第96話
猫の特急切符は屋内では使えないので、寺院の外で取り残された人たちの脱出準備が終わるのを待つことにした。
「ん?」
待っている途中で、マーシャさんが何か感じ取ったのか周囲を見回し始めた
「マーシャさん?」
「シッ」
静かにしろとハンドサインされ、黙って様子を見ていると
「・・・そこ!」
内ポケットから投げナイフを投げつけ、見えない何かに刺さった
透明化していたソレが姿を現すと、なんだアレ!?小動物っぽいツギハギゾンビ!?
「死肉人形ね。不死者じゃないから結界をすり抜けてきた!居場所がバレてるわ!」
その直後に轟音。地雷のルーンが反応したのか!
「レーシア!荷物を纏める時間は無くなったわ!人だけでも急いで運ぶ!」
「えぇ!?いや、そんな事言ってる場合じゃないか!皆さん!荷物は諦めてください!アンデッドが来ます!」
私もチケットを破いて猫の特急列車を呼び出す。
汽笛が響き、機関車が姿を現すが同時に南の方向から、魔法も知覚。
かなりデカい!≪茨の壁≫じゃ持たないレベルか!
「≪3倍魔法範囲拡大≫!≪庇護の庭園≫!」
射線上に割って入り、3倍範囲を拡大して≪庇護の庭園≫を発動させて防御すると、強烈な負のエネルギー攻撃がビーム砲のように飛んできた!
レーシアさんが張ったルーン結界の投射除けで2割くらい減衰したっぽいが、残りは突き抜けて寺院に突っ込んでくる!
「≪烈風牢≫!」
遅れてアキヒト君が風の結界を張ってビームの方向を寺院から逸らしたおかげで、庇護の庭園で守りきれたが・・・破壊力と射程がエグすぎる・・・!
まるでくり抜かれたかのように地面や木々などの障害物諸共消し飛ばされて、下手人の姿を確認できた。
「ドラゴンゾンビ・・・しかも巨大種・・・!」
ゲームで見たドラゴンゾンビ、通常の個体よりさらに巨大で強化が施された巨大種ドラゴンゾンビのブレス・・・!
「ドラゴンゾンビのブレスってクールタイムどれくらいでしたっけ?」
「確か3分掛からないと思う」
「2発目は≪庇護の庭園≫消失で防ぐとして、3発目までに全員列車に乗せないと自分らはともかく、街の人は全滅っすよ・・・!」
「それよりもっと面倒かも」
リッシュさんが指差した先には・・・ゲェ!?
ドラゴンゾンビの前にはスケルトン系クリーチャーの騎兵がズラリと並んでいる。
その両隣には隊列を組んだ重装甲のゾンビ歩兵、その後ろには明らかに複数体の死体を繋ぎ合わせたような姿の巨人ゾンビまでいる!
「大人数で確実に仕留めに来たって感じね」
「2発目と同時にアレが全部雪崩れ込んでくる」
「レーシアさん!急いで汽車に乗せてください!」
「分かってます!ただ、入口が狭くて順番に乗せないと・・・!」
そうだった。猫の特急切符は戦闘時に退避する事を前提としていないアイテムだから、大人数を運べるけど、緊急脱出に向いてないんだよなぁ・・・!
汽車を攻撃されたら、中の人たちも危ない。
乗り込み完了するまで迎え撃つしかない!
「エリシア!2発目のブレス来るわよ!」
「!!」
ドラゴンゾンビの2回目のブレスが発射され、ブレスの威力を相殺すると引き換えに、私が発動させた≪庇護の庭園≫は効果を消失。
ドラゴンゾンビのブレス終了を合図にスケルトンの騎兵が突撃を仕掛けてきた!
「≪矢玉の雨≫!」
「≪竜巻≫!!」
手前の騎兵をアキヒト君の竜巻で薙ぎ払い、その後方に控えているゾンビ軍団にマーシャさんの矢の雨が降り注ぐ。
「チッ。アンデッド系って物理が効きにくいから嫌いなのよね」
確かに。マーシャさんの矢の雨を受けて、ゾンビは全然倒れてない。
「こっちも吹っ飛ばしてダウンさせたけど、倒せてはいないっすね」
騎兵突撃を封じてくれたアキヒト君の方も、スケルトン系の騎兵はすぐに立て直そうと起き上がってきている。
「加勢します!≪魔法効果範囲化≫!≪ルーン複合化≫≪勝利のルーン≫!」
レーシアさんが勝利のルーンを使って私達に強化を施してくれた!
確か勝利のルーンの効果は、物理と魔法のクリティカル確率向上とクリティカルダメージ上昇だが、他にも死霊特効や自動生命力回復など他のルーンを複合化させて色んな効果を1度の発動で付与してるのか。ルーンキャスターは発動がコンパクトで羨ましいな。
こっちも支援魔法飛ばすか。
「≪魔法効果範囲化≫!≪武器攻撃致命化≫≪樹皮の鎧≫≪全属性効果耐性≫≪飛来物迎撃≫≪勇敢≫≪霞の衣≫≪魔法薬充填≫≪魔法薬噴霧≫!
アキヒト君も支援を!」
アンデッドを問答無用で昇天させる楽園の液体を全員の武器と矢に吹きかけておく。
これで普通の武器攻撃でもアンデッドに特効が付与されるはず・・・!
「っしゃぁ!≪魔法効果範囲化≫!≪超加速≫≪嵐の鎧≫≪戦乙女の声援≫≪羽毛の足取り≫≪心肺強化≫≪刃の冴え≫≪武装状態知覚≫≪気配知覚≫≪筋繊維保護≫≪絶好調≫≪台風の目≫≪軽功の構え≫!」
私達の範囲化された強化魔法で全員にバフが行き渡る。
「≪暗殺の極意:射≫≪暗殺の極意:刃≫≪影纏い≫≪武装無音化≫≪背中を見せて≫≪弱点看破≫≪死の舞踊:鮮血の舞≫」
マーシャさんも私達のバフを受けながら自己強化スキルを発動させる。
それと同時にリッシュさんも自己強化を重ねている。
「≪剛撃の構え≫≪剛身化≫≪怪力無双≫≪機工始動≫≪破壊的創造性≫≪唯我独尊≫」
リッシュさんの≪機工始動≫でリッシュさんの大剣に取り付けられた機械部品が唸りを上げる。
「始動確認。≪武具精霊実体化≫!出て来て≪熱狂姫≫!」
リッシュさんの呼び声に応えるように、リッシュさん大剣に憑いた武具精霊、≪熱狂姫≫が姿を見せた。
燃え盛る炎の王冠に背中まで伸びた黄金色の髪を靡かせ、炎で形作られた腰まで大胆なスリットが入ったドレスを身に纏った姿で胸を逸らして堂々と佇む威厳あるロリ姫。
『ワァーーッハッハッハッハァーッ!妾ッ!参ッ上ッ!!』
・・・喋ったァーーーッ!?
≪暗殺の極意≫
種別:強化/専用スキル
制限:暗殺者Lv12以上
属性:強化
射程:自身
形状:強化
暗殺者の極意を体現したスキルで武器種に合わせて複数種類存在する。
刺突、斬撃武器の≪刃≫。投射武器全般の≪射≫。毒物全般の≪毒≫。徒手格闘用の≪拳≫。そして秘伝奥義の≪極≫。
5つの極意を極めた暗殺者にのみ、暗殺者から進む最上位の隠しクラスを習得できる高難易度クエストが解放される。




