第4話 不安の種
人生に最終的なゴールは、あるのだろうか?先は、誰にも見えないし、環境や関係によって分岐点がある。そう俺は思っている、形の無いものほど不安定で無さそうに見えて身近転がっている物だ。俺がそうだったように彼女もそうなのだ。
彼女の事をシャルーサと呼ぶのは、いつも家族と俺だった。今やその名前を呼べるのは、俺だけとなってしまった。
ある日父親が真っ青な顔で帰ってきた。どうやら調査していたダンジョンの最深部から、古の時代の何かが解き放たれてしまったとか。何かと表現したのは、それはエネルギーの塊で魔力に近いものなのだが、普通に目に見える点から魔力では、ないと興奮して語っていた。それで何が問題なのかというと、アレだ封印がとかれてしまったぁぁ!!とか、厄災が起こるかもしれなイッッと言うやつなのだろう。ぶっちゃけ俺は、あんまりしっくり来ないがシャルーサの思考を読むにこの世界では、洒落にもならない話になるようだ。
正直なところ、シャルーサが外に行くことはほぼ無いので、外の世界にどんな生き物や建物があるか、全くわからない。
この前の試験のように、庭先に出向くような事はあるのだが、何処かに遊びに行ったり、家族で出かけるような事は、一度も無いのだ。この家の方針なのだろうか、それとも何歳になるまでは、家から出れないといった、この世界での常識なのか、わからない事だらけだ。
妹の思考は、読めるのだが、この世界の人間じゃない俺に考えずともわかる常識や知恵は、無いのだと思う。
仮説を立てるとこうだ。前世の世界から何故かシャルーサの精神世界に転生した俺は、別の世界から来たエネルギー体でしかも記憶も前世で生きてた頃と同じようにあると感じる。ので前世を1の世界とすると1で肉体は、死んだが記憶や魂は、生きておりそのまま、この世界に飛ばされたと考えるのが妥当だろう。記憶がある時点でこの世界は、俺から見てファンタジーその物なので、純粋なこの世界の人間と俺では、感覚や考えにズレがあると言った具合だろう。それに実際に自分で体感している訳でも無いので、俺に返答を返してくれる主人公がいる映画をみているような感じなのだ。
重大な事と何となくわかるものの、父親が真っ青になるほどの事なのかよくわからない。
ここ最近思うことがある。シャルーサと俺は、確かに思考や感覚を共有しているそこに問題は、ない。のだが、俺の方に問題があると確信している、決定的な感情や感覚が無いのだと自覚してきた。前世では、当たり前にあったような気がする物が今はない、そう思えるのだ。転生と言うのかも怪しいこの状況に何か危機感を覚え始めている。
まぁ何がともあれ、シャルーサに危険が及ぶのは、避けたいので、俺も少し気を張ることにした。ダンジョンとやらで何が起こったかより、妹を護る方が大切なのだから。