・・! 装備に防御系の魔法が付与されていたのだろう。

 今ので私が魔法を使ったのがバレた!


 魔法が砕かれたのと同時にロップイヤーの店員がエプロンからナイフを抜いてこっちを睨む。

 それを見て私の隣にいたマイコニド達も私の前に立ちふさがる。

 マズイ、言い訳のしようも無い。


「待て、ロージー」

 睨み合いを執成したのは調理場から出て来た店主。

「俺の知り合いかもしれねぇ」

 顔を見て、ようやく彼の正体が分かった。


「お久しぶりです。 ToRL(トール)さん」

 我らがギルド≪マグナ・アゾット≫のギルドマスター、ToRL(トール)さん。

 ゲームで見たアバターの姿にそっくりだ。

≪人物看破≫

種別:情報魔法/制限

制限:占い師、一部の斥候系

属性:情報

射程:0~10m

形状:射撃

対象の人物の正体や能力を見破る魔法。

スキルでの変装や魔法による変身を貫通し、正確な名前と能力を暴き出す。

看破できる情報は『名前』『各能力値』『習得しているクラス』『カルマ値』。

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― 新着の感想 ―
ここでギルドマスターとの再会は熱いな、でもギルドマスターが料理人をやってるのは珍しいな。
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