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第5話 潔白の追放者

 赤黒い空と焼けた街並み、かつて幸福や辟易を与えてくれた華やかな家は、もうない。無償の愛を与えてくれた家族も窓や庭から見える日常の風景も、炎と黒煙に侵されてしまったのだ。ただ彼女の目に映るのは、莫大な不安と恐怖そして、絶望だ。

 どうしてこうなったのか、何故私達がこんな悲惨な事にならなくては、ならないのか。呆然と見ることしか出来なかった、何もできない自分を戒めることしか、今の私が私にしてあげれる唯一の慰め。

私が15歳になった日、それは突然落ちてきた。お父様やお母様や兄は、一瞬で私の目の前から姿を消した。普通の日常だったはずなのに、ただ一緒にご飯を食べていただけなのに。

私は、救いを求めて初めて町があった場所に駆け出した。気を失っただけで、皆んな避難したんだと思いたかったから。町があったと思われる場所には、生き残った人達がいた。大人子供問わず、私を腫れ物を観るようなそんな目でこう言った。

「魔女め」

そのあとは、あまり覚えていない。沢山の罵倒や悲鳴を聞いたと思うの、憧れていた町は、憧れから地獄に変わった。全てが掠れていく、小指一本として動かない。

 目が覚めると深い森の中だった、あんな状態で一体誰が私をここまで運んでくれたのか、善意の気持ちを想像する前に体を支配するように恐怖が先にでた。逃げてなくては、そう思い駆け出す、もっと深い森の中へと足を運ばせる。凸凹な道を何度も何度もこけそうになりながら、走った。

どれほど走ったのかは、わからないけど息苦しさに負けて立ち止まってしまった。後ろを振り返っても誰もいない、安心と寂しさを感じた。その場にヘタレ込み息を整えて、何も考えずに森を見渡す。人の居ない空間、、でも部屋で1人でいた時とは、違う。小鳥の(さえず)りや風のなびく音、土や森の匂い。全てが新しく気持ちが昂るはずなのに、何も感じない。落ちつくと頭によぎるのは、あの地獄のような光景と怒りや悲しみをぶつけてくる愚かな肉の塊。私は、頭を抱えて体を震わせた。

まるで、目の前を鬱陶しく飛行して、払いのけられ地上に落下したホカイ虫のように。

私は、これからどうすればいいのか。思考を空回りさせながら小さくまとまる事しかできない。


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