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第3話 勉強と魔法

 遂に来てしまった、シャルーサのわがまま期が。

シャルーサが7歳になろうとしてた頃、妹で一番下の子と言うことで、少々甘やかしすぎてしまったらしい。

今や立派なお嬢様になってしまっていたのだ。

本格的に勉強や魔術に取り掛かろうと言った矢先な事、当の本人シャルーサと言えば、、「嫌だ、やりたくない」や「何でやらなくちゃいけないの!」とわがまま放題。

母親のリースも手を焼いていた。どうやら母親のリースは、怒らないと言うより、怒れないタイプのようでどうすればいいかわからない様子。

父親のケルタックは、可愛いがりすぎて父親のからの指導に期待は出来ない。

兄のイリムからは、わがまま期が来てから厳しく妹に言う事が増えたのだが、言うことを聞かないせいか、最近ではあまり干渉してこない。

末っ子の俺としては、シャルーサの気持ちはよくわかる。やりたく無い物はやりたく無いのだ。

ましてや子供、やらなくては、いけない事とやりたい事の線引きを上手く引こうと気持ちに整理をつけている時期なのだ。

シャルーサのやろうとしている気持ちや葛藤は、俺によく伝わってくる。これは兄バカでは、なく精神の中にいるからと言うのもあるだろう。

それに兄に怒られる度に、俺に愚痴をこぼす所を見ると、シャルーサなりに乗り超えようと必死なのだ。

しかし兄としては、早くその気持ちに決着をつけなければいけないと思うのも事実である。

 そんなある日、突然シャルーサが勉強をやると言うのだ、母も父も大喜びだった。

しかし、シャルーサの目は笑っていなかった。俺は違和感を覚えつつも見守る事にした、それが間違いだったのかもしれない。

シャルーサは、勉強と魔術に一生懸命取り組んだ。取り組み出してからは早いもので日を重ねる事に賢く強くなっていった。

 彼女のルーティンは、朝に勉強、昼に魔法そして夜には、自主的に魔導者や学問書などを読み、予習復習をしていた。

これがこの世界の日常なのだと俺は思っていた。だが、少し口数が減ったように感じがしていた。

シャルーサ10歳の時に魔術の試験をやるように、父から言われた。何やら外部から凄い魔法使いが来てその程を観てくれるようだ。

シャルーサ「光の導きよ汝に降りかかる災いを払いのけよ、、シャイニングランス!」

無数の光の矢が周囲に散らばり、目標物をとてつもない威力で破壊していく。魔法を放ち終わった少女はため息をつき、もういいでしょと言わんばかりに家に戻っていく。

中年の穏やかな風貌の魔法使いは、判定の結果だといいある紙を父に渡していた。

判定の結果シャルーサは、三創級魔法使いらしい。俺にはよく分からないが凄いことと言うは、間違いない。

彼女は、ここ何年か俺とあまり話をしてくれない、理由はわからないが、何か気に食わないのかもしれない。だが俺は静かに見守るだけだ。

その晩珍しくシャルーサが話しかけてきた。

シャルーサ「ホロム、、起きてる?」

俺は、びっくりした、なんせ話すのは二、三ヶ月ぶりだからだ。

勉強や魔術を習い始めてから夜も熱心に勉強をする姿を見て邪魔しないようになるべく息を潜めていたが、久しぶりの会話だしノリノリで話に応じた。

ホロム「起きてるよ、どうしたシャルーサ」

シャルーサ「今日試験があったじゃない、少しは見直してくれたのかなって、、」

俺は、思考が停止した。見直す?何を?シャルーサは、よくやっているのに何故俺にそんな事を言うのかわからなかった。

ホロム「急にどうした?シャルーサは、凄い子だよ?」

シャルーサ「嘘ばかっかり、わがまま言う私をみて失望してたくせに」

再び俺の思考が止まる、どう言うことだ?おかしい俺は、そんなこと口に出した覚えはないし、思ったこともない。

ホロム「何でそう思うんだ?俺は、、」

言いかけた時シャルーサが涙を流しながら、話を遮るように叫んだ。

シャルーサ「知ってるよ!たまにホロムの考えがわかる時があるの、全部じゃ無いけどノイズのように入ってくるから!」

大粒の涙を流して、俺に訴えかけてくる。俺はそこで悟ったのだ、俺がシャルーサの気持ちや思考を読めるように、シャルーサも俺の考えや気持ちがわかるのだと。

おそらく性質上、俺の読み取り能力は、相当高い方だろう。

しかし彼女の口ぶり的に断片的に入り込んで来るのだと理解した。

俺の思考が彼女を苦しめていたのだ。何を思った時に彼女に伝わったかは、わからない。

しかし、母や兄に言われるより心の内側から伝わる物が彼女に響いていたのである。

ホロム「すまない、、俺は俺なりにどうなっていくのかを考えていただけだったんだ、、ただそれだけで」

こうなってしまうと言葉が上手く回らない、どんな言葉をかけてやればいいのかわからなかった。

するとポツポツとシャルーサが呟き始めた。

シャルーサ「でもね、お兄ちゃんが私を思ってくれてるのもわかるの、、だから頑張って、、頑張ったの」

俺は、自分を殴りたくなった。思考が伝わった事が問題では、無いシャルーサは、褒めて欲しかったのだ。

誰でも無い、俺から、これまでシャルーサがお兄ちゃんや大お兄ちゃんと言ったことは無い。

約束をずっと守ってきた。その約束を破ってまで、お兄ちゃんと言ったのだ、ただ褒めてもらいたくて。

思えば前世の俺もそうだった、シャルーサのように必死で頑張るなんてことは、出来ないクソ野郎だったが褒めてもらいたいと心の中で、強く思っていたのを思い出した。

今俺に出来ることは、シャルーサを褒めてあげることだけなのだ。

ホロム「シャルーサよく頑張ったね、偉いぞ」

何とも言葉足らずなセリフだ、ただ一つわかることがある。きっと今妹は、俺の想い巡らせた事が読めている。

俺は理解しようとしてたフリをしていた、一番理解しようとしてくれていたのは、シャルーサの方だった。

理解しようとしたから、俺の思考を断片的に汲み取ることが出来たのだと思う。言葉を交わさずとも思考がお互いに読み取れる。

シャルーサを心の底から理解しようとする心が抜け落ちていた、今まで欠けていたような心が戻った気がした。

シャルーサは、重みが抜けたように眠ってしまった。きっと疲れたのだろう、今日話せてよかったと俺は思うのだった。

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