表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/162

第0話

よろしくお願いします

『エルドラド・クロニクル』

 10年以上の稼働実績を誇るPC専用MMOゲーム。

 基本無料でありながら、小まめなアップデートと調整を繰り返す事で、絶妙なバランスが整ったゲームであり、コアなファンからライト層まで手軽に遊べる。

 神ゲーかどうかは個人の感想に依るとしか言えないが、私は神ゲーと評価したい。

 百種類以上のクラスとその派生クラスを組み合わせる事で自由度の高いキャラビルドが可能。

 まぁ派生クラスや上位クラスは前提となるクラスの習得も必須なうえ、1キャラクターにセットできるクラスの上限は10個、しかも合計レベル上限100のボーダーが有るため、クラスのレベル上限であるLv20のクラスでスロット枠を埋めてしまうと5つ程度しか習得できない。

 スロット全てを収めると1クラスのレベルは10程度。

 コレがPvPにおいて『特化型』か『汎用型』でいい塩梅のバランスになるのだ。


 そこから更に多数の装備やクラスごとに習得できる固有のスキルや魔法などのデータが加わるため、意図しない限り全く同じキャラを作れるのは、10万分の1くらいだろうか。


『エルドラド・クロニクル』では「戦闘」と「生活」が両立しており、戦うだけがレベルアップの手段ではない。

 アイテムの生産や採集。NPCから依頼される雑用。プレイヤーメイドの豪勢な食事でも経験値を獲得できるため、生産系プレイヤーでも簡単に成長が可能。


 そんな私は今日も大好きなエルドラド・クロニクルでいつものギルドメンバーとデイリークエストを消化している。


 エリシア:おつ~

 ToRL:お疲れ様です

 パラパラ@炒飯:おつありで~す 


 まぁ3分掛からないけど。

 プレイを始めて9年の古株プレイヤーである私や他の面子のレベルは100。

 パラパラさんに至っては課金要素で習得クラスとスキルを微調整してるガチ調整ビルド。

 デイリークエストを失敗する方がヤバい。


 デイリークエストが終われば自由行動。

 私もアバターを移動させて、いつもの採集エリアに向かう。


「ハァ・・・。羨ましいぞ、エリシア」


 画面の向こう側では、森でキノコやハーブを採集する我が分身。

 レベル100の魔女「エリシア」。

 水色の髪を後ろで三つ編みに纏めた長い髪、ダークブラウンの瞳、緑のカラーリングに統一された装備だって、キャラをイメージに合わせて全身コーディネートした自分好みの美少女。

 現実の自分はどうだ。

 毎日冴えない仕事、彼女ナシ、ゲームに時間をつぎ込み過ぎてロクな資格も無し。正直言えば仕事なんてせずにずっとエリシアとしてゲームをしていたい。


 別に女性になりたい訳では無いが、エルドラド・クロニクルの(エリシア)でいる時だけは、面倒くさい現実から目を逸らせる。


「・・・・・・ねむ・・・」


 そんな時、瞼が重くなってきた。

 画面の向こうではエリシアがまだハーブを集めているモーションのまま。

 ・・・・・・採集が終わるまで、ちょっと、目だけ閉じようかな。






      ◆





 意識が暗転し、目が覚めると、青空が見える。

 心地の良い風が顔を撫でて、青空の雲がゆっくりと流れていくのが見えた。


「・・・は?」

 口から出た声が自分の物より高い声が出た。

 上体を起こし、周りを見渡す・・・。

 森。 視界には木と低木と雑草。 

 その中で開けた広場のような場所で自分は寝ていた。


 ・・・夢?

 胸に不自然な重み・・・。

「・・・」

 視線を下に向けると・・・立派な双丘。

「・・・え」

 よく見れば、黒髪だったはずの髪も三つ編みに編まれた水色の髪・・・。


 服装も普段の服ではない・・・が、何処か見覚えがある。

 金糸で装飾された緑色のローブ、小さな宝石が乗っかった右人差し指の指輪、黒いリボンと紅葉のアクセントが付いた緑の魔女帽子。

 傍らには・・・蔦が巻かれた木製の杖。


 この装備をよく知っている。

 さっきまで遊んでいた「エルドラド・クロニクル」の私のアバター「エリシア」。

 男だった自分が女アバターの姿になっていた。


「・・・まじかー・・・」

 杖を拾い、立ち上がる。

 持ってみると吸いつくように手になじむ。


「ネット小説の読み過ぎかな・・・。夢か?エリシアの姿に装備とか都合良すぎるだろ・・・」


 というかここはどこだ? 全く見覚えが無い。

 右も左も木と草しか見えない。


「ホントにエリシアなら魔法出せるでしょ。≪炸裂火球(ファイヤーボール)≫」


 適当な低木に杖を向けて呪文を言う・・・と、赤い閃光。その直後に爆発。

 杖を向けられた低木は吹き飛び、雑草が燃えている。その熱が夢とは思えないほどリアルに肌で感じ取れる。


「・・・マジで出た・・・」

 同時に、私の中で何かが減ったような感覚。

 コレがMPの減少・・・かな。

 MPの減少に意識が向くと、残りのMPやHP、スキルや魔法のクールタイムまで感覚的に解る。


「あ、消火しないと。≪水鉄砲(スプラッシュ)≫」

 水の魔法で消火しておく。ゲームでは爆発するだけで、周りの草とかには燃え移る事は無かったけど・・・ゲームとは違うって事かな。


 さて・・・どうするべきか。

 とりあえずどこかに移動するべきだろうか?

 どういった理由で私がここに居るのか分からない。

 周りの音を聞き取ってみても風で草や木々が擦れる音しか聞こえない。

 持ち物はどうだろう。

「≪インベントリ≫」


 インベントリ空間を呼び出すと空中に小さな穴が出現。

 手を伸ばし、入れてみると、中の様子が分かる。

 やはりゲームで持っていたアイテムが中に有った。


「戦闘用消耗品と各種ポーションが3スタック、無限水筒、食糧が・・・6食分かぁ。他は・・・調合キットに薬草類が数種類と・・・予備の杖、採取用ナイフ・・・お」

 良い物があったのでインベントリの中から引っ張り出した。


「魔法使いRP(ロールプレイ)用に持ってたっけ」

 黒い魔法使いの箒。


【星海の箒】

 種別:騎乗物/箒

 ランク:☆☆☆☆

 星が瞬く夜空を駆ける箒。

【取引不可】【ユーザー固定】


 見た目はカッコいいけどユーザー固定アイテムだから取引に使えないしNPCにも売れないんだよねぇ。

 騎乗物/箒は乗る事で空を飛べる。魔法使いかどうかは関係なく。


「ゲームだとキーボードマウスで操作してたけど・・・」


 試しに跨ってみる・・・と、けっこうしっかりと乗れた。

 片足を上げてもバランスが崩れず、すこし体を傾けても落っこちる様子は無い。

 両足を地面から離せば、その場で浮かんだまま静止。


「おおー・・・」


 まさにファンタジー。

 さて、どうやって上昇するんだろ?と少し悩みながら箒を掴む手を引いてみる。

 するとぐらり、と箒が動いた。


「えっと? こう動かせば、上に向かう。じゃ逆は・・・下がるのね」


 けっこう直観的に操作できるらしい。

 アレコレ試してみて前進、停止、加速、減速、方向転換、上昇、下降、操作が一通り分かってきた。


「後ろには下がれないから、方向転換しか無いか」


 操作も分かったし、飛ぶか。

 地面を蹴って勢いをつけながら箒で上昇し加速。

 重力に引かれて落ちないか少し不安だったが、きちんと両手で掴んでいる限りはそうそう落ちそうに無さそう。


 周りの木より高く上昇し、見晴らしも良くなったので次は進む方向・・・。

 ぐるりと回りを見渡し・・・。

 ある方向から森の先に平野と丘が見えた。

「あっちに目指してみようかな」


 とりあえず、安全運転を心がけてそこそこの速度で森の外を目指してみることにした。

≪炸裂火球≫

種別:攻撃魔法/共通

制限:魔法使い系Lv5以上

属性:魔法/火

射程:0~20m

爆発範囲:5m

形状:射撃

着弾点で爆発する火球を放つ魔法。

Lv5以上の魔法を習得できるクラスがあれば誰でも習得可能。

威力、範囲共に優秀であり、エルドラド・クロニクルの初心者魔法使いプレイヤーが覚えるべき汎用攻撃魔法の1つ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
TS転生って夢だよなぁ。俺も美少女になりたい。 てっきり夜しか飛べないほうきかと思ったがそうでもないのか。
・・・と…が混ざっててすごく読みにくいです 出来ればどちらかに統一していただきたいです
[気になる点] 凄く細かいけどサブタイトルの数字が全角だったり半角だったりするところが…… [一言] 読み始めました! これからどうなっていくのか……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ