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第6話 想いとトラウマ

 大変なことになってしまった。眩しい光に包まれたと思えば、あたり一面焼け野原。焼けてしまった人たちや体の一部が欠損している人、様々な死体があたりに転がっていた。シャルーサは、家族を探そうと走り回った、家の敷地内を駆け回り家族を探した。

ところが誰も見つからない。

代わりに見つかったのは、黒い禍々しいマントに身を包んで手には、黒く至る所に黄金の割れ目がある長い流木のような物を持っている女の姿。その禍々しい後ろ姿を呆然と見ていた。

黒いマントの人は、ゆっくりと振り返った。長い髪の毛は、その女の目を半分隠している。怪しく光る紫色の眼光は、今の彼女からすれば恐怖の対象でしかないだろう。

禍々しいその女は、シャルーサを少し見つめてから消えた。彼女は、しばらく固まっていたがすぐに、町へ走り出した。家族がいるかもしれないと淡い期待を寄せて。

 町に着くと、生き残った人達がいた。しかし、俺の妹に対して酷いなんて言葉じゃ言い表せないほどの罵倒や罵声を浴びせた、言いがかりにもほどがある。

少しして目の前が真っ暗になった、しかしすぐにあの光景が広がっていた、が少し違う何か違う。

手があって、足もある。これは、、、と考えるよりも先に走り出した、とにかくこの場から妹を遠ざけるために。

 走っている時、こんな最悪な状況なのに少しワクワクしていた。久しぶりに体がある、そんな感情に身をまかせて疲れる事も忘れてひたすらに走った。走りに走って森の中で立ち止まった、誰も追いかけてくる気配は、ない。少し休憩するつもりで大きな木に体を預け少し目を閉じた。

目が覚めると俺は、いつもの空間にいたのだった。

 シャルーサは、酷く怯えているようだった。あんな事があったのだ、当然である。何と声をかけていいのやら、でもここで俺があたふたしては、いけない。兄として彼女に暖かい言葉をかけてやらなければいけないのだ。ならばどうするか答えは、決まっている。

ホロル「シャルーサ?大丈夫?」

いざ話し出すと、言葉が出てこない。彼女の今の気持ちは、想像絶するものだろう。目の前で何もかも失ったのだ、当然のことである。

シャルーサ「、、、、」

やはり何も返しては、くれない。時間をかけて彼女を落ちつかせる、それが今の俺に出来る事なのでは、ないだろうか。時間をかけてゆっくりと彼女に巣食ったトラウマという名のガンを取り除いていく、それが兄の俺に出来る救いなのでは、ないだろうか。

幾多の夜を超えただろうか、シャルーサに語りかける毎日。彼女は、何かを出来る様子がないので俺が代わりに彼女の体を動かしている。あの日以来、彼女の体の主導権は、俺とシャルーサの2人になったのだ。

俺が体を動かしている間、彼女は、あの空間でじっと俯いている。目は、虚で何とでもなれと言った具合だろう。

 その目は、俺も見たことがある。俺の場合自業自得なのだが、鏡越しにその目を見たことがある。シャルーサの辛さと俺の辛かった事など天秤にかけるまでもない事だ。しかしその目は、俺のトラウマであり、俺が乗り越えられなかった因縁でもあった。


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