第118話
ようやく魔剣は封印され、無力化を確認した。
琥珀から取り出さない限りは、何もできないだろう。
「で、肝心の使い手とか複製体は全部塵になっちまって証拠が魔剣だけかよ」
「元々は使い手が居て、ドッペルゲンガーの性質らしく成り代わったんでしょうね」
ドッペルゲンガーは相手に化けて成り代わる事を目的とする魔物だ。
それは使い手であっても同じだったと言う訳か・・・
「この状態じゃ破壊とか・・・」
「無理ですよ。≪魔法効果破壊≫は封印されてる状態では効果を発揮しないんで」
「物理的にぶっ壊そうにも、やたら頑丈だったっすねコレ」
前衛組の攻撃を何回も受けたりしてたが、確かに壊れるような素振りは無かったな。おそらく完成度という面では今までの物とは違ったのかもしれない
「とりあえず、コイツは冒険者組合で解析してもらうか。
呪いの武器って説明しとけば、封印を解く真似しねーだろうし、そもそも在野で解けるヤツ居るかも怪しいが」
「じゃ、報酬出たら届けなさいよ」
トールさんは魔剣を封じた琥珀を持ち上げ、無造作にインベントリ空間へと押し込んだ。
私達もそれを見届けた後、トールさんと別れて村へと帰還することにした。
「たまにはラーメン食いに来いよ」
「交通の便が改善したら気軽に行くわ」
何年かかるか分らないけど
◆
村に帰還し、ペロリさんには大雑把に事のあらましを説明。
「そう。ひとまずコピーされた私のスキルや魔法が使われずに済みそうで良かった」
対面に居なくても、複製体と相対した相手の技をコピーできる破格の魔剣だった。
装備の質や人数によるゴリ押しが無かったらきっと被害が出てたはずだ
さて、村で暮らす事となったペロリさんに早速家を手配しようとしたのだが
「空き地で良いわ。家は自分でどうにかするから」
と言ったので、土地を紹介したら
「≪家屋召喚:月兎麗館≫」
召喚魔法で辺境のド田舎に似合わない月の光を思わせるような白い輝きの外壁が映える豪邸が召喚された。
そういえば便利系召喚魔法はこの人が一番得意だったな・・・
月兎麗館は月の都と呼ばれる街で購入できる高額物件で、追加オプションを10個設定できる中規模の総合拠点。
たしか、ペロリさんが設定してる追加オプションは、「空間拡張」「自動迎撃用石像」「永続熱源」「出張商店」「ハウスメイド」その他もろもろ。
召喚士系統の魔法なら家の1つは召喚できるのは知ってたが・・・コレは目立ちすぎと思う。
「ここに子供達と一緒に住みますね」
「それは自由にしてもらって結構ですけど・・・。
物件機能の一部は私達も使っていいですか?」
高額物件に追加できる物件機能は、エルドラド・クロニクルのサービスを受け取れる機能だ。
家の中でNPC商店で買い物したり、銀行の貸金庫にアクセスしたり、有料課金サービスに接続だってできる。
戦闘中以外なら、あの館の中では資金が許す限りほとんど何でもできると言ってもいいかもしれない。
「大丈夫よ。後でその部屋は手前に持って行くから、使う時は声をかけてね」
これ高レベルの召喚士系はこっちの世界じゃヌルゲー確定だな。
「ヒャッハー!ガチャの時間だァーッ!」
ペロリさんの許可が出て、さっそくガチャを引こうとアキヒト君が課金サービスの部屋の扉を開け10秒後、涙を流しながら出てきた。爆死したか?
「こっちの通貨じゃ課金できなかったっす・・・」
「あー・・・」
どうやら課金サービスは日本円しか受け取らないの一点張りで交渉の余地も無かったそうだ。
当然、アバターの姿でこっちの世界に来た私達に日本円なんて持ってない。
「エルドラド金貨は?」
「NPCショップ覗いたら普通に使えたっす。
ただ、こっちの通貨は受け取ってくれなかったっす」
なら、物品をエルドラド金貨に替える事は可能か。
ちょっと手間だが、物資がある限りエルドラド金貨が尽きることは無いと考えて良いだろう
「あと、銀行機能も使えたっすよ!これで金庫に預けたアイテムも使えるっすよ!」
それは一番いいニュースだ。
エルドラド金貨は金貨というだけあってそれなりに重いしかさばるし、PKに襲われると奪われやすいアイテム。
なので、殆どのプレイヤーはPKに狙われても大丈夫なように不必要な金貨やアイテムは大体銀行の貸金庫に預けるか、ギルドか個人の拠点にあるストレージボックス行きだ。
だが、こっちの世界ではエルドラド金貨を扱う銀行なんて存在しない。
ペロリさんの物件機能なら、世界の枠を飛び越えてエルドラド・クロニクル時代にかき集めて貸金庫に保管したアイテムを取り出して使うことができる!
「ん。これでエルドラドの素材が使える」
「市場に流しちゃダメですよ。こっちの世界じゃ経済ぶっ壊れるアイテムばっかりなんで」
「エリシア、整理してたら多頭毒蛇のレアドロップ出てきたけど要る?アンタの弟子の育成に使えると思うけど」
「ちょっとレベルが足りないと思うんで、置いててください」
「あ、コレ懐かしい!これ出すのにダンジョン2桁周回したなぁ・・・」
「服とかアクセも交換できるから、助かるわ」
ペロリさんはこれらを担保に、この村で子供達と穏やかに暮らすつもりらしい。
私としても、エルドラド・クロニクルのサービスを受け取れるこの人の拠点は絶対に手放せない。
とりあえず、ペロリさんの住居を孤児院として扱い、村の運営資金から孤児院への運営資金を回して、ペロリさんはそこの運営者という扱いにさせてもらった
≪家屋召喚≫
種別:召喚魔法/物件召喚士専用
制限:購入した物件のみ
射程:召喚する物件の面積に依存
自身が過去に購入した物件を召喚する魔法。
NPCから購入する。もしくは有料課金サービスで入手した物件を戦闘時以外の任意のタイミングで召喚できる。
購入した物件のランクに応じて追加機能を購入、付与することが可能。




