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第10話

 交易都市『パ・ブシカ』。

 なだらかな丘の頂上には石の要塞、その周りを街が取り囲み、街の外周は丸太で作られた防壁で囲まれた都市。

 この辺り一帯の村落と街道を結ぶ中継地点で、元々は狩人たちの聖地だった場所に商人や職人が集まって町が形成された・・・と、道中の世間話でユルデンス夫妻が教えてくれた。

 過去の戦乱で何人もの豪族や貴族の手に渡り、現在は領主『ネヴァン伯爵』が一帯の村落と同時に統治しているとの事。


 街に近づくと、革鎧と剣だとか槍、弓といった武装した集団とすれ違う。

 彼らの首やベルトには同じ金属のタグのような物をぶら下げている。

「・・・彼らは?」

「冒険者でしょう。 この辺りは森が豊かで狩りの獲物には困りませんし」

「ゴブリンの討伐も受けてくれればいいんだけれど・・・。報酬がねぇ」


 あれが冒険者か。

 そういえば村でも『冒険者か?』と聞かれたけどそもそも冒険者とはなんぞや。

 気になったのでアーリーさん(ユルデンス夫妻の夫の方)に聞いてみる。


「冒険者って狩人のこと?」

「いいえ、冒険者は狩人とは違います。

 狩人は領主から認められた狩場で肉と毛皮を納めますが、冒険者の仕事は魔物が潜むダンジョンの探索と攻略が仕事ですよ」

「でもさっき狩りって言ってたけど」

「ダンジョン攻略には多額の資金が必要なんです。

 そして、ダンジョンから生きて成果を持ち帰れるのは僅か一握り。

 大抵は赤字だったり、成果を得られずに帰還する者がほとんどですよ。

 そして、攻略できるほどの資金が得られるのは貴族や大商人の後ろ盾を得られた冒険者だけ。

 そのため、多くの冒険者は副業として組合が出す賞金目当てに魔獣やモンスター退治を請け負うんです。

 モンスター退治で腕前を示せば、何処かの貴族や商人が支援する事もあるそうですよ」


 そう聞くとシビアな世界だ。

 ダンジョンには興味はあるが、わざわざ危険を冒すほどのロマンは今のところ感じないし、せめて私が売るポーションが彼らの助けになる事を祈っておこう。


「パ・ブシカの街は近隣の村や冒険者が狩った毛皮や革製品が他所で評判だそうですよ。

 特に、冒険者が狩る魔獣の毛皮は服屋としてぜひ触ってみたいものです」

 そういえば村の服は木綿か安っぽい革の物だけで、モンスター素材だったり魔法付与された服は見なかったな。


 暇を見つけたら適当な魔獣型モンスターを倒して、アーリーさんに仕立ててもらおう。


 防壁の門にたどり着くと、番兵らしき人たちが3人近づいて来た。


「そこで止まれ。積み荷を調べさせてもらう」

 止まれと言われたので、停止すると1人が荷車の中をチェックしている様子。

 残りの2人は木板に張り付けた羊皮紙に何か書き込みながらユルデンス夫妻に質問を投げかけてくる。


「積み荷は?」

「村で作った木炭と木工品、糸と布。残りは移動用の水と食料とテントと毛布だけです」

「パ・ブシカへの目的は交易か?」

「はい」

 質問の途中で積み荷を調べていた兵士が戻って来て報告

「班長。木箱の中身は申告通りです」

「よし。 ・・・ところで、そこの者達は護衛の冒険者か?」

 班長と呼ばれた男がコッチを見てきた。

 冒険者って護衛とかするんだ。

「護衛だけど村の住人よ。 武装は自衛のためだから気にしないで」

「確かに、近隣の村落でゴブリンの襲撃が頻発している報告は受けている。

 現在、伯爵が討伐隊を編成中だ。 腕に覚えがある者は志願してみると良い」


 討伐隊ねぇ・・・。そういう事は冒険者とやらに任せておきたい。


「問題は特に無いな。 では、パ・ブシカにようこそ」

 班長さんがそう言うと防壁の門が開き、パ・ブシカの街に入る事ができた。


 パ・ブシカの街はゲイリーウッズとは比べ物にならないくらい活気がある。

 軽食や野菜、果物を売る露店。砕石で舗装された道路。何台も馬車が行き交う大通り。

 道行く人々だが、街の入り口近くでは冒険者風な人々が目立つ。

 大通りを通り、街の中心地に近づくにつれて職人や商人のような人物が目立つようになってきた。


「エリシアさん、この先にある『ピクシー・ドランク』という宿で部屋を取ります。

 その後、交易組合に商品を引き渡すのでその間に皆さんは荷車を見張っててください」

「分かりました」


 ピクシー・ドランクという宿の看板は2体の妖精が酒樽から酒を飲むイラストが掲げられた宿。

 1階の酒場からは昼間だというのに酒の匂いがする。

 従業員に裏手の厩舎へ案内してもらい、馬車を停める。


「では、交易組合へ行って荷物を引き取りに来てもらうので待っててください」

「はーい。気を付けて~」


 さて、荷物を見張っている間に暇つぶしでもしていようかな。

 暇つぶしその1。『しりとり』

 アカネとマイコニド達を呼んで6人でやる。

「しりとりの『り』からスタートね」

 アカネにそう振ってスタート

「リ・・・リ・・・ 『リキュポグロ』」

 なんだそれ。名詞?

「『ロキャーズムンギャラ』」

「『ララピットポポコッカ』」

 次々と訳の分からない名詞のような物がマイコニド達の口から出てきた。

 え?何?マイコニド語?マイコニドしか通じない何かの名詞?

 その後真菌の兵士達3人が同じような意味不明の単語を続けて答え・・・

「『チャーチャームンクー』」

「次、『ク』ですよ」

 私の番か

「く・・・『くじら』」

『くじらって何ですか?』

 マイコニド達が口を揃えてクジラについて聞かれてしまった。

 なんで訳の分からない単語は知っててクジラを知らないの!?


 マイコニド達の知識はちょっと私には分からない事だらけで、しりとりはお互いに知らない単語を教え合いながら進めるうちにユルデンス夫妻が交易組合の人を連れて戻って来た。

≪魔法習熟:魔女≫

種別:技能/魔女専用

制限:魔女クラス習得

属性:強化/常時発動

射程:自身

『魔女』のクラスで習得できる魔法の効果向上とMPコストを軽減する常時発動スキル。

魔女クラスの魔法全般に作用するため、魔女派生のクラスで習得する魔法にも対応する。

エルドラド・クロニクルでは『習熟』系のスキルは習得必須の基本スキルであるため、どこのプレイヤーでも必ず習得を運営から念押しされる。

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― 新着の感想 ―
一応マイコニド達ってクリーチャーのはずなんだけど全く気にされないってことはほぼ人間同様の見た目なのかな? マイコニドの話してるのはゲーム世界の話なのか、それともこの世界の話なのか、はたまたマイコニド…
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